この世に居ない方々のイベントが落ち着いた

昨年末、立て続けにあの世へと旅立った実父と伯母の葬儀に加え、さらにその初七日と四十九日法要そして、年を越して1月19日。

なんで月末にせまった引っ越しで、永遠に終わらない片付けがクソ忙しい1月に13回忌ぶつけてくんねん!と怒りつつ、いや、死なはったのが12年前なんやから、12年前から13回忌の予約は入っとったんやな・・・とも思いつつ、日帰りで名古屋まで行くことに。

何年かぶりに訪れた名古屋は、えらい都会っぷりが増していて、七回忌で訪れたときとは全然違う印象になっていた。

七回忌ぶりに再会した、実母の再婚相手である義父の頭はすっかり真っ白になっていて驚いたけど、あれからも月日は確実に経ったのだなと実感した。

近年の義父は、定年を迎えたあと自宅近くに畑を借り、毎日野菜の育て方な本を読みながら、なれない畑にせっせと足を運び、あれやこれやと失敗しつつ学びながら自給自足をめざしているらしい。

近代的なビルの、ボタンをポチッと押すと目前に自動でやってくる今どきなお墓の中で骨壺に収まっている実母の遺影を眺めながら、遠い記憶を思い出しつつ南無南無と唱え、滞りなく終わった13回忌法要。

義父が帰り際にとても嬉しそうな顔をしながら、車の後部座席から取り出したのは4本のそれはそれは立派な葉っぱ付きの大根だった。

「これ今年、俺の畑で育てた大根!持って帰っておでんにでもするといいよ!ほら」

と言いながら、使いかけの封の開いた おでんの素 とともに渡されてしまった大根4本。

待って!!!!!ちょっと待って!



帰りも姉夫妻の車に乗せてもらえることにはなっていたから、新幹線で多くの方に大根の葉っぱを見られることは無いけど、これは壮絶に予想外だよ!

義父は姉にも紙袋で渡していて、

「こっちは夫婦用だからな、6本入れたけど8本くらい持ってく?あ、ほうれん草もあるよ、俺が去年漬けた梅干しとたくあんも!ほら」

義父の車の後部座席から次々と出てくる野菜に、誰が見てもドン引きしている姉と自分が持たされている大根4本を交互に見ながら盛大なため息をついた。

「あ、そうそう!今日欠席した人の分のお昼の会席、まとめて詰めてもらったからこれも持って行きなさい。帰って食べたらいいよ、お腹すくでしょ?」

と言いながら、わたしに近づいてきた義父の腕には、両手で抱えないと無理な大きさの会席が詰まったビニール包があった。
これと葉っぱ付き大根を大阪まで持ち帰るのか。法事に参加したはずが大根を持たされ、これからわたしはどこへ向かうのだ。

法事後の食事会の席で、引っ越しの片付けが本当に大変で、来る日も来る日も1日中、段ボールとゴミ袋に囲まれて腰も足も手も痛くて、、、と盛大に愚痴ったはずなのに、義父よ聞いてなかったのか?

ちくしょー受け取るんじゃなかった、今からでもこっそり義父の車の後部座席に置いてこようかこの大根!と握りしめていたら、本日の主役な母の遺影の前にお供えされていたフルーツのカゴを渡されている姉の姿を見て、あっちよりはマシか・・・と思い直すことに。

これ以上ここに滞在していると、自慢の畑まで連れて行きそうな勢いの義父の笑顔に焦り、早々に退散しようと義兄に合図を送り、車を回してもらい帰阪に至ったのだった。

窓を開けられない高速道路を走る車の中で、強烈に漂う、姉がもらってしまったたくあんの匂いに車酔いしそうになりながら、実父が昨年末に亡くなったことを伝え忘れたから、きっとこの大量の大根はみんなで食べてほしいと思って渡しているんだろう。
わたしは今、独りなのに。

実母の13回忌法要が終わり、この世に存在しない方々のイベントがやっと一旦落ち着いた。

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