内部生の相関基礎 院試体験記
4年生のシロ(@w_phys_hite)です。統合自然科学科 Advent Calendar 2023 の25日目の記事です。
この記事は、内部生による「東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系」の院試体験記です。
私の所属する「教養学部 統合自然科学科」についてはアドカレ2日目の「統合自然科学科ってどんなとこ?」を、同じ広域科学専攻の「生命環境科学系」の院試体験記についてはアドカレ1日目の「院試の記録」を参考にしてください。
要約と注意点
内部生(教養学部 統合自然科学科に所属)が書いた、「東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系」の院試体験記です。
物理の人間なので、A・D2グループに関する記述はほとんどないです。
内部生から見たものとして、内部事情にもεほど踏み込んで書いてます。
その部分は公式からの情報ではないので注意してください。
正確な情報は、大学などの公式HPをご覧ください。
いろんなことを書いているので、目次を見て必要な部分を探してもらえるといいと思います。
自己紹介と前提知識
ざっくり前提知識などを書いておきます。読み飛ばしても構いません。
自己紹介
しろ(シロ・shiro)です。物理やってます。
現在は「東京大学 教養学部 統合自然科学科」の4年生です。
統合自然科学科の学科紹介:「統合自然科学科ってどんなとこ?」(統合自然科学科 Advent Calendar 2023 2日目の記事)
今年(2023年8月)の院試で「東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系」に合格しました。
他の大学院などは受けておらず、相関基礎の単願でした。
相関基礎とは
東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻の中にあるものです。
学士では、主に教養学部 統合自然科学科にあたります。
ざっくり言えば、「駒場にある」「主に理系の大学院(研究科・専攻)」になります。
相関基礎のグループ分け
相関基礎科学系は、次の5つのグループに分かれています。
A:科学史・科学哲学
B:素粒子理論
C:理論物理(素粒子除く)
D1:物理実験など(生物物理含む)
D2:化学
Aグループだけ異色に感じますが、これは学科構造の歴史などからこの形になっているのではないかと思います。また、同じ理系の中でも"純粋生物"の研究室などは、生命環境科学系などの相関基礎以外の専攻・系に含まれています。
相関基礎の特徴
いろんな分野が一つの場に集まっている。
一つの分野だけでなく、複数分野での授業もあるようです。
有名な先生も多い。
他の研究科と兼担してる人もいる。
相関基礎 院試基本(+発展)情報
参照すべきHPなど
その年の正式な情報は、以下のHPなどを参考にしてください。
総合文化研究科のHP:「修士課程・博士課程への出願」
総合文化研究科の院試の全体HP。
その年の入試の変更点などについても、ここに掲載されています。
総合文化研究科のHP:「(2024) 広域科学専攻修士課程入学試験」
※URLが「~~/2024/2024-003.html」で、毎年URLが変更されるので、その年のHPを参照してください。
広域科学専攻全体の院試のHP。
相関基礎科学系のHP:「入試案内」「入試説明会案内」「Q&A」
相関基礎の入試関連HP。
相関基礎科学系のHP:「過去問題」
執筆時点では、「基礎科目+専門科目13年分」と「総合科目7年分」が掲載されています。
大まかな日程
相関基礎の院試に関係する日程は、主に次のようになっています。(括弧内は2023年8月入試の日程。)受験する年度の日程に関しては、HPやその年の募集要項を必ず参照してください。
募集要項の公開:3月末(2023/3/27)
院試説明会:4,5月(の土曜日)に計2回ある。(2023/4/22、2023/5/20)
説明会部分はオンライン参加可能。
説明会後に研究室見学の時間がある。(アポ無しの飛び込みも可なはず。)
出願:6月末〜7月初頭の1週間(2023/6/30〜2023/7/6)
オンラインと郵送の両方を行う。郵送は消印有効。
この時点でTOEFL iBTの結果が必要。(後述)
受験料の振り込みは、6月中旬から可能。(2023/6/12〜2023/7/6)
研究計画書
作成要領の公開:7月初旬(2023/7/6)
