俳優という仕事

平日午後、見るとも無くテレビのリモコンを触っていたら、昔のドラマの再放送をやっていた。「昼顔」はそう言えば主婦の不倫ドラマで、ずっと前話題になっていた事があったっけ。主人公の不倫相手役の斎藤工さんは、何となくずっと好きになれない俳優だ。やはりかなり前のドラマで、サイコパス的な凄く嫌な人物を演じていて、それが彼を知った初めての作品だったのもあって、悪い印象が残った。役柄が本人と同人格でないと分かっていても、斎藤工さん自身がとても嫌な怖い人に思えてしまった。

斎藤さんは監督もやるし、CMでもちょこちょこ見掛けるので、才能と人気のある俳優なんだ、という認識に変わって来ても、何だか第一印象の嫌な役柄が拭い切れず、やっぱり何となく嫌いだった。「昼顔」の堅物先生役は、ヒロインがどんどん惹かれていく魅力的なちょっと不器用な男性として、見ていたら今度は「いいなぁ」に変わってきた。女はこういう人に惹かれるよなぁ。

ドラマや映画にあんまり感情移入しなくなった気がするが、気がするだけで涙や笑いが勝手に溢れる。配役で憧れられる事もあれば、心底嫌われてしまう事もある、俳優という仕事。上手に演じるなぁ、なんて思わされる人はまだまだで、演技に見えない人が本物なんだ。斎藤工さんを紐解くと、かなりの数の作品に出ている事がわかった。カッコよさ、若さはいずれ褪せて行くものだけど、人生が染み着いたような本物の演技はいつまでも見ていられる。歳を重ねたら重ねたなりの素敵がある。

そう言えば男性の色気って、クタクタに疲弊してる時、真剣に何かに没頭してる時、煩悶している時、つまり眉根を寄せた深刻な顔つきの時に滲んで来る。皺一つも刻まれて居ないツルリとした顔や、髪型のシルエットをしょっちゅう気にしてなければならない人からは、どんなに顔が良くても浮かんで来ない。

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