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ノッてる会社を承継した落下傘社長が、最初の1年でやらなかったコトやったコト
はじめまして、森田渉と申します。
2024年3月より、企業活動の中で不要になったあらゆる「モノ」の撤去・回収・処分・買取を生業とする、ケイコーポレーションという会社の代表を務めています。
ここで言う『あらゆる「モノ」』、割と本気で『あらゆる「モノ」』でして、工場の生産ラインとか、ホテルの客室の家具寝具とか、中古パソコン/スマートフォンとか、太陽光パネルとか、ほぼゴミにしか見えないスクラップの山とか、用途やサイズの大小問わず幅広く取り扱っています。
ケイコーポレーションは私が創業した会社ではなく、社内で長く勤め栄達したわけでもなく、事業承継の文脈で外部からやって来て、創業者である藤田浩志さんから経営のバトンを託されました。
昨今は中小企業の事業承継も大分活発化しており、私のように外部から招聘された人材が経営を引き継ぐケースも増えていますが、「絶賛成長中の企業を承継した」という点に、私の経験の珍しさがあるのではないかと感じています。
ケイコーポレーションは、私が代表に就任する前の3年間で、売上高が約20億円→約30億円→約40億円と成長してきており、24年5月に締まった前期は約53億円、25年4月末に締まる進行期でも60億円を超える見通しになっています。
日本経済が長い期間0~1%程度の成長しか出来てないことを考えると、大企業でもスタートアップでもない中小企業としては中々の成長幅だと捉えています。
因みにケイコーポレーションの創業は2008年で、当初は関西でスクラップのトレーディングをしていたそうですが、最初の10年間は上手くいかないことも多く、藤田さん自らトラックを朝も夜もなく乗り回していたそうです。
そこからの今日に至るまでの物語はとてもエキサイティングで、いつか社史としてまとめて公開したいなと思っています。
早速話が逸れました。
一般的に、中小企業を承継した新たな経営者は、事業の「変革」を企図し、リードします。
大多数の中小企業の売上は横ばいか微減であり、どうにかして創出する付加価値を増やしていかないと、株主にも社員にも自身にも配分を増やすことが出来ないので、これはごく自然な話です。
そのため、新たな経営者は着任したDay1から、「変革」を実現するために精力的に動き回ることになります。
一方、ケイコーポレーションはそもそも成長の最中にあり、更に言うとその成長は、創業者個人が引っ張るフェーズから脱し、各事業の部長陣が引っ張るフェーズに入ってきていました。
そうなると、新たな経営者によるトップダウンでの事業の「変革」は、そもそも馴染まないアプローチになります。
それでは、このケイコーポレーションの経営は特に何もしなくても良いイージーなものなのか、というと、そういうわけでもありません。(と言っておかないと、私が無用の長物ということになってしまいます笑)
それなりに考えを巡らし、コミュニケーションやタイミングを気にしながら、一つ一つ手を打っていく必要があります。
私が代表に就任してからの約1年間で、どんな考えのもと、なにをやってきたのか、あるいはやらなかったのか、つらつらと語っていきます。
前述の通り、成長中の企業の承継という少々特殊なシチュエーションでしたので、一般的な経営振り返りエントリと比べて、とりわけ「なにを、どういう考えでやらなかったのか」についても厚めに言及していきたいと思います。
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まず、私は貴方たちの敵じゃないよ、と伝える
自分が働いている会社に、突然見たことも話したこともない人が社長としてやってくるシチュエーション。
どう考えても怖いし、不安になります。
これが、例えば前任者が暴君で、業績も上手く伸びていないような状況なら、恐怖や不安よりも期待が勝るようなことにもあるでしょうが、ことケイコーポレーションにおいては、前述の通り業績は順調、前任者の藤田さんは気さくでビジョナリーで人望がある方でした。