提出(オンライン):7月下旬(2023/7/25〜2023/7/28)
筆記試験:8月中旬(2023/8/17)
筆記通過者の発表:8月下旬(2023/8/22)
面接:8月末の数日(2023/8/24〜2023/8/29)
合否発表:9月上旬(2023/9/4)
TOEFL(※2024年8月入試からTOEICも使用可)
コロナ前は筆記試験と同じ日にTOEFL ITPを受ける形でしたが、2023年8月入試ではiBTのみの使用で、ITPは使用していません。(コロナ禍のオンライン試験移行に伴う変更が今も残っている形です。対面試験になるのと一緒に戻してほしかったですね。また、今後ITPに戻す動きがあるという話を聞いたことがありますが、いつ実現するかは知りません。)
TOEFL iBTはITPとは違って事前に各地の会場やオンラインで受ける試験で、出願時に得点結果をオンライン提出+書類郵送の両方をする必要があるので、早めの準備が必要です。ただし、得点の公開よりに比べてETS(TOEFLの機関)からの「Official Score Report」(後述)の発送が遅くなりますが、後者は出願時点で東大に到着している必要はないようです。また、書類の郵送については、ETSから自宅に届く紙(時間がかかる)ではなく、ETSのHPの得点結果をコピーしたもので大丈夫です。
受験生が自分で書類を郵送するだけではなく、「Official Score Report」というものをETSから直接東大に送ってもらう必要があるので、TOEFLの申し込みの際にその申請をする必要があります。この時点で申請しておかないと、後で東大に送る際に追加費用が必要になるようです。また、「Official Score Reportをいつから送っていい」という情報は明記されていない気がしますが、「院試出願前にTOEFLを受験した時点で、Official Score Reportを東大に送っておく」ことはある程度可能ではないかと私は思います。(時期的に微妙だと思ったら、TOEFL申し込み前に事務に問い合わせましょう。)
TOEFLの得点は、高い人だと100点越え、低い人だと60点前後のようです。TOEFLの点数は合否判断に含まれているようですが、「この点数をどこまで重視するかは研究室に依る」という話を聞いたことがある気がします。 最後に、2023/7/26からiBTの試験時間や問題形式が変更になったらしいので、古い参考書などを使う際は注意してください。
追記:
2024年8月の入試から、相関基礎科学系でもTOEFLに加えてTOEICの使用が認められるようになりました。(今までも生命環境科学系・広域システム科学系においては認められていましたが、それに相関基礎も合流する形です。)
詳細は「令和7(2025)年度(2024 年度実施)広域科学専攻大学院入学試験について(変更点)」をご覧ください。
出願
出願には「受験料振り込み+オンライン記入+書類郵送」の3つが必要です。振り込みに関しては、出願期間より早い6月中旬から可能です。
上に書いたように出願の時点でTOEFLの得点が必要ですが、研究計画書はこの時点では提出しません。ただし、(2023年8月入試の時点では)出願の際に数百字で研究したい内容などを記入する部分があります。(出願時の記入欄が元からあるところに、コロナ禍になって新たに研究計画書が課された状態らしく、それらが対面試験に戻っても続いている状況です。TOEFLもそうだが、学生の負担をもう少し考慮してほしい。)
一緒に学歴なども書いて提出しますが、「詳しく書け」という指示だけで、「休学や浪人などによる半年〜1年程度の期間なら書かなくてもいい」という話があります。(これに限らない話ですが、迷った場合は事務に問い合わせましょう。)
住所を記入する部分がいくつかあり、9月の合格通知書や3月の入学手続き書類は、出願時に指定した場所へ送られます。相関基礎の合否自体はオンラインで発表されますが、「どの研究室に合格したか」の情報は郵送される合格通知書にしか掲載されていない(後述)ので、「帰省していて、下宿先に送られた通知書が確認できない」などがないよう注意が必要です。
研究室
研究室への出願は大まかに次のようになっています。
A〜D2から、メインのグループを1つ選ぶ。
そのグループの中から、最大5人の教員を選ぶ。(1人だけの志望も可能。)
サブでグループをもう1つ選べる。(選ばなくてもいい。)
そのグループの中から、最大2人の教員を選ぶ。(1人だけの志望も可能。おそらく、「メイン1人のみ+サブ2人」も認められているはず。)
