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社会のお荷物高齢者にならないために
日本は世界でも類を見ない超高齢化社会に突入しています。高齢者の増加に伴い、社会保障費の多くが高齢者向けに使われる一方、若者や子育て世代への支援はまだまだ十分とは言えません。
このままでは、社会を支える若者への負担は増え続け、少子化の加速や日本の将来そのものに深刻な影響を与えかねない状況です。
さらに、介護・福祉の現場では若者の労働力が多く割かれているにもかかわらず、待遇や環境が十分に整備されていないケースも多く見られます。これにより、若い世代が本来のキャリア形成や新たな産業への挑戦などに力を注げなくなることも懸念されています。
しかし、高齢者すべてが“社会のお荷物”になるわけではありません。むしろ、人生で培ってきた経験を活かし、次世代を支える立場として活躍し続ける可能性も大いにあります。
本記事では、高齢者が社会に与える負担の現状を整理するとともに、未来を担う若者たちにとって重荷とならないために私たちができることを、具体的なデータを基に考えていきましょう。
1. 高齢者が社会のお荷物となっている現実
まずは、高齢者の増加によって社会全体が抱える負担について、代表的なデータを確認してみましょう。
① 社会保障費の急増
2022年度の社会保障費は約36兆円に達し、そのうち75%以上(約27兆円)が高齢者向け(年金・医療・介護)に使われています。
対して、子育て・教育支援に使われる額は約5%(約1.8兆円)にとどまります。
これらの数字から、社会保障費の大部分が高齢者向けに充てられており、若者や子育て世代への投資が圧倒的に不足していることがわかります。
② 年金の実態
現在の年金制度では、1人の高齢者を約2人の現役世代が支えています(2023年 厚生労働省)。
2065年には1人の高齢者を1.3人で支える社会になると予測されており、若者の負担は今後ますます増加する見込みです。
③ 高齢者の医療・介護費の増大
2021年度の国民医療費は約44兆円で、そのうち65歳以上の高齢者が使った医療費は約60%(26兆円)を占めます。
高齢者1人あたりの年間医療費は約92万円で、20〜64歳の約3倍の水準です(厚生労働省データ)。
介護保険制度の利用者数は2000年の220万人から2021年には685万人へと、3倍以上に増加しています。
④ 若者の労働力が介護現場に奪われている現状
超高齢社会では、高齢者のケアに関わる需要が急増するため、介護・福祉の現場で多くの若者が必要とされています。
しかし、介護現場での待遇や労働環境が整わないまま人手不足を補おうとしているケースも少なくありません。
その結果、若い人材が他の分野で能力を発揮できず、社会全体の生産性や新産業の発展に影響が及んでいるという指摘もあります。
2. 「生きているだけで偉い」の真実
「生きているだけで偉い」という言葉は、生きることそのものを尊重する姿勢を示しています。しかし、それは社会の支えがあってこそ成り立つものであることを忘れてはいけません。
① 社会の支えがあってこそ
日本の社会保障制度が充実しているからこそ、多くの高齢者は医療や年金の恩恵を受けられますが、その財源は現役世代が納める税金と保険料で成り立っています。こうした「生かされている」現実を認識し、社会とのつながりや貢献意識を持つことが大切です。
② 「偉い」に見合う行動を
自力で生活を続け、周囲に貢献し、価値を生み出し続けることが本当の意味での「生きている価値」を育むことにつながります。若い世代への負担が増している現状を踏まえ、社会をより良い方向に導くために「自分は何ができるのか」を常に考え続けましょう。
3. 社会のお荷物にならないためにできること
高齢者はもちろん、これから高齢期を迎える若い世代も含めて、次のようなことを意識するだけで「社会のお荷物」から大きく遠ざかる可能性があります。
① できる限り長く働く
定年=引退という概念は古くなりつつあります。体力やスキルがあれば、60歳以上でも働ける環境は拡大しています。
シルバー人材センターや再雇用制度、フリーランス・副業など、自分の強みを活かせる選択肢を検討してみましょう。
「働けるうちは社会に貢献する」という姿勢が、未来の世代を支えることにもつながります。
② 学び続け、次世代に還元する
政治・経済・テクノロジーなど、新しい知識を習得し続けることで、時代に合った発想やアドバイスができるようになります。
オンライン講座や地域の学習会を活用したり、学んだことを若者に還元する場をつくる(講演やワークショップなど)と、若い人たちへの貢献にもなります。
スマホ・SNS・キャッシュレスといったIT技術を積極的に取り入れることで、自分自身も便利に生活でき、若者のサポートにも一役買えるでしょう。
③ 健康を維持し、医療費の負担を減らす
高齢者の医療費増大の一因は生活習慣病や予防不足です。
定期的な運動や栄養バランスの良い食事を心がけ、必要以上に医療に頼らない工夫をすることで、結果的に社会全体の医療費を抑制できます。
④ 社会との接点を持ち、積極的に貢献する
地域ボランティアやNPO、子ども向け学習支援など、自分の得意分野を活かせる活動に参加し、若い世代の力になりましょう。
自治体のシニアプログラムなどを通じて地域コミュニティに貢献することで、「支えられる側」から「支える側」へ回る意識を持ち続けることができます。
4. 未来のために、私たちができること
超高齢化社会が進む日本において、「高齢者がすべて支えられる側に回る」構造は維持困難になることが予測されています。さらに、介護や福祉の現場で若者の労働力が過度に割かれている現状は、将来的に社会全体のイノベーションや生産性を低下させるリスクをはらんでいます。
しかし、行動を変えれば未来は必ず変わります。以下を意識して取り組むだけでも、社会に大きなプラスの影響を生むでしょう。
長く働き、経済的自立を続ける
学び続け、若者に知識を還元する
健康を維持し、医療費の負担を減らす
社会に貢献し、支えられる側から支える側へ
「自分が生かされていること」に感謝し、「社会の未来を守るために、いま自分に何ができるか?」を一人ひとりが考えていくことが、次世代に希望を残す大きな一歩となります。
結びに
超高齢化社会の問題は、単に「高齢者 vs 若者」という構図で語られるべきものではありません。若者が未来への可能性を広げていくためには、高齢者世代もこれまでの経験を活かしながら、社会との繋がりを保ち、積極的に貢献し続ける必要があります。
介護・福祉の現場で若者の力が奪われている現状を考えればこそ、高齢者自身が「支えられるだけ」から卒業し、「社会をより良くする側」に回るために行動を起こすべきなのです。
どうか、年齢にとらわれず自分にできることを見つけ、社会の一員としていきいきと活動を続けていきましょう。私たち一人ひとりの前向きな姿勢が、少子化や社会保障費問題を和らげ、次の世代が安心して生きられる日本を形づくっていくのです。
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