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素人でもできた!ゼロから作るひとりコント(R-1グランプリに向けて)

どくさいスイッチ企画
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dsatwalle@gmail.com


はじめに

お世話になります。
どくさいスイッチ企画です。
主に一人コントを行っているピン芸人です。

ピン芸の全国大会「R-1グランプリ2025」の開催およびエントリー開始が発表されました。

R-1グランプリの一回戦に出るにはエントリー料2000円と2分のネタが必要です。この「2分のネタ」を作るのが意外と難しく(そして面倒くさく)エントリーを見送る方が多数いらっしゃいます。悲しいことです。R-1グランプリが盛り上がってほしいので2分のネタをゼロから作る方法についてまとめたいと思います。自分はコントしかできないので厳密には2分のコントをゼロから作る方法について考える、という内容です。何かのお役にたてば幸いです。

なお、どくさいスイッチ企画のR-1グランプリの戦績は下記の通りです。

2011年、2012年、2013年 二回戦敗退
2014年 一回戦敗退
2022年 準々決勝敗退
2023年 準々決勝敗退
2024年 決勝4位(アマチュアとしては史上初)

お笑いの養成所に通ったことや事務所に所属したことはありません。ほとんど見よう見まねでコントを始め、なんとか決勝までいくことができました。ですので、下記の方法はほぼ自己流で、自分もいまなお勉強中です。

テーマを決める

まず、コントのテーマを決めます。テーマは場所、職業、設定でもなんでもいいです。例えば「コンビニ」「裁判官」「とてもモテる男」みたいなことです。
テーマは本当になんでもよいのですが、公序良俗に極端に反するものは避けたほうが無難です。テーマ設定を誤ると、これ以降の作業が全て無駄になる恐れがあります。あなたの中の常識をフル稼働させましょう。
自分がやりたいことをテーマにすると書きやすいです。自分の見た目・喋り方に合うことをテーマにすると完成したコントに無理がなくなります。どくさいスイッチ企画はこれまで「会社の上司」「中途入社の社員」「先生」「クイズ王」といった役柄でコントを
行ってきました。たとえばこれが「セーラー服の女子高生」だったりすると面白いネタが書けても見た目で不快感を与えてしまうため良いネタは作れないと考えられます。とはいえもちろん、自分の見た目・喋り方に合わないことをあえて選ぶというテーマ設定も可能です。どくさいスイッチ企画には「ローリーズファームで働いているおじさん」というコントがあります。結局どういうテーマにしたらいいのか?に正解はなく、演じる人によって合う合わないがあるので一概には決めつけられません。自分でも何が合うのか分からないこともあるので、とにかく適当なテーマを決めてコントを書き始める、これが極めて重要なプロセスになります。

要素を書き出す

テーマを決めたら要素を書き出します。「要素」はよく大喜利で使われる表現で、テーマに関係するもの、こと、人などの事象を指します。
たとえば「コンビニ」で言えば「駐車場」「入店音」「お弁当あたためますか」「アルバイト」「監視カメラ」「制服」「万引き」「タバコを番号で呼ぶ」「クレーマー」「チェーン展開」「同じ店が近所に2件ある」「入口に若者がたむろしている」「イートインスペース」「ATM」などです。
これを思いつく限り書き出します。時間制限を設けると一生懸命考えるので書きやすいです。正解はないので、とにかく思いつくものを書き出します。

面白いことを考える

これから作ろうとしているものは笑いをとるためのコントなので、笑える部分を作らないといけません。そのために先ほど書き出した要素を使います。
書き出した要素に対し「増やす・減らす」「なくす」「付け足す」「逆にする」「順番を入れ替える」「他の要素と入れ替える」「全く別の好きな要素を投げ込む」といった手順で何か面白いことが起きないか考えます。

先ほどのコンビニの例で言えば
「駐車場にガンダムがいる」(好きな要素を投げ込む)
「入店音がバカでかい」(増やす)
「お弁当あたためました、と言われる」(順番を入れ替える)
「店員が手に持ったカメラで客を監視している」(付け足す)
「万引きを喜び、ほめたたえる」(逆にする)
「客を番号で呼ぶ」(ほかの要素と入れ替える)
といったことが無限に考えられます。

この過程で「いい設定」になる面白いことを思いついた場合、それを単なるギャグではなくテーマにして再び要素を出して面白いことを考えます。
「駐車場にガンダムがいる」をテーマにした場合「隣にマジンガーZもいる」「アムロが入店している」「オタクがたむろしている」みたいなことを別の紙に書き出していきます。これが使えるかはいったん置いておいて、膨らませるだけ膨らませてみるのが大事です。