たとえば、「Aグループ(佐藤、鈴木、高橋先生の3人)+Bグループ(田中先生1人)」や「Cグループ(伊藤先生1人のみ)」のような出願が可能です。その一方で、「A,B,Cグループから1人ずつの計3人を志望」などはできないです。
研究計画書
研究計画書の内容に関して、大きく次の指定があります。(「令和6(2024)年度 広域科学専攻 修士課程 入学試験 相関基礎科学系 研究計画書作成要領」より)
日本語の場合は1200〜1600字(英語の場合は600〜800words)。
志望する学問分野・研究課題に関して、これまでの自身の学習状況や検討状況、そして入学後の研究計画について記載する。
「研究計画書」の名の通り研究計画を書く部分はありますが、今までに研究をほとんどしていなくても、「研究室見学などで教員と話した内容を深めながら書く」などの方法をとればいいのではないかと思います。もちろん、既に研究している人は、その研究の計画を書けばいいと思います。
「複数の研究室・グループを志望する場合に、各研究室についてどこまで記入すればいいか」の情報は、特に明記されていないと思われます。要領では「志望する学問分野・研究課題に関して」書くように指示されているので、全ての志望研究室に対して、少なくともε程度の内容は書くのが無難ではないかと思います。なお、研究計画書の出来をどこまで重視するかは研究室に依るらしいという話を聞いたことがあります。 その年の研究計画書作成要領・wordファイルは全体の要項に比べると遅い公開ですが、内容に関わる部分は上記の2点程度なので、公開前から大まかに内容を考えておくのも良いかと思います。私は6月辺りから、書いたことについて面接で深く問われる可能性も考えながら、内容を少しずつ考えていました。
筆記試験
これまではコロナ禍でのオンライン試験でしたが、2023年8月の入試から駒場キャンパスでの対面筆記試験に変更になりました。(※筆記試験は対面の一方、面接はオンラインでした。)
【会場】
駒場キャンパスの900番講堂で試験が行われました。座席が26行22列ある、かなり大きな教室です(中高の体育館くらいの大きさ?)。その22列のうち、6列に行間隔を空けずに座るよう指示されていました。(座席順は受験番号で決まっている。)全員が通路に面する配置だったので、トイレに行く際はあまり困りません。ただし机の縦幅が狭いため、用紙を半分に折るか、前の人とその背もたれの間でぐしゃぐしゃにするかを選ぶことができますね。
試験時は(多分)助教の人が3、4人程度で試験監督をしており、手を上げるとトイレや水飲み可能です。
【試験問題】
9:30~13:00の3.5時間の中で、15問中3問を選択して解答します。15問の内訳は、「数学1問、物理学4問、化学4問、生物学・生物物理学2問、科学史・科学哲学4問」となっています。(「令和6(2024)年度広域科学専攻修士課程学生募集要項」より。)志望するグループに関係なく15問の中から3問を選択して解答するので、例えば物理系の受験者が化学や科学史の問題を解くことは制度上問題ないはずです。(教員からネタにされる気はしますが。)
物理の出題について、「物理学4問」としか書いていないので、どの分野がどう出るかは確定していないです。(とはいえ例年大体同じですが。)コロナ禍のオンライン試験を挟んで、ここ10回弱の数学・物理の内容は、
数学:物理数学の中で、様々な分野の小問集合。
コロナ前だと、線型代数・複素関数・フーリエ解析(+ラプラス解析)・常/偏微分方程式などが多く出題されていた。たまに変化球っぽいのも出る。
※統合自然科学科の「物理数学1,2」の担当教員が、2022年から白石直人先生に変わったからなのか、2023年8月入試では正定値行列などの分野や、今まであまりなかった形式の問題も出題された。
物理1:量子力学
時間依存する摂動論や散乱問題はあまり出ない。2準位系(パウリ行列など)や量子情報っぽい問題は出る。
物理2:熱・統計力学
前半が熱力学、後半が統計力学で、その2つがセットになった大問。相転移や量子統計も出る。
物理3:力学や電磁気学(あまり知らないです)
物理4:物性物理(あまり知らないです)
という形になっています。(私は数学・量子・熱統計を解くと決めていたので、物理3・4のことはあまり知らないです。ただし、これだと急に形式が変更になった時に対応できないので、あまりお勧めはできないです。)
【本番の問題用紙・解答用紙】