そんな中での社長交代は、殆どの人はバッドニュースと捉えたでしょう。
内藤さんという私が代表に就任する2か月前にケイコーポレーションに入社した社員がいるのですが、彼からは就任直後に「今回の件はかなり衝撃的でした。率直に言って相当困惑しています。」という旨のメールを頂きました。「そりゃそうだよなぁ」と思って返信メールを打っていたのを思いだします。
これまでの方針や方向性が急遽変更になるのではないか、何か不合理なことが押し付けられるのではないか、自身の頑張りが正当に評価されないのではないか…と社員が疑心暗鬼になって目の前の仕事に打ち込めず、せっかくの会社の勢いを殺してしまうような状況に陥るは何としても避けたいと思っていました。
まず、全社員に宛てた就任挨拶のメールや、会社が順調にいっている中で、仕事のやり方を大きく変える必要性を感じていない、実際に変えるつもりはない旨を明言しました。
その上で、1か月ほどの期間をかけて、全社員と1時間程度の面談の機会を設定し、自分が何者か、どういう経緯でここに座っているのか、これからどういうスタンスで経営を行っていこうと考えているのか、を、なるべく和やかな空気をつくりつつ、伝えていきました。
もちろんこのようなアクションはやらないよりはやったほうが良いに決まっているのですが、とはいえ知らない人の言葉は信用する根拠がなく、一度話したからハイ大丈夫、とはなりません。
最終的には時間の経過の中で、確かに大きく変わらなかったね、悪いことは起こらなかったね、と得心してもらうしかないわけですが、その間の混乱を最小限にするためにも、意識してニコニコして、気さくにふるまって、「私は貴方たちの敵じゃないですよ、危害を与えることはありませんよ」と、言語非言語問わず伝えるよう心掛けました。
創業者・前代表の藤田さんにも大いに協力してもらいました。
引継ぎ期間中は社員から見るとどうしても二頭体制に見え、社内コミュニケーションが混乱しがちです。藤田さんとは事前に、こういう振る舞いはしないで欲しい、逆にこういう発信を積極的にしてほしい、という擦り合わせはしっかりと行いました。
例えば、
・私に対するアドバイスや苦言を思いついた際は、私と1対1の場で伝え、他の社員が見ている場では伝えない
・社員に対して変わらず積極的にコミュニケーションを取ってもらいたいが、「指示」は出さない/「報告」を求めない
・社員から何か相談された時、仕事の具体的なやり方の相談であれば引き続きアドバイス頂き、会社の方針や課題など、将来に関わる相談については回答せず私に話しに行くよう仕向ける
といったことです。
藤田さんは創業オーナーという属性を持つ人としては非常に細やかな配慮が出来る人で、引継ぎ期間中に私の立場から「こういう振る舞いをされると困るんだよな…」ということは一切なされませんでした。
加えて、「森田さんは俺が見込んで今後の経営を託せると思った人や、四の五の言わずに森田さんについていけ」と何度も社員に伝えてくださっているのを壁越しに聞いていました。
これには本当に助けられたと思っています。
一方で、自分から社員に積極的に話しかけに行く、ということは意識してあまりしないようにしていました。
理由を端的に述べると、私が特定の誰かと仲良くしている(依怙贔屓している)と見られないようにするためです。
私も人間なので、話しやすい人と話しにくい人はいて、「社員と沢山話そう」と意識すると、どうしても話しやすい人とより頻繁に、より長く話すようになってしまいます。そこから生じる嫉妬や疑念は、ネガティブな噂話や陰口に発展し、最終的に組織を壊しかねない悪影響に成り得ることを、過去の経験から知っていました。
そのため、私から働きかけて社員と話したい時は、なるべくミーティングあるいは面談という会社の公式の場として設定し、そこで話すようにしていました。
ただ、今振り返ってみると、この点は杞憂だった気もしています。
ケイコーポレーションの社員は総じて大人で、良い意味で私の一挙手一投足を気にしている感じは受けないので、今後はもう少しカジュアルな会話を増やしていくこともアリかも、と考えています。
