ギリシャ神話って?ローマ神話って?あんたら一体なんなのさ
前回(世界の始まり1)の続きに行く前に。
ギリシャ神話ってナニ?
ローマ神話ってナニ?
あんたたちって一体何が違うのさ?
と言うのを簡単に書いていくね。
※ギリシャ神話の成り立ち、また、ローマ神話の成り立ちには歴史的背景も深く関わっており、また両者の関係も複雑に絡み合っています。
そして以下にも記載しますが、色んな文学者が付け足しや再解釈をしていったため、本によっては少しずつ違ってくることも多々あります。
私が書いている内容はヘシオドスの「神統記」を大元にさせていただいています。
そもそも「ギリシャ神話」と言う一定の本はない
元々は古代ギリシャ人たちの間で「語られたお話」なんだ。
古代ギリシャ人は「神話」を「ミュートス」と呼んだんだけど、ミュートスは「お話」と言う意味で、日本の昔話同様、そこにはフィクションも織り込み済み。
古代ギリシャ人たちは、自分たちが生きていく上での苦悩や喜びや愛を「人間の形に似た神」に重ね合わせてお話を作っていったんだね。
そして年月を重ねていく中で、それらに物語性や解釈を加えて文学として樹立させていった「人たち」がいるんだ。
そう、「人たち」だから「ひとり」じゃない。
例えば「トロイア戦争(トロヤ戦争)」は紀元前8世紀ごろの詩人「ホメロス」が書いた「イリアス」や「オデュッセイア」に出てくるし、
前回の記事「世界の始まり」は紀元前7世紀ごろの叙事詩人「ヘシオドス」が書いた「神統記」から。
ヘシオドスは神々や英雄たちの関係(系図)や物語を、初めて体系的に著したと言われてるんだ。
更に「ギリシャ神話」は時代を下りながら、悲劇詩人などによって話が付け加えられ、深みを増していく。
つまり・・・
「元々古代ギリシャ人の間で語られていたお話」に時代時代でいろんな文学者が物語性、また再解釈、再説明を加えて膨らませていったもの、なんだね。
1人の作家が書き続けたものじゃないから一貫性はなく、同じ神の話でも色んなバージョンがあったりするんだ。
じゃ、ローマ神話って?
「神話」は、いろんな国でその国の人たちに語られてきたもの、だから当然国によって神も違ければお話も違う。
日本には日本神話があるね。
イザナギ、イザナミの話、出雲神話など。
もちろんローマにも元々、ローマ固有の神話があったんだ。
だけど紀元前6世紀ごろ、ローマがギリシャの影響を受けるようになると
「あれ?ギリシャ神話に出てくる神って、うちの神話にいる神と似てね?」
となり、ローマ固有の神々にギリシャ神話の神々を対応させていったんだ。
ギリシャ神話とローマ神話、何がちがうの?
「元々ローマで語られていた神々に、ギリシャ神話の神々を対応させていった」から、一部キャラやエピソードは被ってても、呼び名(名前)は違うんだ。
また、ギリシャ神話には登場するけどローマ神話には登場しない神がいたり、その逆もあったりする。
ローマ古来の神々をギリシャ神話の神々に対応させ、
更にまた沢山のローマの文学者がそこに物語やアレンジを加えていった
のがローマ神話、ってことだね。
違いを大雑把にまとめると、
・神々の呼び名(名前)が違う
・ギリシャ神話には登場するけどローマ神話には登場しない神々や英雄もいる。
(その逆もあり)
・ギリシャ神話は古代ギリシャ語、それを取り入れたローマ神話はラテン語。
紀元前2〜3世紀ごろに起きたマケドニア戦争によってギリシャはローマの支配下に置かれるんだけど。
ローマはさらに勢力を拡大し続け、やがて地中海全域を制覇するんだけど、「ラテン語」はローマ帝国の公用語だったから「ギリシャ神話の内容を取り込んだローマ神話」もラテン語でどんどんヨーロッパ中に広まっていったんだ。
時代と共に、また更にたくさんの文学者が物語やアレンジを付け足しながら、ね。
だから、ローマにとって都合良く変えられたお話なんかもあったりする。
神の名前がごっちゃになってる本も^^;
本屋さんにいくと、大体「ギリシャ神話」、「ギリシャ・ローマ神話」の2種類に分かれてたりするんだけど。
「ローマ神話」単体の本があまりないのは(※皆無ではないけど)、やっぱりローマ神話自体がギリシャ神話の流れを引いたから、なんだろうね。
ただ、「ギリシャ・ローマ神話」の本の中には、たまにだけどギリシャの神の名とローマの神の名がごっちゃになってるものもある^^;
例えば、「ゼウスとヴィーナスが---」など。
この場合、ゼウスはギリシャ神話の呼び名で、ヴィーナスはローマ神話の呼び名だね。(ギリシャ神話・ローマ神話の神対応表を参照)
ギリシャ神話の名前で統一するなら、「ゼウスとアプロディテが---」だし、
ローマ神話の名前で統一するなら、「ユピテルとヴィーナスが---」になる
・・・のが正解。
でもこれは多分、一般的に馴染み深い名前を各々から引っ張ってきて分かりやすくした、ってことなんだろうね。
だけど名前の対応ができてないと、ごちゃごちゃになったりするので注意^^;
(何を隠そう、私自身これでごちゃごちゃになった経験ありです)
◇◇◇◇今日のおまけ◇◇◇◇
ルーブル美術館に展示・管理されている「ミロのヴィーナス」像。
この像は紀元前120年ほど前にギリシャの彫刻家によって作られた、とされているんだ。
そして発見されたのはギリシャにある「ミロス島」と言う島。
ん??・・・あれ??
ギリシャの彫刻家によって作られた像で、ギリシャの島で見つかったなら本当は、
「ミロス島のアプロディテ」なんじゃ・・・?
うん、今もギリシャ語(現代ギリシャ語)では
「Αφροδίτη της Μήλου」
(アプロズィティ テル ミロ=ミロスのアプロディテ)
と表記されるよ。
だけど、ルーブル美術館での表記は「 Vénus de Milo」だし、
日本でも「ミロのヴィーナス」と言う名前で知られているよね。
それは・・・
この像は19世紀初めにギリシャのミロス島で発見されたんだけど、その後フランスのルイ18世に献上されてフランス国所有となったんだ。
「フランス語」は元々はラテン語が崩れて、ロマンス語になったものの1つ。
そう、ラテン語といえば、ローマ!
ローマといえばやっぱりローマ神話・・・だからローマ神話の神の呼び名なんだね。
「神話を題材にした有名絵画」もローマ神話(ラテン語)の名で表記されてることが多いから、ギリシャ神話の名前に馴染みが深い人は「ゼウスはユピテル、アプロディテはヴィーナスetc・・・」など、名前を変換して鑑賞すると絵画の読み解きがしやすいんじゃないかな。
ちなみに、ミロス島は日本の小豆島と「姉妹都市」だそうです。