デュエリスト VS 全身脱毛
ターボと申します。
主に遊戯王OCG、マスターデュエル、ワンピースカードをプレイしています。
※今回は日記のようなものですので、カードゲーム知らない人でも多分大丈夫です。
終わりの始まり
あーあ。
遊戯王の世界大会も終わったし、
ワンピースカードの大会は全部抽選落ちるし、
気合い入れて目指すような大型大会とかも直近では特に予定無いし、
なんか最近、暇だな
……脱毛でもやってみるか!
これが事の発端。
終わりの始まり。
悲劇のトリガーを引くのはいつだって退屈。
何の前触れも無く、というわけではない。
前々から、
毛って必要無くね
全身の毛が無くなったらどんだけ快適なんだろうとは思っていた。
ちなみに、自己紹介が雑だったから書いてなかったけど俺、ターボは男です。
メンズの諸君はわかってくれると思うが、ヒゲ剃るのってクッソ面倒。
剃っても剃っても毎日無限に生え続けるヒゲ。
伸びるのが早い人だと、朝剃っても昼頃には目立ってくるらしい。
ワキ毛も放置してたら見た目は悪いし、汗が溜まって臭くなる。
すね毛や腕毛も、あってモサモサするより無くてスベスベの方が良いに決まってる。
そしてVIOも鬱陶しい。
急にパンツで巻き込み事故を起こして「ゔっ!」ってなる事あるし、
ウンチした後とか衛生面的に必要無さ過ぎる。
特に下痢した時なんかは最低最悪の存在だよね。拭く時に手にベチャって付いた時は全部引きちぎってやろうと思ったもんよ。
定期的に自己処理するにしても、かなり面倒だし時間もかかる。
人生の時間は有限、善は急げだ。
するかしないか、迷ってる時間すら置き去りにしてやる!
この軽いノリと勢いが消えないうちにクリニックに予約を入れよう。
という事で、少し調べて近場で評価がまあまあ高い医療脱毛クリニックを選択。
ネットで初回カウンセリングの予約はすんなり完了。
まあ実際に脱毛すると決まった場合は、安くない金も必要だし、とりあえずは話を聞くだけでも上々だ。
そんな感じで予約したクリニックへと向かったのだった。
汝等ここに入るもの、一切の望みを捨てよ
カウンセリングへとやってきたターボくん。
消毒されたスリッパへと履き替え、手をアルコール消毒。
院内はかなりの清潔感で、ゆったりと落ち着いた雰囲気だった。
もっと美容院のような、軽快なBGMがかかったチャラい感じをイメージしていたのだが、医療脱毛を名乗っているだけあって病院に近い感じだ。
※チャラくない美容院もある
受付には、顔で採用されたんかってくらい美人のナースが2人。
見た目で勝手にキャラに例えると、
クールな真顔でテキパキと書類を整理するFGOの
『ナイチンゲール』
こちらを見てにこやかな笑顔で挨拶をくれる
『ウィッチクラフト・エーデル』
美人に騙されて壺とか買わないようにしなくてはいけない。
近々、コナミから壺コレクションが発送されてくるし(税込17600円)
これ以上壺いらねぇんだ。
カウンセリング担当の人の準備が出来るまで待合スペースで待機との事。
待合スペースは空いており、俺の他には1人だけ。『カオス・ネクロマンサー』みたいな髪型の男がいた。
空いているとはいえ、奥の施術室のほうには脱毛施術を受けている人が複数いるようで、スタッフ達が慌ただしく出入りしていた。
歩き方が上品な
『静寂のサイコウィッチ』似ナース。
小走りで部屋を行ったり来たりしている
『驚楽園の案内人〈Comica〉』似ナース。
そして『カオス・ネクロマンサー』も、たった今から脱毛の施術を受けるようで、
『六花精スノードロップ』似のナースに案内され、奥の部屋へと連れて行かれた。
男性の施術には女性スタッフが担当する事もある、という事は調べて知ってはいたが、
『カオス・ネクロマンサー』の奴、『六花精スノードロップ』に脱毛施術して貰えるってコト!?え、いいな羨まし!
俺の担当は一体誰になるのだろうか。
脱毛をしてもらうのに施術者のビジュアルなんか関係無いのはそうなんだけど、施術の腕が同じくらいだというのであれば、どうせなら美人にやってもらいたいとは思う。
というか、今のところこのクリニック内に存在を確認している女性スタッフは何故か全員クソ美人なんやけども。
だからまあ、うん。
女なら誰でもいいや。
見境の無いクズ男みたいになっちゃった。
いや、別に男でも良いんやけどさぁ、クリニックの評価に、男性スタッフは施術が雑で痛いし剃り残しが〜みたいなレビューがあったから、そこだけ気になる感じ。
ここまで美人がたくさんいるのなら、カウンセリング担当はどんな人だろう、と少しだけ期待する。
というかカウンセリングって何やるんだろうか。
病院みたいに色々と問診されたりとか?
