ネチネチした男
ネチネチした人が好きって人は居ないだろうけど、本人にネチネチの自覚はあるのだろうか。その人は立場的には上司ではなく同僚、少しだけ先輩という位置にいる。私自身にネチネチを向けられた事は無かったのだが、常日頃の人とのやり取りでネチネチ振りを発揮していたので距離を取っていた。
それは突然やって来た。ある仕事について「やり方を教えてくれ」と言うのだが、説明するも中々納得しない。内容が難しいとかややこしいのではなく、本筋から離れたどうでも良い事に拘って、顔を傾けたり目を細めたりしてウンウン唸っている。とうとう側で聞いていた上司が「そこは別に気にしなくていいよ」と言って、やっと矛を収めた。
何なのだ。気の短い私はかなりイライラして少し語気を強め始めた所だった。ネチネチ氏は話が長い。自分が完璧に納得するまで食い下がる。ややもすると話は仕事から逸れて、ネチネチ氏の独り善がりな美学を聞かされる時間となる。その間も勿体ぶって腕を組んでみたり、溜息をついたりと忙しい。本当に何なのだ、この人は。
いつだってマグマを吐いてやるわと思うけれど、大人気ないとか自制が働くとも違う、「ま、どうでもいいわ」という強力な虚しさとバカバカしさにより、黙している。
いろいろな人間が居る。ネチネチ氏は鬱陶しさを振り撒く一方で、見方を変えれば何事にも丁寧に向き合う誠実の人なのかも知れない。