中央競馬G1の売上は本当にウマ娘でうまぴょいしたのか?

ウマ娘の勢い

2月末にゲームリリースされて勢いがとどまらないウマ娘。

アップルやAndroidの売上上位を占め、4月8日には500万DLを突破しています。

それに関連して以下のようなツイートがバズっていました。

JRA、売上アップすごいですね。

確かにこれだけ見ると、ウマ娘のおかげでJRAの売上があがっているようにも見えます。

実際にはどのくらい影響があるのか、正しい値が出るわけがありませんが、どのくらいの温度化になりそうか少し考えてみましょう。

市場規模比較 JRAの売上は年間約3兆円

2020年のJRAの売上は2兆9834億5587万2000円で約3兆円、9年連続でのプラスを記録しています。

御存知の通り、コロナの影響により無観客開催、ウインズの閉鎖となりました。

しかしJRAは昔からチケットレスの投票に力を入れており、1974年から電話投票を開始、パソコン普及前はFCやSFCを使っての投票、現在は即PAD等で自宅で馬券を購入できるようになり、馬券売上の影響は限定的なものと思われます。

市場規模比較 ゲーム業界の売上は全体で約1兆7330億円(ただし2019年)

2020年のデータがまだ見つからなかったので2019年のもので申し訳ないのですが、いわゆるコンシューマーのハード、ソフトの売上が4368億円、PC、スマートフォンを使用したオンラインプラットフォームの売上が1兆2962億円となっています。10年間で9000億円程増えている状態ですね。ちなみにJRAの2019年の売上は2兆8817億1700円でした。

今後もゲーム業界の売上は伸びると思われますが、ゲーム業界全体と比較してもまだまだJRAの市場規模には届いていないのが現状です。


これだけ見ると大きな影響を与えるのは少し難しそうな数値です。

ウマ娘の3月の売上は約150億円、JRAは……

ウマ娘の3月の売上は約150億円と推測されています。

対してJRAの3月の売上は重賞だけで727億4788万6500円でした。JRAの2020年3月の売上は666億8217万7800円なので60億6570万8700円、約109%増となっています。

仮にこの60億6570万8700円を全部ウマ娘の影響だとします。一般的にいわゆるソーシャルゲームユーザーの課金率(1円でも課金した人の割合)は2%~5%と言われています。ウマ娘のユーザー数500万人だとすると(現在はもっと増えていると思われますが)課金経験者は2万5000人。平均すると一人60000円課金すると150億円になり、さらにそこへ24262円馬券を買うと60億6570万8700円馬券が売れます。

60000円課金できる人は、さらに24262円課金するぐらいできそうではありますね。


ただし、これはあくまですべて平均化した値で、前述したとおり課金率は1円でも課金した人が対象になります。(現実で1円課金はないと思いますがあくまで定義として)


JRAの即PAD等のUIはいわゆるソーシャルゲームと比較すると相対的にいいとは言えず馬券を買うハードルが高いのが現状です。ウマ娘から競馬を知った課金したユーザーが馬券を買うというのは限定的に思えます。


仮に60億円が全部ウマ娘効果だとしても……

60億円、もちろん一般的にもJRA的にも大きな金額ではありますが、それでもだいたいG1の半分、重賞レース1~2回分の売上になります。JRAは近年は重賞を割と増やしている側面もあり、JRA全体の売上3兆円から見ると決して大きな数値ではありません。(あくまで全体を俯瞰して、ですが)


またいわゆるソーシャルゲームの売上はリリース数カ月間がピークと言われています。1ヶ月後の継続率は15%以下、高いと言われているポケモンGOで3ヶ月で30%と言われており、ユーザーは減少していきます。どうしても大きな機能追加に時間がかかる以上、これから飽きたユーザーが離脱していくことが考えられ、おそらく5月、6月を境目に一定の値をキープしながらも徐々に売上、ユーザー数が減少していくことでしょう。

今後のウマ娘の売上とJRAの売上を比較していけば中央競馬G1の売上は本当にウマ娘でうまぴょいしたのか、温度感ぐらいはわかるのではないかと思います。

影響力は間違いなくある、あるが……

とはいえ間違いなく今年を代表するアプリになるであろうウマ娘、影響力がないわけありません。がJRAへの影響力は市場規模から行っても限定的としか言えません。そもそもゲーム業界全体よりも規模が大きいのですから。ウマ娘から初めて競馬に触れた方は知らなくても当然ですが、競馬というコンテンツは決して斜陽産業ではなく、さらにこの規模でも毎年売上アップしているコンテンツです。思っている以上に大きな業界だと思います。


私は馬を取り扱ったゲームにも関わらず馬が居ないという世界観がどうしても受け付けず、DLからプレイできていませんが、それでもこれだけ色々な人に受け入れられたということはいいゲームだと思っています。しかしそういったゲームができたのもモデルとなった馬や、その馬主。騎手や厩務員、調教師、JRAの職員、各種メディア、また既存のファンが競馬というコンテンツを盛り上げてきたからこそ出来たゲームだとも思っています。

登場するウマ娘を愛でている方々にはまったく問題ありません。

好きなものが世間に受け入れられ、気持ちが大きくなる方々が出てくるのも歴史が繰り返してきたことで理解はするのですが、正直特定の馬主の方への誹謗中傷や、JRAの引退馬への取り組みを調べもしないで一方的な発言をされてる方を見るたびに閉口しています。

そういった方々も実際の数値等を知る、ないしは知る努力をしていただいたり、せめて関係者の方にはもう少し経緯を持って発言していただけると色々うまくいくのではないかと愚考します。


追記:

冷静に考えたら過去の売上データと比較したらわかるのではと思ったので調べてみます。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?