問題用紙は、A4の紙がホッチキス留めされており、見開きの右ページのみに片面印刷された形になっていました。表紙の注意点で書いてあるように、問題用紙の最後3枚は草稿用紙として破って使用していいです。(この3枚は、片面の上に「草稿用紙」と書いてあるだけで、95%くらい白紙の紙。)また、各問の左ページも空いているので計算を書き込むことができます。
解答用紙は、各大問両面1枚の使用で、大きさがB4程度の用紙だったと記憶しています。余白や記名欄以外の、解答として使える部分は用紙の7割くらいの大きさで、ノートのように6mmくらいの罫線が入っています。両面印刷になっており、表面が終われば裏面に書き進めます。
配られたものは、草稿用紙や問題訂正の紙も含めて全て回収されました。
面接(※2024年8月入試は対面の可能性もあり)
SNS等で面接(口述試験)の内容を話すと除籍されるっぽいので、オンライン上で公開されていて誰でも読めるようになっている募集要項:「令和6(2024)年度 広域科学専攻修士課程学生募集要項」を引用する形で紹介するに留めます。
まず、募集要項には「口述試験は、筆記試験及び書類審査合格者に対し行う。」とあります。そのため、面接を受けるためには、(0次の書類提出と)1次の筆記試験を通過する必要があります。2023年8月入試では、相関基礎全体で54人が面接に進んだようです。
また、2023年8月入試の要項では「口述試験はオンラインにより実施する」とある通り、今年の面接はオンラインで行われました。(今後は対面に変更になる可能性もあると思います。)
※私が確認した限りでは、SNS等に掲載するとまずいだけであって、研究室見学などの際に特定少数に対して対面で話すことまでは禁じていないように思えます。とはいえ、私がみた場所ではそう書いてあるだけであり、他の場所に明記されている可能性はあるので、なんとも言えないです。悪魔の証明ですね。
追記:
「令和7(2025)年度(2024 年度実施)広域科学専攻大学院入学試験について(変更点)」には、「口述試験は対面またはオンラインにより実施いたします。(詳細はおってホームページ に掲載いたします。)」とあるので、2024年8月入試では対面で実施される可能性もあります。2024年3月に公開予定の募集要項には確定情報が載っているのではないかと思うので、そこを参照するのがいいかと思います。
合否発表
オンラインで「合格者の受験番号一覧+個々人の合格したグループ」が発表されます。(「12345 D1」のような感じ。)2023年8月入試では48人が合格だったようです。
オンラインでの合否発表の時点では「志望した研究室のどこかに引っかかった」ことしか分からず、どの研究室に合格したかは当日発送の合格通知書を確認する必要があります。小さい封筒がポストに届くだけなので、こまめにポストを確認しておきましょう。
通知書の中には、合格した研究室の教員と9月末までに連絡を取るよう書かれています。(逆に言えば、理物などの他の大学院にも合格していてどこに進学するか迷っている場合には、9月中は待ってもらえるんじゃないかと思います。)
院試体験記
ここからが本題(?)の、私のN=1の体験記になります。執筆が12月になっていてかなり時間が経っているので、ここの内容は日記に残されていたものを纏めた(+足りない部分を補完した)形になっています。ご容赦ください。
勉強スケジュール
【〜2,3月】
TOEFLを2回受けた。(東大のGo Global Gatewayのシステムで無料で1回、その後に自腹で1回。)
この時点では院試勉強は英語以外ほとんどしておらず、院試内容に全く関係ない勉強をしていた。その代わりにTOEFLを4月以降に持ち越さなかったので、これ以降は負担が1つ減って結構気持ちが楽だった。
(※現在、Go Global GatewayのTOEFL無料システムは無くなっているらしいです。)
【4月】
筆記の勉強(教科書+演習+院試ゼミ)を始める。
期末試験を受けただけで全然理解していなかった、線型代数・量子力学・熱力学・統計力学などの勉強がメイン。特に量子力学・熱力学・統計力学は、4月(~GW)に教科書を頭から一通り全部やった。基本的には全て清水明先生の書いたもので勉強していた。(『熱力学の基礎 第2版 Ⅰ』など)
線型代数などの数学は、私の場合は「定理の主張はぼんやり覚えているが、実践では使えない」という部分が多かったので、「院試問題集をやって復習+周辺内容のインプット」がメインだった。問題集は『大学院入試問題〈数学〉』を使っていた。これは院試直前まで2,3周していて、他の問題集は基本的に使っていなかった気がする。
