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彼女に「別れよう」と提案された。
僕は別れたかったのに「別れたくない」と答えた。
そしたら彼女も納得したようにこの最悪の状況の打開策を考え出した。
僕の胃はまたキリキリ痛み出した。
僕は吐露した。
彼女に対する不満点をダラダラ吐露した。
彼女は泣いた。
自殺をしようとしていた彼女には酷い仕打ちだったと思う。
でも僕もその時死にたかったんだ。
君はいつも「死にたい、死にたい」っていうし、僕は「今後やりたいことがあるから死ねない」というし、客観的に言葉尻や人柄的雰囲気だけで言えば、彼女のマイナス思考を僕が支えていると思われているかもしれない。現に彼女は僕のことを心の支えにしていると思う。
でも僕だって死にたいんだよ。常に死にたいんだ。
今だって胃に穴が開くような痛みとこの複雑な人間関係から逃れたくて死にたいんだ。
彼女にそう言った事を言っても自分の方が辛いんだと言って聞く耳を持たない。
障害者手帳がないと弱音を吐けないのかよ。
僕はこんなに死にたがってるのに、精神障害じゃない平常な奴の悩みはいつも精神障害の悩みの下にいかなきゃいけないのかよ。
こんな事を彼女の前では言えない。
こんな事を言えば彼女はまた泣き出す。
泣くのにはもうヘキヘキしている。
彼女から「あなたはどうしたいの?私はどうすれば良いの?」と聞かれた。
僕は言葉に困る。
本当のことを全て言えば彼女は泣き止まない。
彼女を泣き止ませながら言葉をオブラートに包み、嘘を入れながら、ほんの少しの真を忍ばせてしか彼女に意見が言えない。
それを踏み間違えれば、彼女は泣く。
僕は誰かに助けてほしいのに。悩みを聞いてくれる人がいない。
彼女に対する秘密は僕の悩みに直球しているから。
僕の周りの人間はイコール彼女の周りの人間だから。

結局僕らの関係は続くことになりそうだ。
別れたいけど別れられない。
彼女は僕のコミュニティの中心人物だし、彼女がいなくなったらきっとコミュニティは消滅する。僕はそのコミュニティにしか居場所がない。でも彼女と別れれば、きっと彼女はこのコミュニティからいなくなる。
彼女との別れは僕の居場所の消滅に直結する。
彼女がいたから僕は映画が撮れた。彼女が上手く人を集めてまとめてくれたから僕は映画が撮れた。映画を撮ることは僕の生きがいで僕の全てだ。彼女が消えれば、それもできなくなる。僕は生きがいも失うのだ。

彼女のことをもう愛していないのに、別に好きな人がいるのに、別れられないのはそういう理由があるからで、この束縛からも逃れられない。

彼女に別れても友達のままでいられないかと尋ねたことがある。「そんなの都合が良すぎるよ、友達のままでいたいならはなから付き合うなよ」と言われた。ごもっともだと思った。
でも、僕は彼女に告白されたあの時、いつもみたいに女性からの告白を逃げていては駄目だと思ったんだ。一回付き合ってみなくちゃ分からないじゃないか。
そんなの甘いよな、でも君とは普通に笑っていたいんだ。

君のことを幸せにはできないけど近くにはいたいんだ。彼女としては無理だけど友達として喋っていたいんだ。

こんなことになるなら付き合わなければ良かった。あの時軽はずみに返事をするべきではなかった。

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