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シットコム『Community』の笑いどころ調査 | Laugh Track #1

「海外の笑い」を理解すべく、海外コメディドラマの笑いどころを調査する『Laugh Track』。本企画の詳しい方針については第0回を参照。

さて、記念すべき第一回に紹介するのは、Dan Harmon 作の『Community(邦題:コミ・カレ!)』。全シーズンを完走した作品の中でもトップレベルに面白いと思う。

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『Community』はシットコム入門にぴったりな作品と紹介されがちだが、その笑いを理解するのは割と難しいのでは無いだろうか・・・?まず、『フルハウス』みたいに録音笑いが無い。「面白い場面」に流れる録音笑いがないから、冗談を言ったのかどうかがすぐにはわからない。次に、パロディの多さが尋常じゃ無い。知らなければわからない系のギャグが多いので観る人を選ぶかもしれない。が、有名どころのオマージュも多いので楽しめないことはない。

企画名は『Laugh Track』(録音笑い)なのに、第一回にしてすでに録音笑いが無い類のシットコムを紹介している・・・。まぁ、とりあえず今回は『Community』の全シーズンを通しての雰囲気とその笑いの種類を大まかに紹介したいと思う。飛ばし飛ばし気になるところをかいつまんで読んでもらえれば嬉しい。

Cue the Laugh Track!


■ Community(邦題:『コミ・カレ!』)とは

★ 概要
「Rick and Morty」でお馴染みのDan Harmonが手がける学園系シットコム。2009年〜2015年にNBCで放映された。負け犬学校と悪名高い「Greendale Community College」を舞台に、ハミ出しもの7人が繰り広げるぶっ飛びコメディ。1エピソードは約20分ほどで6シーズン(全110話)ある。数多くのマーベル映画の監督・制作であるルッソ兄弟も当作品のプロデューサーを務めている。実は、マーベル映画をよくみると『Community』のメインキャスト達がカメオ出演していることが・・・!本作はNETFLIXやアマゾンプライムで観ることができる。

★ 主なキャラクターたち
◉ 学歴詐称で業務停止処分を受けた弁護士のジェフ(Joel McHale)。
  口達者で二枚舌。でこ広ハンサム。
◉ 気の強い金髪美女、ブリッタ(Gillian Jacobs)。
     自称活動家のおせっかい焼き。革ジャンがトレードマーク。
◉ ポップカルチャー大好き、マシンガントーカーのアベッド
  (Danny Pudi)。現実をTVドラマだと思っている。
◉ 高校ではスクールカーストの頂点にいたトロイ(Donald Glover)。おバカ。ちなみに役者さんは"This is America"で
 お馴染みの歌手 Childish Gambino と同一人物。
◉ 集中力を高める薬に依存して高校を中退した超優等生、アニー
  (Allison Brie)。ウブでいたいけな少女。たまに張り切りすぎる。
◉ 心優しい専業主婦、シャーリー(Nicole Yvette Brown)。
     従順なるキリスト教徒でバツイチ。ゴシップ大好き。
◉ 元大手企業CEOのピアース(Chevy Chase)。
     セクハラ・モラハラくそジジイ。
◉ イカれスペイン語教師のベン(Kim Jeong)。
◉ Greendale Community Collegeのダメダメ学部長、ペルトン (Jim Rash)。

★ あらすじ
学歴詐称で営業停止処分を受けた弁護士のジェフ。必要最低限の力でゆるーく大学卒業資格を獲ろうと負け犬カレッジ「Greendale Community Collge」に入学する。楽単ばかり受けて過ごす学生生活。しかし、同じスペイン語クラスの金髪美女の気を引こうと"勉強会"を開いたことをきっかけに、曲者ばかりのツギハギグループのまとめ役になることを余儀なくされる。意識高すぎ優等生、時代遅れなクソ老害、現実とTVドラマの区別がつかない30代・・・。おまけに、スペイン語教師は資格すら怪しいイカれ野郎。

果たして彼らは互いに手を取り合い、「コミュニティ(共同体)」としてこの底辺カレッジを生き抜くことができるのか?ハミ出しもの7人組のぶっ飛びキャンパスライフに迫る!

■ 笑いどころリポート

☆ キャラのクセが強い!
捻りがないのだが、『Community』のおもしろポイントその1は個性的な面々と彼らの掛け合いだろう。TVドラマである以上濃いキャラがいるのは当たり前なのだが、メインキャラは全員濃い。年齢、性別、性的嗜好、人種、生い立ち、コミカレにいる理由などなど、全てがバラバラだ。そのため、アンジャッシュのようなすれ違いネタがあったり、度が過ぎない程度に人種差別をネタにする場面もある。

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シリーズを通して、メインキャラの7人全員が一つのストーリーに絡むわけではない。多くのエピソードは、7人のうち複数人を追ったサイドストーリーで構成されている。あるときは「二枚舌弁護士 × しっかりもの優等生」、またあるときは「老害 × バツイチ主婦」。意外な科学反応で毎回違ったユーモアがある。特に、本作の "Iconic Duo"(看板タッグ)といえばトロイアベッド。無邪気な掛け合いに安心して笑える二人組だ。