重要なのは、クリティカルな思いつきを狙わないことです。
コントの根幹になりうるギャグや設定を一発で作ろうとすると「何も面白いこと思いつかないな……」と自己嫌悪に陥り作業の手が止まってしまいます。「こういうのもあるかもな、くだらないけど」くらいのハードルでどんどん面白いことを作り、気に入ったものを選ぶくらいの気構えが大事です。

いくつか作る

ネタにならなくてもいいので、上記の作業(テーマを決めて要素を書き出し、なんか適当な面白いことをつくる)をいくつか作ってみることをお勧めします。テーマ間の行き来が可能になるからです。例えば「コンビニ」と「医者」の要素および面白いことを大量に考えておくと、共通点や相違点がすぐ明らかになるので、「コンビニみたいな医者」「コンビニかと思ったら医者だった」「医者が働いているコンビニ」といったネタをスムーズに制作できます。思いもよらないコントに発展する可能性があります。

コントを作る

ある程度面白いことがたまって「ネタになりそうだな」と思ったらまとめる作業に入ります。フリップなら思いつきを個別に発表すればよいのですが、いまから作ろうとしているものはコントなので展開が必要になります。
「起承転結」とか「守破離」と言われるものです。ただ、この段階では細かい展開や伏線を気にする必要はありません。とにかく最後まで完結するコントを作ってみましょう。ネタ時間は気にせず、出した要素を全部使うくらいの気概で一本にまとめてみる気持ちでいきましょう。

コントを縮める

一本のネタができたらそれを縮める作業に入ります。ガチガチに固まったコントを縮めるのは本当に大変ですが、ここまでで作ってきたのはかなり柔らかい状態の、積み上げで作ったコントなので縮める作業は比較的楽です。
無理のある展開、いらない説明セリフ、気に入っているけれど時間のかかるフリとギャグなどを優先して削っていきます。自分が頑張って作ったネタだという思いを一旦捨てると編集がはかどります。いかに少ない説明でいかに大きな笑いが取れるか、を常に念頭に置きながら編集しましょう。

コントを整える

ある程度、時間の目途が立ったら、調整に入ります。導入で目を引けるか、セリフの言い方や語尾を変えたらもっと面白くならないか、展開に無理はないか、オチ周りで停滞していないか、などです。
この段階までくると人によって持論と美意識と面白さが異なるため、一概にこうしたほうがいいというアドバイスはありません。
唯一触れておきたいのが「おうむ返し」についてです。(架空の)相手が言ったセリフを復唱して状況を説明する手法です。「え?『もう別れたい』だって?」みたいなことです。この「おうむ返し」についてはできるだけ使わないほうがいいと言われていて、自分も基本的には同意です。ただ、全くおうむ返しを使わないコントは相当脚本を練らないといけないので、連発さえしなければ「おうむ返し」もアリだと思っています。たとえば復唱する単語をヘンテコなものにしたり、リアクションを足したりすることでおうむ返しぽさを消せるかもしれません。

コントを見せる

コントができたら本番前に一度、他人に見せることをお勧めします。実際に上演するのが難しければ動画でもいいし、動画が無理なら脚本でもいいし、脚本を作っていなければ「こういうことをしようと思っている」というふわっとした流れだけでも誰かに伝えてみてほしいです。この段階で誰にも笑ってもらえなかった場合、残念ですが何もかも間違っている可能性があります。どうすれば面白くなるのか改めて検討しましょう。もしかするとネタを観てくれた人がアドバイスをくれるかもしれません。ありがたく受け取りましょう。ただアドバイスには必ず従う必要はありません。最終的には自分で決めましょう。

コントを練習する

よい台本ができたら練習をします。R-1グランプリの予選において「ああ、この人アマチュアだな」と一発で分かるポイントが3つあります。声量、早口、手の震え、です。手の震えは正直どうしようもないと思います。(僕も震えます)ただ、声量と早口に関しては練習である程度是正できます。練習が与えてくれる最大の効果は自分のネタに自信が持てることです。2分のネタなので、1時間で20回は練習できます。できるだけ繰り返しましょう。壁に向かって行うのがおすすめです。R-1のお客様はほぼ壁です。

おわりに

以上、全くのゼロから2分のコントを作る自分なりの方法について書き出してみました。何かのお役に立てば幸いです。一人コントは難しいですが面白いので、プレイヤーが増えればいいなと思っています。せっかくR-1グランプリから芸歴制限が撤廃され、誰でも出られる大会になったのだから、もっと注目されて競技人口が増えればいいなと心から思っています。ぜひR-1グランプリにも挑戦していただければ嬉しいです。

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