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「会計年度任用職員制度」から3年  行政サービスの劣化と格差拡大を生む「差別雇用」

(2023年4月25日号)

3月19日、「公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)」は結成2周年集会を開催した。保育士、図書館司書、博物館学芸員、社会教育指導員、婦人相談員…等々、正規の公務員と変わらぬ仕事をし、高い専門性を持つ彼女たちだが、雇用契約期間は1年。「会計年度任用職員制度」で更新は2回までと定められており、継続して働きたい場合には3年後に新たな公募に手を上げるしかない。


制度開始から3年目を迎えるにあたり、はむねっとは実態調査や総務省交渉等を行ない、全国1789自治体に対して会計年度任用職員(以下、会計年度職員)の3年目募集を行なわないよう要望書を出してきた。その結果、総務省は「必ずしも公募は必須ではない」と各自治体に通知を出し、厚労省も「会計年度ごとの任用が離職者を生み出している。*大量離職届の提出が必要」と通知した。熟練した専門職を失うと現場が回らないことから公募をしない自治体もあったようだが、この3月で雇止めとなった労働者の数はまだ明らかになっていない(3月22日総務省回答)。

法的根拠は何もない

そもそも、3年目募集に関する法律はなく、国(総務省)が自治体に向けて出している会計年度任用職員制度の『事務処理マニュアル第2版』に記載されているに過ぎない。本来、基幹的業務の担い手は、正規職員にして、雇用の不安のない状態で専門業務を行なうことが行政サービスの拡充につながる。しかし、現状はこうした専門職で多くの会計年度職員が、いつ雇止めになるかわからないという不安を感じながら働いている。

子育てや生活支援、社会教育にかかわる重要な行政サービスを低賃金で不安定雇用の会計年度職員に担わせている。正規公務員の女性採用率約4割に対し、会計年度職員の8割近くが女性という状況は、あからさまな差別的雇用ではないか。公務労働だというだけで、一般の労働法制にある「5年で無期転換」の対象にもならない。

行革・公務員削減の先に

行政改革の名の下に人員削減、民間委託、非正規化が進められてきた。その結果、日本の国民1000人当たりの公務員数は19・5人に減少し、仏(36・9人)・英(31・6人)・独(35人)と比べ極端に少ない。逆に非正規公務員は、2005年の45万人から2020年までの15年間で1・5倍の69万人にまで急増。本来、正規の担うべき仕事を会計年度職員に肩代わりさせているのだ。

はむねっとのアンケートによると、その職種は一般事務、保育士、女性関連施設職員、各種相談員、司書などいわゆる女性の多い職種が目立つ(図左上)。何よりも3人に1人は主たる家計維持者で、週30時間以上勤務しているにもかかわらず、約4割は年収200万円未満の低賃金で働いている(図右上)。まさに「官製ワーキングキングプア」である。

公務員をぎりぎりまで減らし、民営化や指定管理者制度、会計年度職員等、低賃金の不安定雇用に切り替えたことにより浮いた予算は一体どこに使われたのか。介護・保育・生活支援・雇用促進等、行政サービス拡充に使われたのだろうか。行革の結果、進められたスリム化や効率化は、そのまま住民の自助努力、自己責任、有料化などに転換されただけではないのか。

正当な評価と待遇を

ケアや相談の労働は、マンパワーが支えている。子どもや女性、高齢者、生活困窮者、失業者を支え、ケアし、励まし、安心につなげる仕事は、経験も知識も人間力も求められる。短期間で解雇されたら、経験が蓄積されず、結果的にはサービスの受け手である住民にとってもマイナスでしかない。

格差と貧困を税の再分配機能によって緩和する任務がある国や地方自治体が、このような差別雇用によって格差を拡大させていることを許してはいけない。誰かを踏みつけにしない、人間らしい働き方・ケア労働・行政サービスこそ、私たちが求める「新たな公共」ではないだろうか。


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