これらと並行して、学科で院試ゼミが行われ始めた。学科民の集まる学生控室で、相関基礎を受ける予定の同期数人で過去問を解き、解答を照らし合わせるなどしていた。初めの頃は週1開催で大問2題程度だった気がする。(過去問題は相関基礎HPから。)
【5,6月】
授業やレポートに追われ始める。これが7月初めまで続いた。平日は1,2時間勉強できるかどうかで、休日はバイトやレポート作成の合間に数時間勉強する程度の週が多かった。
4月に教科書を読んだので、この時期の勉強は「演習+ゼミ予習」がメインだった。数学の演習で使っていたものは、主に上記の『大学院入試問題〈数学〉』。
物理の演習では、初めは『演習大学院入試問題[物理学]I<第3版>』『演習大学院入試問題[物理学]II<第3版>』を買って使っていたが、微妙な点が多いと感じたため別のものを使うようになった。
具体的には、「解答解説が良くない部分がある」や「量子・統計などが『現代物理』として一つにまとめられていて使いにくい」などが挙げられる。前者については、例えば熱力学の一番最後の問題などが悪いのではないかと感じた。(後述するように、私は使っていなかったが『大学院入試問題〈物理学〉』などが良いのではないかと感じる。)
上の2冊の代わりに、量子力学では『演習現代の量子力学―J.J.サクライの問題解説』を、熱力学・統計力学では『大学演習 熱学・統計力学 [修訂版]』をメインに使っていた。(後から振り返ると、「この辺りに手をつけるのならもっと早くからやっておくと良かった」と感じる。全部を解く時間はなかった。)
【7月前半】
この頃から授業の負担が減ってきて、院試勉強の時間が増えてくる。(研究室でも院試休みをもらった。)この頃から、院試ゼミの1回あたりの大問数が増えていたはず。
また、演習については、7月頭で、
数学:サイエンス1周目A問題70%、B問題10%
量子力学:サクライ1周目50%
熱力学:久保演習1周目A問題70%、B問題20%、C問題10%
統計力学:久保演習1周目A問題30%、B問題10%、C問題0%
程度だった気がする(※院試で出るであろう範囲の中での割合)。
【7月後半〜8月】
授業が終わり、今期は期末試験の授業を取っていなかったのでかなりの時間を勉強に当てられた。
この頃に、「私は公式や定理をルーズリーフなどに纏めておいていつでも参照できるようにすると頭に入りやすい」ということに気づく(遅い)。最終的に、数学・物理で合わせて30ページくらい書いた。
演習については、7月後半開始時点→本番直前で、
数学:サイエンス1周目A問題100%、B問題60%
→1周目100%。2周目A問題40%、B問題70%
量子力学:サクライ1周目80%
→1周目100%。2周目50%
熱力学:久保演習1周目A問題90%、B問題50%、C問題30%
→1周目A100%、B80%、C50%。2周目A30%、B50%、C30%
統計力学:久保演習1周目A問題70%、B問題30%、C問題10%
→1周目A100%、B50%、C30%。2周目A50%、B50%、C10%
程度だったと思う(※院試で出るであろう範囲の中での割合)。また、熱統計の演習中に理解が足りていないと感じた部分は、『演習しよう熱・統計力学』の該当部分をやっていた。
この頃から生活リズムを朝型に変えていった。おそらく22時就寝、6時起床くらいにしていったと思う。
【筆記試験後〜面接前】
何すれば良いかわからなかったので、とりあえず筆記の解き直し(with学科民)や、研究計画書に書いた内容でよく理解できていない部分をいくつか説明できるようにしていた。
筆記試験本番
【試験前】
いつも通り早めに起きて朝ごはんを食べ、8時頃に駒場に向かった。試験会場を覗いたらこの時点で既に数人いたが、私はそれを横目に学科の学生控室で時間を潰していた。(同じような学科民が数人いた。)
控室でおやつを食べながら最終チェックをし、心を落ち着かせ、9時前くらいに試験会場に向かう。会場に入ると知ってる人が多かった。(朝が早いうえに12時までかかるので、試験直前に何か食べるものがあると良いと思います。)
【試験中】
最初はかなり緊張して、30分くらい簡単な問題で書いては消してを繰り返す。(この時間が無かったらもう1問くらい解けた気がする。)1時間くらいして、やっとギアが入ってきた。それ以降は最後まで解き続けたが、最初で転けたことに引っ張られたことが悔やまれた。
【各大問の感想】
数学:過去問と方向性がそこそこ違っていると感じた。来年以降も出題される?