結果的には、少なくとも表面上は、大きな混乱なく最初の1年を終えられそうです。社員の内心は正直わかりませんが笑。
なんだかんだ、しっかりと売上利益が伸びたことが大きかったですね。成長は七難隠すとよく言いますが、これは本当に真理だと思います。
因みに、先述の就任直後にメールを下さった内藤さんは、何回かのコミュニケーションを経て改めて前向きに気持ちをセットしてくれて(ですよね!?)、4月に初めて迎え入れた新卒社員の教育係をこなしつつ、ゴリゴリと新規客の開拓をするなど大いに活躍してくれました。ありがたい限りです。
なお、このようなシチュエーションでやりがちなアンチパターンとしては「自身の優秀さを証明しにいく」というのがあると思っています。
社員に「この人は優秀か否か」を気にする視点が無いとは言いませんが、それ以上に圧倒的に気にしているのは「この人は自分に害を及ぼさないか」であって、この点と比較すれば新しく来た人の優秀性なんて些末は話です。
そこを履き違え、さも優秀に見えるよう頑張って振舞っていると、「こいつズレた奴だな」と急速に冷めた目で見られるようになります。
これも過去の経験からの学びですが、こちらは遵守して正解だったなと今でも思っています。
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やらなかったこと徒然
基本的には、既存の社員に安心して任せられそうなこと、とりたてて急ぐ必要がないこと、波風が立ちそうなことは、多少の誘惑に駆られることがあってもぐっとこらえ、「見」の姿勢を取るようにしました。
【営業は既存幹部にお任せ】
ケイコーポレーションは、営業に強みを持つ会社です。
営業といっても、モノを売る営業というよりかは、モノを仕入れる営業ですね。
企業がいらなくなったモノや、これまではゴミとしてお金をかけて処分していたモノに対し、我々だったらこのモノを資源として活かせます、売ってください!取り外し・搬出・運搬といった諸々の作業もお任せください!と提案します。
この提案に専門性と、売り主の手間を省けるような様々な配慮があるからこそ、お客様に支持され、売上を伸ばしています。
また、このモノならこういう用途があるから、あの会社に幾らくらいで売れるだろう、という目利きがあるから、利益を生み出すことが出来るわけです。
社員は、ここ数年で自分たちが出してきた実績、その実績をもたらした仕事のやり方にプライドを持っています。
ここでいうプライドは、実の伴った良いプライドです。そのプライドを否定する意義は全くない。
もちろん、完璧なオペレーションなんてものはあり得ないので、第三者視点で至らない点を指摘しようとすれば色々と出来るでしょう。
が、業界の経験知識もない、社内で何か特筆すべき実績を出したわけでもない、外からやって来ていきなり自分の上司の椅子に座った人間に、「ここはこう変えた方が良い」なんて言われて、「なるほど!やってみよう!」ってなるかって話です。
なるわけがない。
そんなこんなで、こと営業に関しては、部長陣のリーダーシップを最大限尊重し、私はこの1年間はほぼノータッチを貫くことにしました。
何せ、この数年の順調な成長を牽引してきた人たちなので、アイデアもあれば実行力もあり、がっつり権限移譲してしまっても会社運営上問題なかろう、という判断です。
直接的に関わったところでいうと、お客様へのご挨拶や接待の際、社員から求められたら同行するくらいですね。
もちろん、投資が伴うような意思決定に関しては現場から上伸されてくるわけですが、それらも基本的に前向きに受け止めて、それらが実現出来るように一緒に検討し、なるべく背中を押すような意思決定をしてきました。
営業効率化に向けたCRM/SFAの導入、アライアンス先の大手産廃事業者との関係性を深めるための神戸営業所の開設、関西圏でより多くの「モノ」の受け入れ・加工するための西日本作業センターの開設などが、この1年の営業に関連する主な意思決定でしょうか。
それらについても、意思決定までは行うものの、その後の具体的なプランの策定や推進は、各部の部長陣にほぼ委任し、進捗を月一くらいで共有してもらう程度の関与に留めました。