陰キャらしく待合スペースの隅でスマホポチポチ(FGO)で遊んでいると、カウンセリングの準備が出来たようで、担当の人がやってきた。
「本日カウンセリングを担当させていただく、ナイチンゲールと申します。よろしくお願い致します」
受付にいたクールな美人ナース。
SSR星5サーヴァント、キタァ!
彼女、理性的に見えるけど実はバーサーカーなんだよね。話、通じるかな。
ナイチンゲールさんに案内され、カウンセリング室へと向かった。
カウンセリング室は、大きめの個室トイレくらいの狭さで、そこにナイチンゲールさんと2人きりというのはなかなかに緊張する。
ガチャリと部屋の出入り扉も閉められた。
鍵が閉まったみたいな音がしたような気がしたんだけど、気のせいだろうか。
✖︎✖︎しないと出られない部屋かな。
小さめのテーブルにナイチンゲールさんと向かい合って座る。
すると、ナイチンゲールさんが手に持っていた紙袋の中をゴソゴソと探り、取り出した電卓をテーブルの上に置いた。
……明らかにデュエルする流れだ。
テーブルに電卓を用意する事なんて、それ以外にあるわけがないんだから。
まさか、これは闇のゲーム!
ナイチンゲールさんを倒さなければ、この部屋から出られないという事か。
いいだろう、
遊戯王日本選手権エリア代表戦で決勝負けという惜し過ぎる成績を残したこの俺の『永続神碑』で、身も心も粉々に破壊してやる。
それとも、ワンピースカードチャンピオンシップ2023エリア大会を7-1でオポ落ちという惜し過ぎる成績を残した『青ナミ』でズタズタに引き裂いてやろうか。
いや、わかってる。
お金の計算とかするためですよね。
くだらん妄想はやめて、ナイチンゲールさんのカウンセリング兼、脱毛に関する説明に集中致します。
脱毛は大きく分けて、【光脱毛】と【医療脱毛】の2種類が存在する。
・【光脱毛】痛くない、効果が無い
・【医療脱毛】痛い、効果が強い
光脱毛や医療脱毛の中にも、それぞれ脱毛の方式だとか、機械の種類だとか、色々な色々が色々あるため詳しくは省略。
このnoteを読んだ皆様が脱毛に興味を持つのかどうかは知らんけど、もし行く気があるのなら医療脱毛をオススメしておく。
光脱毛は、ヒゲ、脇、VIO等の深い場所から生えている太い毛には光が届かずあまり効果が無いらしい。
まあ全く効果が無いわけではないが、脱毛終了から数ヶ月後にはまた毛が復活して生えてきてしまうようだ。
パッと見だと光脱毛のほうが安く見えるが、通う回数的な問題で最終的な金額も同じくらいになるらしいから、せっかく脱毛するんだったら効果が永続したほうが良いでしょ。
でも光脱毛にもメリットはあるし、後悔すると良くないから、やっぱり俺のオススメとか無視して自分でよく調べて、納得のいく店に行ってくれ。
ナイチンゲールさんの脱毛に関する説明解説はネットで色々と調べて得た知識と大差無かったため、
美人は声まで綺麗なんだなぁ〜
と、ぼんやりしながら聞き流していた。
そして、契約プランの話になり、
「ターボ様は全身脱毛をご希望されておりましたが、どのプランに致しましょうか?」
と、当然のように今ここで契約する事を前提にしたような質問が飛んできた。
待て待て、
俺はクリニックの下見に来ただけであって、契約するかどうかを今すぐに決めるつもりじゃなかったぞ。
クリニックの公式サイトには契約プランの詳細な金額が載って無かったし、そういうのを確認するためにとりあえず来ただけだ。
ナイチンゲールさんの指が示すオススメ契約プランには、『黒魔女ディアベルスター』の25thシークレットレアが数十枚は余裕で買えるような金額が書かれている。
まあ、その場で契約する可能性も無くはないと考えて、一括で払えるだけの札束を一応持ってきてはいるが……。
やはりここは冷静に、この話は一旦持ち帰らせてもらおう。
それをナイチンゲールさんに伝えると、
「では次回以降の契約、という事になりますと、初回という事ではなくなってしまいますので、こちらの初回様限定の割引が無くなってしまいますが、よろしいでしょうか?」
ふざけるなよゴミ店舗がッ!!!!!