物理1:分量が結構多いと感じた。(コヒーレント状態の性質や導出は理解していたので)あまり難しいとは思わなかったが、時間のなさと解答用紙の枯渇で苦しんだ。
物理2:よく見る系統の問題だと思いながら、途中の計算を間違えて後半うまくいかなかった。
面接
上に書いた以外のことは書けないので、何も追加情報は無いです。
使っていた教科書・演習書たち(+α)
使っていたもの(や、私は使わなかったが良さそうだと思ったもの)をいくつかあげます。いろいろ書いていますが、メイン演習物をまとめておくと、
数学:大学院入試問題〈数学〉
量子力学:サクライ演習、過去問
熱・統計力学:久保演習、演習しよう熱統計
です。
数学
1. 海老原円、太田雅人『大学院入試問題〈数学〉』(サイエンス社)
メインの演習書として最後まで使っていた。かなり良かったと思う。
2. 藤岡敦『手を動かしてまなぶ 続・線形代数』(裳華房)
ジョルダン標準形などを参考にした。
3. 近藤慶一『物理数学講義』(共立出版)
複素解析の、特に留数の具体的な計算などを確認するのに使った。
4. 物理数学1,2(白石先生)の講義ノート(2022-2023年版のリンク)
線形代数の延長で、正定値行列などを確認した。
5. 過去に受けた授業の授業資料(線型代数・フーリエ解析・常微分方程式など)
特に線型代数の資料は度々お世話になった。
6. ネット上の記事
「wikipedia」、「高校数学の美しい物語」、「数学の景色」、「理数アラカルト」などを参考にしていた(気がする)。
量子力学
1. J.J.Sakurai『現代の量子力学(上)』(吉岡書店)(リンクは第3版)
特にパウリ行列などを含むスピンの話や、電磁場中の運動を確認した。(電磁気の単位系がSIではないので一部苦労した。)
2. 上田正仁『現代量子物理学』(培風館)
コヒーレント状態やスクイーズド状態などの部分を読んだ気がする。
3. 丸山耕司、飯高敏晃『演習 現代の量子力学』(吉岡書店)
サクライの演習問題の解説書。演習は主にこれを使っていた。院試に出るところを基本的にやっていたので、スピンの部分の演習がメインだった気がする。
4. 小林奈央樹、森山修『大学院入試問題〈物理学〉』(サイエンス社)
(※私は使ってない。)
上で挙げた『大学院入試問題〈数学〉』の物理版。友人が使っていて、かなり良さそうだと感じた。(私はその頃には既にサクライ演習と久保演習を始めていたので、手を広げすぎて中途半端に終わるのは良くないと思って使っていない。)
5. 過去に受けた授業の授業資料(量子力学2など)
特に位置表示と運動量表示の話や調和振動子、角運動量の合成、摂動論などについて確認した。ここにあげたものの中で一番お世話になったかもしれない。
6. ネット上の記事
履歴を見た感じでは、富谷昭夫「Campbell-Baker-Hausdorff 公式の導出」や、加藤雄介「量子力学II 講義プリント」、関口 雄一郎「量子力学講義ノート」、上田正仁「量子力学II 講義ノート」などを参考にしていたらしい。
熱力学・統計力学
1. 清水明『熱力学の基礎 第2版 I』(東京大学出版会)
基本的な内容はほぼ全てこれで勉強した。これの構成が私の好みに合ったので、田崎熱力学などはほとんど読んでいない。
また、後半の『熱力学の基礎 第2版 II』に載っていた、安定性や相転移の部分も読んでいた。
2. 長岡洋介『統計力学』(岩波書店)
量子統計は、主にこれと田崎統計(後述)を参考にしていた気がする。
3. 田崎晴明『統計力学II』(培風館)
主に量子統計の部分を参考にした。
4. 久保亮五 編『大学演習 熱学・統計力学』(裳華房)
演習はこれがメイン。4,5月頃に初めて解いた時は全然わからなかったが、段々解法が身についてくると、そこそこの問題はあまり苦しまずに解けるようになっていた(と思う)。院試に出そうな部分を集中的にやったため、私は全部は解いていない。
5. 北孝文『演習しよう熱・統計力学』(サイエンス社)
久保演習をやった際にあまり理解できなかった、量子統計関連の部分を集中的にやった。
6. 過去に受けた授業の授業資料
統計力学は、主に清水先生の統計物理学(前期課程)の資料で理解した。(出版はいつになるんでしょうね。)
最後に
「授業で学んだのだから、そんなに院試勉強に時間をかけるべきではない。(そんな時間があるなら研究するべきだ。)」のような言葉も聞きますが、院試勉強をすべきかどうかは当然個人に依るので、1~3月中に一度過去問を解いてみてどのくらいできるかを試してみるのがいいと思います。
また、私個人の意見としては、「基礎の内容についてしっかり勉強できる機会はこれが最後」ではないかと思うので、納得できるまで勉強できると良いと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。