スピード感や徹底度という側面では、私が深く関わった方が高まったところもあろうとは思いますが、部長陣への信頼を示すことも含め、それ以上のメリットがある判断だったと捉えています。
【組織構造や人事制度の変更は最小限に留める】
私は、組織構造をどのように設計するか、人事制度をどのような内容・運用にするかついては、会社経営の肝であると考えています。
誰が、どのような責任・役割・権限を持つのかを明確化し、それらに基づいて行われたアクションがどのような成果・結果をもたらしたのかをなるべく客観的・正確に把握し、それらをそれぞれの人にフィードバックし、処遇に反映させる。
このメカニズムが総じて上手く機能していれば、分業の効率性は高まり、個々の社員も自らの力をしっかりと発揮することが出来、会社・事業は順調に運営されていくことになります。
とりわけ、ケイコーポレーションは「企業の不要になったモノを撤去・回収・処分・買取」する、という、今後も明確にニーズ自体は存在し続け、かつ、そのニーズの所在や多寡も、社会的・技術的トレンドに左右されづらいドメインで事業をしていますので、切れ味のある戦略やアイデアの重要性は相対的に低く、日々の愚直なオペレーションの積み重ねこそが競争優位の源泉であり、そこに組織と人事制度はダイレクトに効いてくるものだと捉えています。
が、この組織と人事制度は、社員からすれば「日々の働き方」そのものですので、ここを拙速に触るのは前述の「会社が順調にいっている中で、仕事のやり方を大きく変えるつもりはないよ」というメッセージにバッティングします。
そもそも、就任直後は組織や人事制度の側面で、どのような課題や改善余地があるか解像度高く把握出来ていたわけでもなかったので、組織については構造上明らかに違和感があった(おそらく過去のしがらみが色々あった)部門を既存部門に統合する、人事制度についても労務法制上対応する必要があるような微修正を行う、程度の変更に留めました。
もっとも、そろそろ経営を担って1年にもなってくると、組織/人事的な課題や改善余地に対する解像度がだいぶ上がってきますので、本年5月からスタートする来期に向けては、部長陣とよく相談しながら、組織設計や人事制度についてはある程度の修正を入れていきたいとは考えています。
【外部からの幹部人材の採用は見送り】
落下傘として経営に入る場合、自分のやりたい施策をスピーディーかつ精度高く実行し、現場への落とし込みを徹底するために、着任とともに気心知れた幹部数人を連れていく、もしくは着任早々幹部人材を外部から採用する、というのは、わりと一般的なアプローチです。
とりわけ、ミドル/バックオフィスの強化を企図する場合、ある程度どの企業でもやることは近しく、求めるスキルや経験を有する人材を見つけやすいので、企画部長や管理部長などは補強が行われやすいポジションです。
かく言う私も、代表に着任した直後は、ミドル/バックオフィス全般を所管できるような幹部人材の採用を模索していました。が、結論から言うと、幹部人材の採用は見送ることにしました。
理由はいくつかあるのですが、ざっくり以下のような感じです。
・変革を急がない前提で言うと、自身で手を動かす、自身である程度初歩から勉強する、というアプローチで求める速度を出せそうだった
・既存の社員からすると、会社のこれまでの成長に貢献していない上司がこれ以上増えるのは、何だかんだ心理的反発があるのではないかと危惧した
・大川さんという営業担当だった社員が、従来よりミドルオフィスの強化に関心があり、話してみた印象で登用したら十分活躍してくれそうだった
・自分とバックグラウンドが近く意思が通じやすい人を傍に置きたいというのは、不安から来る単なる甘えじゃないかと見つめなおした
1年経って改めて振り返ってみると、この判断は正解だったなと感じています。
新設した企画部のヘッドになってもらった大川さんは、以下に書いていくような新たな取り組みを立ち上げる際には都度巻き込み、ボコスコ雑にタスクを投げましたが、楽しそうについてきてくれて、既存の社員に新しいやり方や考えを落とし込むにあたっての良い橋渡しの機能を果たしてくれています。
