胡蝶の夢
司馬遼太郎さん。幕末の、医師の話だった。漢方から蘭学に、蘭学から英、独に、、の過渡期に日本の近代医学の礎を築いた日本人とオランダ人をはじめとした西洋人たち。
漢方は医学というより哲学だった。
西洋医学はより実践的だったけど、抗菌剤などの有効な薬もない時代に、結局どちらも人を治すことはできず、せいぜい余命何日かをあてるくらいが関の山だった。だから医師の地位も低かった。でも低かったからこそ、江戸時代という身分社会でも、底辺から医師を目指すこともできた。
ほぼ原始の状態から情熱をもって医学校を立ち上げたオランダ人のポンペ先生は、英独の台頭もあってほんの3年で帰国してしまうけど、医学の中で一番大事なことを若い医師たちの心に刻んでいく。
患者を一人の人間として診ること。
今でもヒポクラテスの誓いとして全世界の医師が学ぶことだが、殿様に仕える医師は殿様以外は見ないという風習の中で、それは画期的であり時代的に危険な思想でもあった。ポンペ先生は、私利私欲なく、ただただ日本人のために力を尽くしてくださった。それに応えて先生への敬愛を生涯持ち続ける松本良順先生たち。
感動した!(月並みな感想ですんません)
ポンペ先生が医学には絶対に人体解剖が必要だとして皆が奔走し、初めての人体解剖に到達した時のエピソードは、定期的に病理解剖に携わってる私には特別な重みがあった。今は当時と比べると格段にその機会は得られやすいけれども、やはり同じくらいの有り難みを感じて施行したいと思った。
適塾の緒方洪庵先生が、病理学を一番大切にしておられたということもすごく嬉しかった!!!
小説としては伊之助が一番おもしろい人物で今でいう本物のアスペルガーなんやろなー。言語の才能がほんま化け物。羨ましい反面生きづらさもあったのだなとは思います。
今まで幕末のことはあんまり興味なかったけど(夜明け前、で読んだくらい)、近藤勇とか勝海舟とかのことがよくわかった。激動の時代にはドラマがたくさんあるんですね。