自衛隊での訓練を経て悟りを開いた話
「え、まだそれしか食べてないの?」
私は目の前のショートケーキより、突如蘇った自衛隊の訓練時代の記憶に集中していた。
訓練中は、夢を見ていたような感覚だった。
あまりはっきりと覚えていないのだ。
コロナ禍だったこともあり、土日に日用品を買いに行くための数時間以外、外出は許されなかった。スマホが使用できるのも週にその数時間だけ。
ほぼスポーツ刈りみたいな女子50人程度で、5ヶ月間基地の中に閉じ込められることになる。
あまり思い出したくないので、訓練中の様子は詳しく書かないが、当時の手帳を見ると過酷さが伝わってくる。
「訓練が終わったら、
ゆっくりトイレがしたい。
走らないで、歩いて移動したい。
5分でいいから、座ってご飯が食べたい。
一日誰にも怒鳴られずに過ごしたい。」
紛争地帯の人々や、韓国で兵役を務める人々に思いを馳せる。
こんなことを言ったら怒られそうだが、どうしても少し、共感してしまう。
座って食べている暇などない。トイレも命懸けだ。
普通に生活できるって、ありがたいことだ。
ケーキが食べられるのも、こうして会いたい時に友人に会えるのも、贅沢だ。
食べ物はゆっくり味わって食べよう。友人にはいつも感謝を伝えよう。
「ねー、食べないならもらうけど」
ショートケーキのいちごが消えていた。
おわり!😆