もっとも、今後のことを考えると、企画や管理のタスクはより増えていくことが見込まれ、遅かれ早かれヒューマンリソース、というかリーダーシップが不足する見込みなので、対象が幹部層かはさておき、先々の補強は改めて検討せねばな、と考えています。
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さて、ここまでは敢えてやらなかったことを主に書いてきましたが、これからはやったことについてざっくり書いていきます。
やったこと徒然
上段で、ケイコーポレーションは営業に強みのある会社、と書きましたが、一方で営業を除いたミドル/バックオフィスは、売上高50億円規模の企業としては不足が目立ち、営業の社員からも改善して欲しいという要望が色々と出るような状況だったので、順々に手を付けていくことにしました。
【管理会計&経営会議の整備】
従来、各事業部が営業管理の目的で毎月の売上/粗利を集計していましたが、これが別途管理部で集計した事業部別の売上/粗利の数字と乖離が生じており、結局どれが会社として公式の業績数字なのかがふわふわしていました。
その乖離の原因をざっくり突き止めた上で、二者間のすり合わせを細かく行うよりかは、会社全体で一元的に仕入/売上/在庫を管理できる新しい簡易システムを作ってしまった方が早いなと判断し、「仕入売上管理表」なるシステムをGoogle Spreadsheetで組み上げ、そこから抽出した数字を管理部が集計し出来上がった数字を、会社の唯一の業績数字として定義しました。
また、会社として追及すべき数字として重視されていたのは売上高で、粗利も見てはいる、営業利益については把握出来ていない、という状況でした。
そこで、最も重視すべきは営業利益だよ!と意思統一したうえで、毎月初5営業日以内に、事業部別の先月の営業利益の速報値を出し、毎月10日に先月の振り返りと今月の戦い方を共有・議論する経営会議を開催するようにしました。
以前は数字の集計の制約から業績振り返りの会議体は月の後半に行われていたとのことでしたが、月初5営業日以内に実績数値が集まらない項目については数字の仮置きの仕方を一つ一つ定めて、無理やりながら速報値を出せるようにして、毎月10日の経営会議実施のスケジュールを実現しました。
個人的には数字の集計と会議の実施タイミングを早ければ早いほど良いという思想なのですが、現状の体制ではこれが現場に過剰な負担を強いない限界のようです。
なお、従来の業績振り返りの場では、売上予算未達の場合は厳しい叱責が飛ぶような空気感だったと聞いており、営業の強い会社とはそういうものだよな~と思いつつも、私は予算未達に対しても強く指摘するようなことはしていません。
ビジネスにはサイクルがあり良い時期も悪い時期もありますし、経営会議に出席している幹部陣が叱責されることで行動が改善される余地がある、つまりはサボっているとも見ていませんし、着任して日が浅く営業にもノータッチの私に指摘されて納得感がないでしょ、とも思っているからです。
それよりかは、予算を到達出来なかった原因と、その対策をどう考え、どう進めているのかに興味関心があり、それらをよく問うてきました。
組織としてのオペレーションの精度が、先月よりも今月、今月よりも来月洗練されていっていると認識出来れば、仮に目先の業績が付いてきておらずとも、個人的には満足します。
事業は短距離走ではなく長距離走なので。
とはいえ、どんな理不尽があろうと予算を達成するんだという姿勢、そのために1円でも積み上げるんだという執念は、会社にとって貴重な財産であることは間違いなく、私のある種の緩さでその財産が失われていくことに危機感を持っている幹部もいるように思います。
現状は事業本部長の船山さんがその厳しさの部分を意識的にサポートしてくれていて、一定の引き締め効果はあると見ていますが、船山さん自身がトップセールスの一人で業績に大きな影響を与えうる立ち位置にいるため、自己監査のような形にもなってしまい、構造上のハマりの悪さがあります。
後々はもう少し各人の役割分担やスタンスを調整し、実質的な議論を背骨に、厳しさもある体制を構築していければと考えています。
【マーケティング機能の立ち上げ】
