ルイ・セロー "The Ultra Zionists" (“超ユダヤ主義者たち”)

ルイ・セローLouis Therouxによる The Ultra Zionists (“超ユダヤ主義者たち”)(2011年, BBC)というドキュメンタリーをNetflixで見ました。

このドキュメンタリーは、パレスチナ西岸地区の東エルサレム、ヘブロン、ナーブルスにて、超国家主義者ユダヤ人入植者にインタビューをするというものです。
西岸にて、ユダヤ人の入植地を広げようと、土地を獲得しようとする活動家。
不法とされながらも、テントに住まう若者。などなど。
パレスチナ人による抗議デモ、子供による投石での抵抗と、それに対するイスラエル警察・治安当局の対応のシーンを出てきます。セロー氏が催涙ガスに咳き込むシーンも。

「約束の土地・独立のための戦い」「土地の簒奪者・殺害者」などといった大きな物語が、パレスチナ・イスラエルの両サイドにおいて子供に至るまで共有されているのがわかるのと同時に、土地・住まいを巡った日常レベルの、生活をかけた問題でもあることがありありと見えてきます。

さらに、世界の各地から人もお金も流れてきているのも散見されます。パレスチナ側のデモに海外からの活動家が参加していたり、アラブ人居住地区の中にユダヤ人入植地を作るため、資金援助が行われていたり、葡萄畑での奉仕活動や街のツアーに参加してイスラエル側の語る歴史に耳を傾けるアメリカ人がいたり。

もちろん、皆それぞれの信念に基づいて行動しているのではありますが、革命なり「民族的祈願」なりの場とするのには非常に疑問があるし、悲しいことだと感じます。そんな大きな物語の前に、平穏な生活を奪われている人たちがいる訳ですから。逆に、政治的な意図がないつもりであっても、パレスチナ・イスラエルにて活動をするということには、何らかの政治性が伴うという点は常に心に留めておくべきだということを再確認しました。

どちらの側にも、イギリスのテレビ(BBC)に顔を出すことも厭わない人がいるというのに驚きました。それだけ主張が割れ、相容れない状況にあるということでしょうか。

しかし、これだけ立ち入った問題に関するインタビューを、今回のパレスチナ西岸地区だけでなく、世界各地にて行ったルイ・セロー氏の知識の深さと胆力には頭が下がるとしか言いようがありません。私自身、パレスチナ西岸地区を訪れた経験が1度あるのですが、これほど直接的に紛争の現場にまで足を踏み入れたり、人々と話すことはできませんでした。

この番組が放映されてから7年。さらにユダヤ人入植地は広がり、双方に多くの血が流れています。それを目にした子供達が、社会を担う大人になっていっています。この問題をどう考えて良いのか、私にはまだ答えが見出せません。ただ少なくとも、一緒に考えてくれる人が一人でも増えるといいなと思います。英語なのですが、1時間でサクッと見れるので、お時間のあるときにちょっと見て頂ければ。Netflixだとこちらからアクセスできます:https://www.netflix.com/title/70283173

(お時間のない人には、内容をまとめたこの記事をどうぞ: https://www.bbc.co.uk/news/magazine-12347050)

追記: 調べてみると、地域設定の違いにより、日本ではnetflixで視聴できないのかもしれませんね。。。なお、昨年ルイ・セローによる「麻薬中毒の町~ルイ・セローが見たアメリカ~」というドキュメンタリーがNHKのBS海外ドキュメンタリーで放映されていたようです。こちらもご参考まで。 https://www6.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/?pid=180227)

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