【コラボレーターの仕事術】eスポーツから障がい者雇用を創出する 株式会社テクリオ 代表取締役 東 二郎
今回インタビューさせていただいたコラボレーターは、eスポーツを通じて障がい者の就労支援を行なっている東さんです。ゲーム=悪というイメージを払拭する活動、eスポーツの大会運営、そこから障がい者の雇用を創出させる今まで誰もやってきていないようなチャレンジをされています。
なぜ、就労支援にeスポーツなのか。そしてどのような経緯で現在の活動に至ったのかを伺いました。
■システム開発で障がい者雇用をサポートする
ーーこれまでの経歴や、事業をはじめたきっかけをお聞かせください。
東さん(以下、東):株式会社テクリオは令和元年に設立した会社で、障がいをお持ちの方の就労を支援する福祉事業を行なっています。売上事業はシステム開発ですが、その傍らでeスポーツ事業も行なっています。
僕はヘルパーのバイトからこの業界に入りましたが、アナログなことばかりで嫌になってしまって。でもパソコンが好きだったので、独学で勉強して自社用のシステムを作ったんです。その頃、パソコンに詳しくてシステム開発もできる方が利用者でいらっしゃったので、そこから障がい者雇用を本格的に開始しました。
障がい者雇用を促進する一方、事業化するとある程度の能力が求められるので、どうしてもミスマッチが生まれます。少しパソコンに詳しくても、求めているレベルまで達していなければ採用してもできる仕事がなくなり、結局は辞めてしまうという状態でした。自分が考える雇用と全く違うことになっていたんです。
そこで、障がいをお持ちの方が就職を目指すための訓練所のような場所を作ろうと考えました。当時の会社のシステム事業部をすべて持ってきて、株式会社テクリオを設立しました。しかし、システム開発だけで利用者が集まるのか不安でした。
他にも何か魅力的なことを探していたとき、eスポーツというものがあることを知りました。ゲームはプログラミングされているものなので、システム開発と親和性があるのではないかと思いました。そこで、eスポーツ事業とシステム開発事業を一緒にやってみることにしました。
■eスポーツから雇用を生み出す
東:野球やサッカーをやっている人数と、ゲームをやっている人数を考えたときに圧倒的にゲームをやっている人の方が多いと思います。障がいを持っている方でもその割合は変わらないはずで、eスポーツ事業をやれば人が集まると考えました。そのなかでシステム開発に興味がある人がいたら、「プログラミングを勉強してみないか」と声をかけていきました。
この活動をしていくなかで、プロゲーマーのGENKIさんと知り合うことができました。ゲームは根暗というイメージがありましたが、GENKIさんはとても明るい方です。完全に偏見で物事を見ていましたが、こんなに明るい人が活躍していることを知り、eスポーツは輝ける場所なんだと感じました。
そして、障がいを持っている人でもゲームで活躍できる仕組みにしたいと思い、大会を開催するようになりました。しかし、実際に大会を開催するだけでは雇用にはつながりません。それならば仕組みを作らないといけないと気づき、チームづくりを始めました。
一般的なeスポーツというのは、企業がチームを持ちます。その企業からお金が降りて、チームの運営費になるんです。僕たちのところでも、企業に雇ってもらったら雇用率があがると考えました。
どこもやっていない新たな仕組みで、日本代表みたいなイメージでうちに所属してもらうことができれば、雇用創出が期待できます。eスポーツの神様が僕に降りてきたと感じ、大会で発表させていただきました。
ーー大会で発表する前も雇用創出についてたくさんチャレンジされてきたのですね。
東:実際には第2回大会で優勝した方がきっかけです。その方は普段は感情を表に出さないのに、優勝したとき飛び上がって喜んでいたんですよ。ご家族は「ゲーム=悪」のイメージを持たれていましたが、こんなに感情を表に出すんだと知り、ゲームのイメージが少しづつ変わっていったそうです。
その方には第3回大会にも出場していただきました。そのときに障がい者eスポーツ協会の代表理事である、株式会社アワハウスの社長に認められ雇用につながりました。
課題もまだまだあって、特に広報活動はネックになっていると思います。せっかく僕たちの思いがあっても、なかなか浸透していません。プレスリリースして興味のある方から連絡があればご説明させていただきますが、なかなか人的リソースも少ないので、足しげく通うこともできていない状況です。
障がい者の方を雇ってくれる企業はまだ少ないので、もっとアピールして企業を集めていきたいですね。GENKIさんたちからさまざまな企業とつながる機会をいただいているので、そこでお話をすることもあります。企業に対しても、障がいをお持ちの方に対してもより存在を知ってもらえばもっと成功すると思っています。
■誰でも主役になれる社会をつくる
ーー最後に今後の展望をお聞かせください。
東:障がい者雇用を最終目標にしているので、ゲームを通して雇用ができるような仕組みを確立したいです。今は大阪で活動していますが、日本各地でこういう取り組みが広がっていったらうれしいですね。
韓国では、国家規模でeスポーツを推していてとても強いですが、日本のeスポーツもすごい人がいると世界に発信できたらと思っています。障がいをお持ちの方が主役になれることを、全世界でできたらとても面白いじゃないですか。誰でも社会の主人公になっていってほしいですね。
▼ワクセルコラボレーター
株式会社テクリオ 代表取締役株式会社アワハウス 取締役/プロゲーミングチーム「EGGS」GENERAL MANAGER/向陽台高等学校 非常勤講師
東 二郎さん
<プロフィール>
高校卒業後、訪問介護事業の会社に入社、ヘルパー業務5年、人事業務10年、システム開発事業15年(兼務含む)を経験。入社5年目に取締役就任。
仕事をしながらオンライン大学にて学生生活を送る。
サイバー大学IT総合学部を成績優秀の表彰をいただき卒業。
2019年、株式会社テクリオ設立。
現在は障害をお持ちの方の就労支援を行っている。
主な事業はシステム開発事業・eスポーツ事業。
eスポーツでは大会運営・配信オペレーター・動画編集等を多数経験。
自身もプレイヤーとして大会に出場している。
<代表作・主な実績>
・主な大会運営
大阪障がい者eスポーツ大会”アワハウスカップ”(第1回~第4回)
・主な大会出場
全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2020 KAGOSHIMA eFootball ウイニングイレブン オープンの部
全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2021 MIE eFootball™部門 オープンの部
■SOCiAL BUSiNESS COMMUNiTY『ワクセル』
ワクセルは、コラボレートを通じて、人に夢を与え続けていくソーシャルビジネスコミュニティです。健全に学び、チャレンジし、成長し、達成し続ける人が次々と集まるコミュニティを作り続けます。 さまざまな分野で活躍する著名人や経営者、クリエイターの方々とコラボレートすることにより、下記の取り組みやコンテンツ制作を行っていきます。
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