ケイコーポレーションの強みは営業にある、と先述しましたが、一方でマーケティング的なアプローチはほぼ取り入れられていない、というのが私の就任前の状況でした。
私たちが営業をしに行った時に、丁度お客様の中に廃棄したいモノがあるかどうかは、時の運に左右されます。
というか、ビタッとハマるケースは殆どないと言って良いでしょう。
それでも、定期的にドアノックし続けることで、いつかは丁度モノがあるタイミングに当たることもあるし、お客様に印象を植え付けることで、いざ廃棄したいモノが発生したタイミングで私たちを想起して頂き、お客様からご連絡を頂けるようになる、というのが、営業の勝ち筋になります。
これはこれで一つの戦い方ですし、実際のこの方法で順調に成長をして来ているわけですが、ではこの方法は効率的ですか?と問われると些か疑問符が付きます。
効率性という観点からは、元々私たちと接点のない事業者が、いざモノを廃棄したいと考えた時に、自発的に私たちを見つけ出してくれて連絡をくれる、という形が理想的でしょう。
そのためには、潜在的なお客様がまずは我々の存在にたどり着ける、たどり着いた先で我々の事をしっかりと知ることが出来る、更には、この会社に頼んだら良いことありそうだな、と期待して頂ける必要があります。そのために必要なのが、いわゆるマーケティング的なアプローチです。
このアプローチが上手くいけば、営業担当からすれば一定程度受注確度が高い客先を座っていても紹介してもらえるようになるわけで、反発は起こりにくい取り組みです。
本当にそんなに上手くいくの?という反応はありましたが、それはやってみないとわからない。
不要になったモノを処分したことのない企業は存在しないでしょうから、基本的には過去の処分のやり方は社内で伝わっているでしょうし、付き合っている事業者があるはずです。
ただ、昨今はあらゆるコストが上昇しており、以前依頼した事業者に今回も見積もりをお願いしたところビックリするような価格を提示され、もう少し安くならないものか、と新たな事業者を探索する、といった行動はあり得るでしょう。
また、社会的な環境意識の高まりから、とりわけ大手企業は環境負荷低減に向けた具体的な手立てを講じる必要が出てきています。
金融庁が上場企業のサステナビリティ情報の開示を推進しているインパクトは大きく、この開示に使えるネタを集めたいが、従来取引のある事業者では十分な対応が出来ない、それならば新しい事業者を探さねば、といった流れもあり得るでしょう。
これらは未だ仮説の域を出ませんが、チャレンジしてみる価値はあると考えています。
最初に着手したのはコーポレートサイトのリニューアルです。昨今はまず調べものと言ったらネット経由になりますからね。
私たちの仕事はその全体像がパッと理解しづらく、従来のコーポレートサイトでは仮にお客様が何らかの経路でたどり着いたとしても、私たちに相談をして良いものか判断を付けるのが難しかったですし、そもそも相談を受け付けるための間口もしっかりとは取っていませんでした。
Webマーケティングの定石に沿ったWebサイトの設計というものがあるので、まずはその定石にあてはまるWebサイトを、株式会社baigieさんにご支援いただき、半年ほどの時間をかけて作り込んでいきました。
無事に1月末にコーポレートサイトをリリースすることが出来たので、今後はこのサイトに見込み客を流し込む施策を色々試していこうとしているフェーズです。
近隣でWebマーケティングに本腰を入れて取り組んでいる事業者は少なく、SEOで高い順位を取る、あるいはリスティング広告で特定のワードを比較的安価に落札することも可能ではないかと見ています。
現在はデジタルマーケティング支援を手掛ける株式会社SOZOMさんに支援をお願いし、あれやこれやと戦術を詰めていっています。
直ぐに成果が出るかは不透明ですが、数年後には営業起点の売上7割、マーケティング起点の売上3割くらいまでには持っていきたいと考えています。
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【人材採用の強化】
