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ローマンの動画

「小さい人、渡っている」という園児さんの道路横断の様子を、たどたどしい日本語で実況しているバイク乗りの動画。それがローマンさん動画との出会いだった。

この人の動画の魅力は、やはりこの人自身だろう。危なっかしい日本語を繰り出す割には本当の所を突いていて、狙ってるんじゃないかと思えるような可笑しみは、決して狙っていないが故に面白い。動画を見ていて何度も噴き出すのは、ローマンの以外は今の所皆無だ。

昔、ボビーオロゴンがメディアに引っ張りだこになっていて、彼のめちゃくちゃな、でも日本人にはちゃんと理解出来る言葉遣いは、ローマンに通じるものがある。彼等が敬語や言い回しに苦労しているのを見て、改めて日本語が複雑で表現の多様さを持つ言語だと再認識する。

バイクが走る。高速道路や海沿いの道、山道、何の変哲も無い国道や生活道路。そこは行った事が無くても見知った風景で、特段珍しさも無いのだけど、私達はローマンと一緒にツーリングしているような、彼に掴まってあちこち走っているような気になる。普通の風景が流れる中を、ローマンの独り言を聴きながら心象風景を結ぶ。

飾り気の無いもの、ごく普通のもの、強くないもの、奇を衒わないものに私達は惹かれるようになって来た。それはストレス社会から逃れたい気持ちや、過剰でわざとらしい物へのお腹いっぱい感もあるだろう。ローマンは自身を「ガイジン、ガイジン」と、ちょっと揶揄や卑下のニュアンスが入り混じる一人称で呼ぶが、日本という国の奇妙さは、違う文化の目で見てこそ気付かされるのだ。そう考えると、ローマンは日本語の不自由な外国人などでは決してなくて、深い所で人間や社会を理解し眺めている、聡明な人なのではないかと思う。

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