☆ コミュニティカレッジあるある・・・?
『Community』の魅力の一つは、現地人には納得できる「コミュニティカレッジあるある」なのではないだろうか。

原題『Community』(日本語で地域社会、共同体の意)の名のごとく、アメリカに生きている人にとって「いるよね、こういう人!」という特徴を表現している。(リアルサウンド映画部より

そもそもコミュニティカレッジ(コミカレ)は、「大学に行けなかった人が行くところ」みたいな扱いをされている。舞台の「Greendale Community College」はその中でも特に質が悪い設定だ。「コミカレってこんなとこだよね」とか「コミカレってこんな奴いるよね」みたいなステレオタイプがおもしろポイントの一つなのだろう。実際、各メインキャラはいそうなひとたちを体現している。何にでも首を突っ込む自称アクティビストの白人女性やら、息をするかのようにセクハラをする老害やら・・・。最終的には、ザコシショウ並に誇張されすぎてて「ねーよ!」となるのだが、それもまた面白い。

また、誇張とかではなくそもそもが「ないない」なネタもある。履修届を争ってキャンパス内で24時間にも及ぶサバゲーが行われたり、ハロウィンパーティで出された軍用レーションを食べてゾンビパニックが起こったり・・・。

☆ 隙あらばパロディ!
『ダークナイト』、『パルプ・フィクション』、『フレンズ』、『ブレックファストクラブ』、『スターウォーズ』、『ドクター・フー』・・・。『Community』の8割はパロディネタでできていると言っても過言ではない。ネタにされるものも映画やTVシリーズから歌手や俳優までさまざまだ。実際に知らなければ、理解に苦しむネタもあるだろう。

元凶はメインキャラの一人、ポップカルチャーマニアのアベッド。現実がTVドラマであるかのように振る舞い、隙があれば 小ネタ("Popculture reference")を挟んでくるキャラだ。「第四の壁」を破ることこそないものの、自分が『Community』のキャラだと理解しているような言動が多く、メタ発言も激しい。

だが、これらのパロディ・小ネタは必ずしも「知らなければわからない笑い」というわけではない。例えば、マフィア映画のオマージュとしてみんな大好きフライドチキンを流すカルテルを立ち上げるエピソードがある。エピソードにもよるが、知らなくても面白いけど知っているともっと面白いネタが大半だろう。映画やなんかのあるあるを学園というシチュエーションに落とし込んでいるだけなので、わからないネタばかりに邪魔されて楽めないということはない。

・・・とは言うものの、日本の視聴者にとっては難解すぎるネタもたくさんある。例えばシーズン1の第20話「The Science of Illusion」のワンシーン(ネタバレ注意)。

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いたずらで魔法使いの格好をさせられる老ぼれピアース。クッキーの形をした杖を持つと周りのキャラがクククと笑う。どうもこれ、アメリカではお馴染みの Cookie Crisp というシリアルのマスコットをネタにしたものらしい。今ではもうマスコットが違うため、ピアースを騙した張本人すらネタをわかってないというくだりがあるのだが・・・。そんなのわかるか!

☆ 締めにひと笑い(エンド・クレジット)
『Community』のエピソードは大体1話完結型なのだが、各エピソードごとにエンド・クレジットシーンがある。これらのシーンは、そのエピソードのストーリーとは関係ないことが多く、締めのひと笑いにもってこいだ。多くは独立したシーンなので、出てくるキャラクターを知らなくても楽しめる。実際、YouTubeなどであがっているおもしろシーン集には必ずと言っていいほどエンドクレジットシーンが入っている。

☆ ゲストが豪華で笑う
超くだらない作品のキャストや声優陣が豪華だったときはファンが沸く。この感覚はシットコムでも同じらしい。『Community』には、数多くの著名人がゲスト出演している。「顔は知ってる」とか「この人有名だったんだ」程度の俳優や女優ももちろん出演しているが、数秒映して終わりにするにはもったいないような人たちもいる。例えばジャック・ブラックオーウェン・ウィルソンなどなど。シリーズ後半にはなるが、『ブレイキング・バッド』でガス・フリングを演じたジャンカルロ・エスポジートも出演している。

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■ まとめ

今回紹介したのは、つぎはぎ7人グループのキャンパスライフを描く学園系シットコム『Community』。背景がバラバラなクセの強いキャラ達と数多ものパロディのおかげで笑えるシチュエーションは無限大。難解な小ネタもたくさんあるが、必ずしも知らなければ楽しめないと言うことはない。

『フルハウス』のように録音笑いがある、いわゆるオーソドックスなシットコムではないが、英語圏の笑いを理解するのならここから始めてみるのもいいかもしれない。今回述べた笑いどころは、筆者がシリーズを通して個人的に感じたザックリとしたおもしろさである。まだまだ見逃しているかもしれないので今後も調査を続けていきたい。

最後に、onoz11氏による『Community』面白シーン集を紹介しよう。"No context"系の動画なので前後のストーリーを無視した切り抜き集なのだが、ネタバレを気にすることなくみることができる。『Community』のユーモアをぜひ肌で感じてみてほしい。(字幕なし)


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