ケイコーポレーションのこれまでの人材採用は、ほぼ社員の知り合いの紹介、今っぽく言うところのリファラル採用によって行われてきました。
そのため、社内にはそもそも採用担当がいませんでした。入社手続きが出来る労務担当がいればそれで十分だったんですね。
因みに紹介のインセンティブなどは存在せず、それでも知り合いを自分の会社に誘えるというのはなかなか素晴らしいことで、それだけで50人近い組織に成長したことは誇るべきことですが、今後の更なる発展を考えると、リファラル採用だけに頼っているわけにはいかないな、と感じました。
リファラル採用はコストが低く、カルチャーにフィットした人に来てもらいやすいという大きなメリットがありますが、短期間で多くの人を集めるのは難しいですし、既存の社員と似たような経歴、ひいては似たようなスキルセットの人に縁が偏るというデメリットもあります。
例えば上述のマーケティング機能を新設したい、といった時に、ライトスタッフを社員の知り合いというプールの中だけから見つけるのは難しくなります。
よって、オープンな人材マーケットに打って出て、優秀な求職者の興味を引き、求人に応募してもらい、入社の決意をしてもらう、ということにチャレンジすることはマストだと考えました。
それに、特に我々のような、特定の資産を持たず人が動いて仕事をしている会社の場合、極論良い人材を獲得し続けられれば、会社は勝手に成長していくものとも考えています。
ここで実態が伴っていない(業界の先行きが暗い、自社の業績が悪い、社内の雰囲気が悪い、等々)と採用も苦難の道なのですが、代表の自分が言うのもなんですが実態はイケてると思っているので、あとはどう効果的にアピールするかの勝負だな、と感じています。
では何から着手したかというと、これまた採用サイトのリニューアルです。コーポレートサイトと同時に、株式会社baigieさんにご支援いただきました。
良い採用コンテンツを作るのに事業の理解は不可欠で、その意味でコーポレートサイト構築と並行で採用サイト構築を行ったのは筋の良い判断でした。
こちらも1月末に新サイトをリリース出来たので、幹部陣とも今後の人材計画を議論し採用したい人材要件を固めつつ、各採用媒体への出稿や、スカウトサイトの活用などを進めていきたいと思っています。
なお、隠す必要もないので明記しますが、私がnoteで発信を始めたのも主たる目的は人材採用です。
採用サイトは用意したものの、そこで伝えられる情報にも限りがありますし、やはり我々のような中小企業への転職を検討する上で、トップがどういう人なのか、何を考えているのかを知らないと怖いですよね。
今回の記事は殆ど会社紹介みたいになってしまいましたが、今後は私個人の話も折に触れてしていければと考えています。
【機能拡張を目指したM&Aの実行】
ここまで書いてきたミドル/バックオフィスの強化という流れからは逸れますが、自分のこれまでの経験を活かしやすく、かつ既存社員の中にはそういう発想もない、ということで、M&Aについても模索しました。
ケイコーポレーションの営業は、お客様とのコミュニケーションの中で様々な要望や制約条件を引き出しながら、お客様が不要になった「モノ」の撤去・回収・処分・買取再販のプランを組み立てていきます。そして、そのプランを実行するために工事・作業業者やリユース・リサイクル業者、運送業者、倉庫業者…などなど、様々な機能を持った協力業者を巻き込み、自身も現場に臨場しながら指揮します。
営業というよりは、コーディネーターの仕事に近いかもしれません。
経営目線では、現状や将来の社会的ニーズやリスクなどを睨みながら、どの機能をどこまで内製化し、どこからは外部の協力会社に頼るか、という線引きの判断していくことになります。
部長陣とディスカッションの中で、工場やプラント等の内装解体の現場にて重量物の搬出を指揮・実行できる重量鳶の機能は、近い将来是非社内に取り込みたい、という考えに至り、これまで何度も協働し信頼がおける重量鳶の会社に、ケイコーポレーションへの合流を打診する、という動きを取りました。
