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ファンの存在するラグビー界へ NTTのチーム再編に伴って起こることを期待したい

昨晩、衝撃的なニュースがラグビー界に飛び込んできました。

来季からNTTグループが2チームを再編し、強化を浦安(シャイニングアークス)に集中させるというもの。このような報道が出るということは、大筋で事実なのでしょう。共同通信社ですしね。
大阪(レッドハリケーンズ)は下部で活動を継続とのことですが、詳細はまだ「検討中」です。

リーグワン開始に伴い、ラグビー界は再編が進んでいます。開幕前にコカ・コーラが離脱を表明。シーズンに入ってからサニックスが今季限りと判明しました。
リーグ再編に伴ってチームの統廃合がなされるのは珍しい話ではありません。ラグビーに限って言えば、かつてはトップリーグ発足からしばらくセコム、IBM、ワールドなど長くファンに親しまれていたチームが強化を停止しています。

サッカーはもっとドラスティックで、Jリーグ開始(1992年)に合わせて浦和市はそれまで縁のなかった三菱自動車工業サッカー部を東京から誘致しました。また1998年には当時の横浜フリューゲルスの経営が行き詰まり、同じく横浜に拠点を置く横浜マリノスに吸収されるという自体が起こっています。
当時を振り返る記事で、もっとも丁寧に説明されているのが↓です。

「Jリーグ設立時の理念では、日本サッカーリーグ時代と違い、企業に頼らず、地域に根ざしたクラブを育てようということでした。しかしふたを開けてみると大企業に頼る形はまったく変わっていなかった。川淵チェアマンは『10年間で自立』と言っていましたから、98年にまだそこまでいっていなかった部分もあると思いますが。ともかく、このフリューゲルスの問題以後、大企業に頼りきるという形では無理だということが一挙に出てきたと思います。実際のところ、佐藤工業が難しい、全日空もだめだということで、放っておけば、吸収合併どころか『チーム解散』という情勢でした」

Jリーグの初代事務局長佐々木一樹さん

https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201209190003-spnavi

とは言え、NTTグループの再編は上記のような「経済的事情」ではありません。共同通信社の記事にあった「親会社と子会社を母体とするチームの対戦が、競技の公平性を損なうとの見方にも配慮したという。」というのも積極的理由ではないでしょう。

再編に際して新会社を設立するとのことで、ワイルドナイツが目指すような世界的クラブになっていく絵が描ければラグビー界的にはプラス。ビッグクラブが東京から近い浦安にできることのメリットは大きいです。
「関西にチームがなくなる」と言われるでしょうが、Jリーグだって発足時は首都圏偏重でしたし、強豪は今も関東です。野球も2000年代までは、パ・リーグを中心に一部地域のものでした。ボリュームゾーンである東京の人口をいかに取り込んでいくかが、新しいスポーツリーグにとっては王道なのでしょう。
今後は「関東での市場争いに遅れを取ったチームが、経営破綻する前に地方に活路を見出す」という流れが予想されます。

と、ここまで大きな目線で話を進めてきましたが、今回の報道の中に本来チームの活動を足元で支えているはずのファンの姿はありません。
レッドハリケーンズは、関西に複数あったNTTグループのチームを統合して2000年代前半から本格的な強化を始めました。1からラグビー人口の多い大阪のチームとして、コツコツと活動を続けてきたのです。
同時にワールドカップなどの影響で新しくラグビーの魅力に気づいた大阪人を、老舗のライナーズとは違う切り口でしっかり取り込みました。
20年以上の活動の結果、今や少なくないファンから愛され、レッドハリケーンズがこころの依り何処だという人々をたくさん育んできました。
「大阪にも残す」ということですが、それはリーグワンの方向性である事業性やプロ化とは全く違うものになるでしょう。

ラグビーだけでなく、多くの実業団スポーツの関係者に話を聞くと「大企業が支えるのがスポーツにとって一番幸せ」という論調がよくでてきます。
しかしその「一番幸せ」なのはたぶん、選手とその家族と、そしてOBなど競技に関わっている人にとってでしょう。

レッドハリケーンズがなくなったらライナーズを見ればいいじゃん
とか、そういう話じゃない。

レッドハリケーンズが大好きで、ヨドコウ桜スタジアムに未来を感じた人たちがしっかりいるんだ。理屈じゃなく、ただ好きなんだ。そして好きにさせたのはお前なんだよ。

1998年12月25日、横浜フリューゲスがマリノスに吸収されることを由としなかったサポーターが、株式会社横浜フリエスポーツクラブを設立。自分たちが応援できるチームを自分たちで作ってしまいます。それが今の横浜FCです。

そんな熱気を、ラグビーにも期待したいと思います。

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前田寛文@週刊ひがしおおさかの編集長
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