親友の話
わたしには命をかけれるほど大切な親友がいる.
彼女と出会ったのは小学一年生の頃.同じクラスになったことがきっかけで仲良くなった.毎日一緒に過ごしていたせいかもともと似ていたのか,クラスメイトや親からそっくりだと言われたこともあった.
彼女と学校が同じだったのは中学まで.高校は違ったが同じバスを利用していたし,家も近所だったので会う機会はいくらでもあった.小中学生の時ほど遊ぶ時間はなかったものの,わたしたちの仲は薄れることがなかった.
大学生になってわたしは地元に残ったが,彼女は飛行機がなければなかなか会いに行けない遠くの大学へ行った.わたしが遊びに行ったり,彼女が帰省するタイミングで会うことはあったが年に1,2回程度しか会えなかった.それでもやはりわたしたちの仲が切れることはなかった.
環境が変わればそれまで毎日一緒に過ごしていたはずの友人とも疎遠になってしまうのは当たり前かと思う.でも彼女とは疎遠になることはなかった.どんなに環境が変わっても物理的距離が開いても一番の友人であるのはずっと彼女だ.
大学を卒業し彼女は地元に戻ってきた.これまでとは違って月に1回は会ってごはんを食べに行くことができることが嬉しかった.ほんの1時間でも会うだけでお互いに元気をもらえる関係なので,あまりにも健全な時間に帰ってくるわたしに「もう帰ってきたの?◯◯ちゃんとごはんじゃなかったの?」と親に聞かれることもしばしばあった.
そんな親友がまた遠くへ行くと言うのだ.
彼女は大学時代から付き合っている彼氏がいる.その彼と結婚を前提に準備をするために,また地元を離れてしまうと聞いた.彼女からよくその彼の話を聞くのだが,わたしと誕生日が近いこと,わたしと話してるみたいに落ち着ける人だと言うことを教えてくれた.
また遠くへ行ってしまうのは正直さみしく思う.でもなぜか嬉しい気持ちが大きいのだ.
中学時代にこんなことがあった.
全校朝会で校長先生がわたしたちの学年の各クラス一人ずつを指名し,「この人が困っていたら必ず力になってやれるという友人を一人挙げてください」と言ったのだ.
指名された子たちは同じクラスの仲のいい友達を挙げる中,親友は他クラスであったわたしの名を挙げたのだ.
友人に名前を挙げられた人たちは全校生徒の前でスピーチをさせられるという内容で,親友に選んでもらったわたしはステージに立ちスピーチをした.
きっと結婚式のスピーチもわたしを指名してくれるのだろうと思っている.
そしたらわたしは何を話すだろう?尊敬できる親友の良いところをつらつら述べるだろうか.思い出を語るだろうか.何にせよ感情的になって泣いてしまって伝えたいことの半分も言葉にできないだろうな.そんなことをふと考える.
彼女が幸せになることはもう分かっている.わたしと似ている彼ならば,彼女を悲しませるようなことは絶対にしないだろう.
物理的距離が心の距離と比例しないこと,それはもう証明済みだ.遠くで幸せに暮らす彼女にまた会いに行けばいいだけなのだ.