折しもその打診先の会社は、昨今の人件費や資材費の高騰等を受け経営状況が厳しくなってきている状況であったこともあり、様々な調整の末、最終的にケイコーポレーションに合流することとなりました。(厳密には、会社法上のM&Aには当てはまらない方法による合流になりましたが。)
合流後は、とりわけ工場やプラント等の重量機械の撤去の案件において、これまで出来なかった緻密な提案や現場での動きが可能になり、新規の受注も複数決まるなど、早くも良いインパクトが出始めています。
M&Aは巡り合わせの側面も強く、今後数年の中で実現出来れば御の字、くらいの意識でいたので、こんなにとんとん拍子で事が進むとは思ってもいませんでした。
正直なところビギナーズラック的な側面が否めないわけですが、今後もM&Aは会社にとって重要な経営的手段の一つになると考えており、「この機能を取り込んだらこんな展開が出来るのでは?」というアイデアは既に複数持っており、今後も磨き込んでいけるので、幅広くアンテナを張って、会社を次のステージに進める機会を模索していきたいと考えています。
これからに向けて
この1年間を振り返ると、ざっとこのくらいでしょうか。
体感としてはあっという間な一方、そこまでアクセルを踏み込んだわけではないので、まだまだやれること、やらなきゃいけないことはたくさんあるなー、という感覚です。
私は、自身がケイコーポレーションの代表として負っているミッションは、「巡航速度の成長を実現し続けること」と捉えています。(会社としてのケイコーポレーションのミッションは、これとは別に存在します。このあたりはまた別の機会に。)
1年で売上を倍にするとか、何年後までに企業価値を何倍にするとか、そういうギッチギチにストレッチした成長は、多くの歪みをもたらすと考えています。
綺麗ごとに聞こえるかもしれませんが、私は社員も、お客様も、株主も、自分自身も、皆が良いバランスで成長の果実を受け取れるような経営を行いたいですし、その方針を私の雇い主である株主も了承してくれている、というか、是非ともそうしてくれ、と背中を押してもらっています。
一方で、自身の力をもって会社を成長させられなくなったら、その時は経営者として身を退くタイミングだとも考えています。
私はこれまでの経験から、売上50億円の企業を売上100億円に成長させるためのノウハウもビジョンも有していると自認していますが、そこから更に300億円、1,000億円と成長させていくノウハウやビジョンは、正直なところ今現在は持ち合わせていません。
これから時間をかけてしっかり準備をしたいと思いますし、一方でその準備がうまく出来なかったら、既に準備が出来ている人にバトンタッチすることが、唯一の責任の果たし方になるでしょう。
とはいえ、まずは今後数年かけて、売上高100億円規模までしっかり成長させることがやるべきことになる(※1)ので、そのチャレンジを、道のりを、noteでの発信も含めて多くの人に知ってもらい、応援してもらい、その中から一緒の船に乗って頑張りたいです!という人に出会えたら最高だなと思っています。
長くなってきたので今日はここまで!
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(※1)社内では追うべき指標は営業利益!と言い続けて、こういう場で売上高を持ち出すのは言行不一致っぽいのですが、営業利益ベースで話を展開するのは読み手目線で相当イメージが湧きづらいと思うので、売上高ベースで話をしています。社内では目標とする売上高と営業利益は必ずセットで発信するようにしています。
ここまでこの長文を読んでくださった皆さま、本当にありがとうございます。
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更に、本noteやXのフォローまでしてもらえるととても喜びます。
ケイコーポレーションでは現在、営業職、オペレーション職、企画管理職の採用を積極的に行っています。
興味のある方は以下サイトアクセスし、是非エントリください!
ケイコーポレーションのサービス自体に興味を持たれた方は、コーポレートサイトもご覧ください。不要な「モノ」が発生しない企業というのは少数なはずで、どのような企業様にも何かしら良いご提案が出来るかと思います。