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西の湖で手こぎ船の船頭体験&野菜収穫体験ツアー

近江八幡(おうみはちまん)の名物といえば、そのひとつは水郷。国の重要文化的景観第1号として、八幡掘から西の湖、長命寺川を含む広いエリアが選定を受けています。

今回はそのうち、西の湖園地の水路をめぐる、手こぎ船に乗ってみました。現地で4社営業されている水郷めぐり事業者さんのうち、ご利用させていただいたのは「水郷のさと まるやま」です。

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近江八幡・東近江・愛荘の3地域共同で行われている「地域の職人を訪ねて2020」プログラムに参加してみました。

ただ船に乗って景色を眺めるだけでなく、自分で船を漕いでみる船頭体験、さらに畑の野菜収穫体験もあり、充実したツアーになりました。


船乗り場へのアクセス

「水郷のさと まるやま」は近江八幡の市街地東側を南北に走る、県道26号(別名「浜街道」)の先にあります。

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近江八幡の市街地から車で行く場合は、ファーマーズマーケット「きてかーな」とローソンがある「県道多賀」の交差点を超えて、長命寺~休暇村の方向に向かいます。

途中、左手に見えるラ コリーナやヴォーリズ記念病院の入口を通り過ぎ、最初に通過するT字路を右に曲がります。位置的には百々神社~渡合堰まで行く手前にあたります。

駐車場、駐輪場完備

「水郷のさと まるやま」には広い駐車場があるので、車数台で訪れても大丈夫です。市街地からそれほど遠くないので、近江八幡在住の方なら自転車でもアクセスできると思います。

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自分は車を持っていないので、自転車で集合地点に向かいました。駐車場の中にしっかりしたサイクルラックがあったので、スタンドのないロードバイクやMTBで来られても安心です。

定期船と貸切船のサービス比較

今回は事前に電話予約して、船頭体験を含むプログラムに申し込んでみました。「まるやま」さんの案内板を見ると、予約不要・時間指定の定期船も出ているようです。

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定期船は4~11月の期間限定で、平日も含め1日3便、以下のスケジュール・料金で運航されています。予約すれば貸切も可能です

■定期便(所要時間、約60分)
 平日…10:00、13:10、15:00
 土日祝日…10:00、13:00、15:00
 ※料金は1名あたり、大人2,200円、学生1,870円、小学生1,100円

■貸切船(9~16時乗船、年中無休、要予約)
 6人乗り…60分コース8,800円、90分コース9,900円
 8人乗り…60分コース11,000円、90分コース13,200円

古いパンフレットとウェブサイトでは情報が異なるため、ご注意ください。最新情報は「水郷のさと まるやま」公式サイトで確認できます。

4人以上なら貸切船がお得

貸切船は「年中無休」とありますが、船頭さんの話では大晦日や元日に船を出した経験もあるそうです。正月休みに帰省した親戚をご案内してみるのもありかと思います。

定期便と貸切船の料金を比較すると、60分コースの場合、大人4人以上なら貸切を利用した方がお得という計算になります。ちょうど4名なら同料金ですが、船を貸し切った方がプライベート感覚でくつろげます。

今回申し込んだ船頭体験は2020年12月13日まで開催されているプログラムで、通常料金大人1名2,200円のところ1,600円で済みました。かなりお得なキャンペーンだったといえます。

手こぎ船の2ルート紹介

「まるやま」さんの手こぎ船ルートとしては、細い水路を南に進み、西の湖園地の開けたエリアに出て帰ってくるかたちになります。

90分コースの方なら、西の湖で真珠の養殖が行われている付近まで進まれるとのこと。

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90分コースの方が船旅を満喫できますが、60分コースでも体験時間はそこそこ長いです。実際のところ船頭さんの解説を聞きながら景色を眺める以外、派手なエンターテイメントはありません。

体験後に同乗者の中からは「60分でも長い」というコメントが寄せられたので、初体験なら短めのコースで十分楽しめるかと思います。

気になるトイレと服装について

船着き場の近くに男女別のトイレがあるので、乗船前に用を足しておくのをおすすめします。

乗船時間は1時間以上になり、手こぎ船の中にトイレはありません。湖の中にも途中で立ち寄れるようなトイレは存在しないです。

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船内は壁がなく吹きさらしなので、冬は相当冷え込みます。ヨシの林がある程度、風を防いでくれますが、風向きによってはかなりきついです。

秋冬に体験される際は、防寒着やホッカイロを準備するのがおすすめです。11月末の体験でも、船に1時間乗っていると相当身体が冷えました。

船の上にはござと座布団が敷かれていて、乗船する際は靴を脱いで入口にそろえておきます。揺れる船上で登山靴やブーツを着脱するのは危ないので、脱ぎ履きしやすい靴での参加をおすすめします。

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ちなみに手こぎ船で過去に転覆事故は一度もなかったそうです。普通に乗っていれば水しぶきを浴びるようなことはないので、レインコートや長靴までは必要ありません。

