あたたかいしあわせ
大学生になってから出来た趣味がある。それは喫茶店巡りだ。
地元から遠く離れた、地元よりも静かで落ち着いた地で、大学生らしく、かつ、この雰囲気を十分に感じられるようなことってなんだろう、と、ある時考えてみた。
そういえば私、この地に来てから、周りの景色を見ながら散歩することと、行ったことのないお店にふらっと入ってみることが増えたなー。でも、パン屋さんとか雑貨屋さんが多くて、座って何かを食べたり飲んだりしながらゆっくり過ごす、とかはやった事ないなー。そういえば、ずっと行ってみたいと思ってた喫茶店が沢山あるんだよな、行ってみようかな。
そんなこんなで、大学で知り合ったお散歩好きのお友達と一緒に喫茶店をとりあえず2箇所、行ってみることにした。
1軒目は、近所の喫茶店。
おじいちゃんが1人で営業しているみたいだった。
ちょうどお友達と「喫茶店のモーニングが食べてみたい」と話していたところだったので早速モーニングに。
お店の中は、The・喫茶店って感じで、昔のレコードがBGMとしてかかっていて、壁にはお店のおじいちゃんが撮ったであろう写真がずらっと。
言ってしまえばただの喫茶店なのに、今まで1回も来たことなかったのに、昭和の時代なんて生きたことないのに、とても懐かしくて、心が凄く落ち着いて、なんだか昔を思い出すような気持ちになった。"心があったかい"ってこの事を言うのか。"幸せ"ってこの事だったのか。
2軒目は、飲み屋街のとあるビルの地下にポツンとある喫茶店。
こちらはおばあちゃんが1人で営業している様子。喫茶店と言えばパンだよな、ということでパンと飲み物を。
木のテーブル。暖炉。雑誌や新聞。カウンターとテーブルの距離は少し遠く、キッチンの棚にはティーカップが綺麗に並べられている。この光景。私にはドンピシャだった。
私たち以外で若者は全然居らず、サラリーマンだったり、素敵なおじいちゃんおばあちゃんだったり、年齢層的には高くて常連さんばっかりが来ているイメージ。
煙草を吸うおじいちゃんがいたりして、時たま煙草の香りがしてくる。煙草の香りで、昔の雰囲気を少しだけ味わえた気がした。ご時世的に禁煙としているお店が多い中、喫煙可としている喫茶店も悪くないなと思った。副流煙は嫌だけど。
お友達とパンと飲み物を満喫した後、このお店の有名なパフェでも食べようか?と話していたところ、お店のママさんがいきなりミニパフェをくれた。小さい容器に生クリームと少しのバニラアイス、ひと切れのいちごとバナナを添えて、チョコソースまでかけてあった。「こっそりこっそり」って言いながら。
このお店も、はじめて来た所だった。それなのにパフェのサービスまでしてくれて、ママさんの心のあたたかさに触れることが出来た。
喫茶店を経営している方って、喫茶店のパンやコーヒーと同じくらいあたたかい人ばかりで、本当に素敵な人ばかりだなあ、と思った。
太陽に当たって日向ぼっこをするとき、人に優しくして貰ったとき、出来たてのトーストを食べるとき、淹れたてのコーヒーを飲むとき、はじめてなのにはじめてじゃないような気持ちになるとき。
人によって「あたたかい」の種類も感覚も、「幸せ」の定義も条件も違う。
その中で、私は、
喫茶店でパンや飲み物を口にして、そのお店の雰囲気を五感で感じて、どこか懐かしさを感じてふっと心が落ち着くこの感覚を
「あたたかいしあわせ」
と名付けることにしたいと思う。
よし、また新しい「あたたかいしあわせ」を見つけに行くか〜。