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ミュージカル ケイン&アベルを見てきたよ
フランク・ワイルドホーンさん!!あなたの音楽が大好きです!!
以下全部ネタバレです!
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昨年の情報解禁の時点で「好きな作曲家の曲と好きな俳優さんに溢れたミュージカルだ!!絶対に観に行く!!」と決めた作品でした。
だって愛加さんと咲妃さんの11年ぶりの共演に、松下優也さんと松下洸平さんと知念里奈さんに上川さんに山口さんまででるんですよ??しかもマエストロ・ワイルドホーンの曲が全編。
もう観に行くしかないと決めて楽しみにこの日を待っておりました。観られて良かった!!
第一幕
同じ日に生まれた男の子
Wikipediaで原作の小説を調べたら、最後にどんでん返しが待っていると書いてありました。迷いましたが原作を読まず、世界恐慌のアメリカなんだな〜アメリカンドリームなんだなぁ〜くらいの知識で行きました。優也さんの相手役が知念さん、洸平さんの相手役が愛加さん、ストーリーテラーが咲妃さんということは頭に入れていました。
ケイン(洸平さん)はアメリカの裕福な家庭に望まれたおぼっちゃま。一方アベル(優也さん)はポーランドの貧しい村に生まれた苦労人。
ケインの父がタイタニックの事故に巻き込まれ、アベルは第一次世界大戦と自分の出生の秘密に巻き込まれ、2人とも若くして独立を余儀なくされます。
アベルが戦災を逃れてアメリカに渡るところから本編が始まると言って良いでしょう。
この「1921年、自由とチャンスの国、アメリカ」という表現が、2025年2月の現在と比べると不安な気持ちを起こさせます。
この立場の全く違う、同じ日に生まれた男2人が運命に導かれるように出会い別れていくというお話。
松下洸平さんってなんでもできるんだな
洸平さん以外のメインキャストさんは今まで何度も舞台で拝見してきました。あなたの松下洸平さんはどこからですか?私はもちろん朝ドラスカーレットの八郎沼からです。
お芝居がうまくて歌が歌えて絵も陶芸もできてエッセイも書ける完璧超人松下洸平さん。登場シーンが大学卒業後のパーティーの場面なのですが、自然と目が洸平さんに向くんですよね。そこの一連の流れが格好良かったなぁ……
ケインは若き未亡人ケイト(愛加さん)と恋に落ちて結婚するのですが、そこのもだもだがとても可愛かったです。
家族を失った悲しみをわかり合ってケインとケイトは結婚するのですが、台詞が一つ一つ因果応報めいていて、これは第二幕に回収が待っているだろうなと思わせました。
松下優也さんのマイナスの感情は本当に刺さる
ケインとアベル、2人の運命が交差する話なのですが、聖書の通りにアベルがケインを憎む展開が待っています。
お坊っちゃまのケインと違い、苦労してギリギリで成り上がったアベル。
ケインがアベルの雇い主を破滅に追い込んだことで、アベルはケインに復讐しようと決意します。
松下優也さんって苦労人の役が似合うと思うのですが、今回もハマっておりました。
第一幕最後の2人の歌い上げが格好良かったです。アベルはケインに憎しみを募らせるけれどもケインは良心の呵責に苛まれ、匿名でアベルに巨額の投資をするというズレ。このズレで第一幕を締めるワイルドホーンさんの曲が良かったです。
語り手の咲妃みゆさん
第一幕は終始語り手に徹したフロレンティナ役の咲妃さん。彼女が「スナップショット」と言いながらケインとアベルの人生の節目節目を振り返るという形でミュージカルは進みます。
長編小説のミュージカル化なのでね。こうして「ポイントごとに振り返っている」からこそ盛り上がる場面が作りやすく、そこに当てて書ける曲も多かったのだろうと思います。
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注意書き
会場にはこうした注意書きが。
よくよく見るとこうなっています。
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こうした注意文、やっぱり大切だと思います。100年以上前のアメリカが舞台なので、現実世界と価値観は違いますよという提示がなされるわけですね。
さて、以上が幕間に書いたメモです。
これから下が第二幕の感想です。
第二幕
20世紀という時代
待ってください第二幕面白すぎないですか!?第一幕の伏線をもりもりもりもりに回収していく怒涛の第二幕でした。
第二幕は1941年に差し掛かります。ここでケインもアベルも従軍するんですね。2人ともヨーロッパで戦い、ケインは重傷を負います。
この時に歌う洸平さんのソロナンバーかとても良かったです……そっか、第一幕の主人公がアベルで第二幕の主人公がケインなのかもしれないとここで感じとりました。
なんと瀕死のケインを助けるのはアベルなんですよ。2人ともお互いだと知らないまま助ける/助けられるの関係性ができ、ここでも2人はすれ違います。
戦争が終わった後、傷は長引くものの、2人は経済面でお互いを食い合うようになります。
アベルはケインの銀行の株を買い占め、ケインはアベルが汚職をしているという噂を流す。
上流階級のWSS
そんな中、やっと語り手に徹していたフロレンティナ(咲妃さん)が動き出します。
フロレンティナはアベルの娘。自らもビジネスの世界で活動することを夢見て、大学を出た後はデパートの販売員としてキャリアを積みます。自分の父親が大金持ちである事を隠すために偽名を使って。
「今日はバレンタインデー!」とアドリブがあったのも良かったです。
そこで出会うのがケインの息子、リチャード(竹内さん)という、ウェストサイドストーリー的展開が繰り広げられるわけです。
階段も出てきたし、上流階級のウェストサイドストーリーだなと思って見ていました。
フロレンティナが前半の四分の1くらい過ぎたところで「ここで、私が登場します!」と語り部から登場人物になるくだりで脚本に心を掴まれました。この後はもうノンストップでした。
人生を憎しみに費やしてはいけないよ
人生を憎しみに費やしてはいけないよ
作品のテーマはまさしくこの通りだと思います。
リチャードとフロレンティナは駆け落ちをし、2人でゼロからセレクトショップを開店。10号店をニューヨークに出店します。
ザフィア(知念さん)とケイト(愛加さん)はわだかまりなく自分の子供たち、そして孫と接するも、ケインとアベルの憎しみは解けないまま。
息子と娘の成功を遠くで見た後、ケインとアベルは最後にすれ違います。
どうして憎しみあったのか。歳をとって何もないのに。
ケインは恐らく、そのあとすぐに世を去ります。
そして最後に、ケインの妻ケイトが「初めてお会いしますが私たちは家族です」と言い、アベルを訪ねるところで物語は終わります。
この怒涛の二幕で全てを回収し、あらゆるコーラスで残り少なくとも人生を賛美する。マエストロ・ワイルドホーンの曲だ!!!!となりながらカーテンコールを迎えました。
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カーテンコール
改めて、カーテンコールの俳優陣を見て「みんな好きな俳優さんだ……」と思っておりました。面白かった……曲が良かったです。コーラスの曲もソロナンバーも全部良かったです。音源売ってくれないですかね……
カーテンコールだけでも2人の松下さんが笑顔で握手をしていて良かったなぁとなりました。激動の20世紀の物語でした。