手こぎ船の乗り方、座席順

受付と料金のお支払いが終わったら、船頭さんに案内されて1人ずつ船に乗り込みます。

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今回参加したのは男女混合の6人グループ。小さい船なのでバランスを取るため、男性2名が船の前側に座るよう指示されます。座り方も1人ずつ互い違いに足を伸ばして座ることで、荷重がかたよらないように工夫します。

女性のみのグループの場合は、体重を自己申告するのが恥ずかしいかもしれません。船頭さんも女性には声をかけにくいそうなので、何となく体が重そうな順に先頭から着席しましょう。

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座席配置の理由をたずねたところ、男性が前側に座って船を前傾させることで、後ろにいる船頭さんが櫂を漕ぎやすくなるそうです。西の湖は水深が浅いので、船尾が低いとオールが湖底にあたって苦労されるとのこと。

今日は船頭さんも合わせて大人7人が乗っているせいか、船体がだいぶ沈んで水面が近くなっていました。ちょっと傾くと水が入ってくるのではないかというくらい、ドキドキする感覚です。

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手を伸ばせばすぐに水に触れられて、自然との一体感を味わえるのが手こぎ船の魅力です。

その代り風の強さや波の高さなど、気候条件によって小さな船は結構揺れます。船酔いしやすい方は十分ご注意ください。

水郷めぐりの見どころ

船着き場をスタートして、船頭さんの解説を聞きながら西の湖の方へ水路を進んでいきます。途中の分岐点から北に向かえば、長命寺川を経て琵琶湖に到達できるそうです。

水路の途中で3本ある橋の下をくぐります。

橋はそれぞれ鉄骨、コンクリートと素材が変えられていてバリエーション豊富です。船頭さんの説明によると、かつて西の湖を観光地化するにあたって、このように意図的なデザインが行われたらしいです。

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橋のひとつは河岸を石垣で補強してあり、石の積み方は安土城と同じ穴太(あのう)積を再現しています。これは船の中からしか見られない光景なので、橋を通過する際はぜひ石垣に注目してみてください。

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船の中から見えるのは延々と続くヨシ原で、遠くには安土山や八幡山の山並みを拝めます。

西の湖は国の重要文化的景観、ラムサール条約湿地として保護されています。また琵琶湖の水質を保全するため、このエリアは宅地開発が制限されているとのことでした。

船でしか行けない龍神様

水路の途中に「よしの龍神」というほこらがあり、陸路ではたどり着けない特殊な神社になっています。今回は上陸して参拝することができないので、船の中から拝むかたちになりました。

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滋賀県は人口あたりの寺密度が全国一で、町中には神社も相当数存在します。湖の中にまでほこらがあるのは、さすがだなあと思います。

ちなみに琵琶湖の中にある沖島には、人口280人程度にも関わらずお寺が2軒、神社は3軒もあるそうです。

船頭体験、オールの漕ぎ方

船の中から景色を見るだけでも癒されますが、今回は船頭体験というアクティブなメニューが用意されています。順番に船の後ろに移動して、船頭さんに代わって櫂を漕ぐ練習をさせていただきました。

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木製のオールはそこそこ長く、船尾の突起を支点として左右に動かす方式になります。船には軽く乗っているだけなので、激しく動かすとオールが鉄製の突起から外れてしまいます。

また西の湖の水深は1メートル程度と浅いので、櫂を深く差し込むと底の泥に刺さってしまいます。水面下を浅く水平に動かしつつ、うまく力を伝えて船を前進させる工夫が必要になります。

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船頭の修行には何年もかかるそうで、最初はほとんど前に進まない状態でした。力まかせに漕ぐより力の加減が重要とみえて、適当に漕いでも左右に蛇行してしまいます。特に向かい風になると風の抵抗が増して、船がますます動かなくなります。

手こぎ船の櫂では前にしか進めないため、船着き場にバックで戻る際はオールでなく竿を使うかたちになります。

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湖底に竿を突き刺して船を誘導するのですが、こちらの方が櫂漕ぎよりさらに難易度が高いとのことでした。

水郷の船頭という職業

船頭さんはいわゆるフリーランスで、予約を調整して都合のいいときに仕事ができる自由な職業なようです。船を漕ぐにはそこそこ体力が必要で、湖の歴史や自然を紹介したり、お客さんと話して楽しんでもらう工夫も求められます。

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夏や冬は気候も厳しいと思いますが、やりがいのある素敵な職業に見えました。身体を動かすので健康にもよさそうです。

西の湖の近くにお住まいなら、副業もしくは定年後の仕事として、船頭修行に挑戦してみるのもいかがでしょうか。「まるやま」さんのウェブサイトでは、船頭志願者を随時募集されているようです。

野鳥を間近で観察できる

水郷めぐりの魅力のひとつは、船から何種類も観察できる水鳥です。

11月の季節に多く見られたのはマガモやカルガモでしたが、時期によってはヨシキリなどの渡り鳥もやってくるそうです。カワウとおぼしき黒っぽい鳥や、アオサギも間近で目撃することができました。

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滋賀県の県鳥カイツブリも西の湖で観察することができます。鴨に比べるとサイズが小さいので見過ごしやすく、船が近づくとすぐ水中に潜ってしまいます。

カルガモのエサやり

途中でカルガモの夫婦が船に近寄ってきました。

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どうやら船頭さんが餌付けしているようで、こんな間近でカモを見たのは初めてです。手が届きそうなくらい近寄って水鳥を観察できるのも、西の湖水郷めぐりの特徴といえます。

西の湖のヨシ刈り、ヨシ焼き

湖岸にはあたり一面、ヨシが茂っています。11月中旬はもう葉が黄色くしおれていますが、1年を通じてよしの変化を楽しめるのが西の湖の特徴といえます。

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毎年4メートルほどの背丈に育ったヨシを刈り取って、残りは火を点け焼いてしまうそうです。西の湖全体のヨシを刈るのは大変な作業に思われますが、今は鎌でなく草刈機で効率的に作業されるそうです。

最初は船から刈るのかと思いましたが、湖岸は足場のしっかりした島になっているので、地上から作業できる模様。

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毎年ヨシを刈って焼き払うことで、害虫が駆除され新芽の肥料が増えるという効果があります。今年の冬は、ぜひヨシ刈り・ヨシ焼きの風景を眺めてみたいものです。

ヨシとアシの違い

ヨシとアシには違いがあって、茎の中が空洞になっているのがヨシ、綿が入っているのがアシとのことです。中に空気を含むヨシの方が熱伝導率が低いので、葦簀(よしず)という簾(すだれ)に使われるのは、もっぱらヨシの方らしいです。

収穫したヨシは葦簀に加工されるほか、粉末をうどんやせんべいに混ぜて食べたり、炭にして料理に使ったり、多様な用途が開発されています。

コクヨのヨシ紙製品シリーズ

一般に手に入りやすいヨシ加工製品としては、コクヨ工業滋賀が製造するヨシ紙製品、ReEDEN(リエデン)シリーズがあります。ヨシ入りのキャンパスノートは滋賀県限定の表紙デザインで、お土産に人気です。

何冊か使い比べてみましたが、普通のノートと違いは感じませんでした。水性ペンや万年筆を使っても裏抜けが少なく、ヨシ素材でも品質が安定しているのはさすがコクヨ製です。

ReEDENシリーズで特にお気に入りなのがヨシ入りの名刺用紙で、ざっくりした和紙のような風合いになります。

名刺紙はヨシの含有量によって2種類販売されていて、ヨシを多く含むほど黄色みが強い独特の質感に変わっていきます。

事前予約で船内での食事も可能

船の中で食事はとりませんでしたが、予約すればお弁当や七輪ですき焼きをいただくことも可能なようです。

以前、西の湖すてーしょん発着のエンジン船で、郷土料理の「じゅんじゅん」をいただきました。動きのゆっくりした手こぎ船で鍋をつつくのも、また風情があってよさそうです。

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家族・親戚や会社の同僚・取引先を招いて、船の中で借り切り鍋パーティーを催してみるはいかがでしょうか。西の湖の大自然のなかで、都会では味わえないぜいたくなリフレッシュ体験になりそうです。

野菜収穫体験とお土産

東近江「地域の職人」を訪ねてツアーでは船頭体験のオプションとして、プラス200円で野菜の収穫も楽しめます。

普段、畑仕事はしないのでどういう作業になるのか不安でしたが、すでに実っている野菜を摘み取るだけの簡単作業でした。スコップを借りて土をほぐせば、大根もネギも楽に引き抜けます。

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野菜の種類は大根、ニンジンなどの根菜類から、白菜、わさび菜といった葉物、めずらしいところではレモンも用意されていました。これらの野菜の中から予算200円の範囲で、好きなものを収穫してよいルールになっています。

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自分が選んだのは大振りの大根1本とネギ2本。大根にはみずみずしい葉っぱも付いてくるのがうれしいです。味噌汁に入れたり煮物にしたりして、料理を楽しみたいと思います。

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「まるやま」さんの野菜は近くのJAショップ「きてかーな」でも販売されています。近江八幡の地元食材が手に入るうれしいお店で、生産者さんの顔が見えるとさらに愛着がわきます。

船乗り場の受付近くには野菜の販売コーナーもあったので、船に乗らなくても買い物できると思います。

西の湖、水郷めぐりの感想

今回の船頭体験プラス野菜収穫体験は、合計1.5時間程度のアクティビティーになりました。

料金は大人1名税込1,800円(うち野菜収穫体験200円)だったので、定期便の通常料金よりリーズナブル。船に乗るだけでなく、野菜のお土産までついてくるうれしいプランでした。

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ヨシの林を見ながらのんびりくつろげて、水鳥との触れ合いも楽しめる水郷めぐり体験。琵琶湖で遊ぶのとはまた違う、落ち着いた趣でゆったり過ごせます。

カヌーやSUPなどアクティブなスポーツではなく、湖を眺めてただぼーっとしたい人には向いています。冬の寒さとトイレがない以外は安全な乗り物なので、お子さまからシニアの方まで幅広く楽しめると思います。


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