客に考える時間を与えない、というのはあらゆる取引において有効なため、良いやり方ではあると思うが、露骨過ぎるだろ。
単純に心象が悪い。
ある程度バレないように上手くやれ。
マニュアル通りにこんな事を言わされてるナイチンゲールさんが可哀想だわ。
初回カウンセリングの予約が簡単な事も、
公式サイトにバカ高い契約プランを載せていない事も、
女性スタッフが全員美人なのも、
この狭い部屋に美人と2人きりにさせたのも、
全てが罠だ!
残念だったな。
チョロい連中は全員ここで騙される所だが、俺は違うぞ。
こういう展開はクリニックに入る前から想定し、最初から警戒していたんだよ。
そして、俺の返事を待っているナイチンゲールさんに言ってやったんだ。
「あ、じゃあこのプランで契約します」
俺がもっと渋るのでは、と予想していただろうナイチンゲールさんは拍子抜けしたように一瞬目を丸くしたが、すぐに元のクールな表情に戻り
「では、こことここにサインをお願い致します」
と、テキパキ契約を進めてくれた。
……まあ、待ってくれ。
ここまで読んだ皆は俺の事を、美人に騙されて壺を買うチョロい奴だと思っているだろう。
違う、言い訳させてくれ。
脱毛をしてみる事に関しては自分の中で既に99%決定していた事ではあるし、事前にネットでもかなり調べて、場所や予想金額、評価的にもクリニックはここで9割9分決定していたんだ。
その場で即契約するかどうかはまだ決めてなかったし、契約の場面で金額のデカさにビビって一旦持ち帰ろうとはしてしまったが、全然想定の範囲内。
なのに、今回帰ったら次回は割引ナシとか言われたら、そらもう即決するだろうよ。
そうだ、これは正しい選択なんだ(早口オタク)
初手、先行、対面不明
何も考えずにイエローガジェットを召喚するのと、先の事を色々考えた上でイエローガジェットを召喚するのでは、
正解不正解は別として全然違うよ、
って、遊戯王強い友達もよく言ってた。
それと同じよ。
ナイチンゲールさんに札束をブン投げ、次回の施術予約をして、この日は帰宅した。
先ず勝ちて而る後に戦いを求めよ
脱毛施術の予約を終え、後はもう予約した日にクリニックへ突撃すればいいだけかと思いきや、そうでもなかった。
脱毛当日までに、自分で全身の剃毛をしなければいけないのだ。
目安は全ての毛、1ミリ以下。
背中やうなじの部分は自己処理が難しいためクリニックでスタッフに剃毛してもらえるみたいだが、その他の部分は毛の剃り残しがあった場合、1部位につき1000円〜2000円くらい取られた上でスタッフに剃毛してもらう、という事になるらしい。
当日、変ないちゃもんを付けられて余計な金をぶん取られないためにも、文句の付けようが無いくらい徹底的に剃毛し、毛を1本たりとも残さないツルッツルの宇宙人スタイルで登場してやろう。
雑貨屋とアマゾンを駆使してT字カミソリ、I字カミソリ、I字電動シェーバーを揃えて準備万端。
早めに剃った場合は施術日までに伸びてきたら意味が無いため、前日に一気に全身剃る事に決めた。
さて前日夜、
風呂で体全体をボディソープの泡で包み、足、腕、体と剃り残しの無いよう丁寧に剃っていく。
かなり時間が掛かったが、見た感じは完璧だ。
でも脇とか剃りすぎてめっちゃヒリヒリするんだけど大丈夫かな。
最後にVIO。
人生で1回たりとも剃った事が無い部分だが、電動シェーバーで余裕余裕!
と、思っていたのが激甘太郎。
毛量多いし、1本1本の毛は太いし硬いし、全然上手く剃れねぇ。
しかもOラインは自分で見えないから感覚でやるしかなくて、振動する金属の刃がお尻の皮膚に当たった瞬間、
「痛ッデエェェ!!!」
と叫んでしまった。
皮膚が切り裂かれて血液ドバドバの救急車展開かと思ったが、別になんともなくて電動シェーバーの安全性に感動。
それと同時に1人でお尻に刃物突っ込んでオーバーなリアクションをする変態誕生。
ちなみにVIOとは、Vライン、Iライン、Oラインをまとめて言った部分であり、
Vライン→へそ下から『ギャラクシー・ワーム』の上あたり
Iライン→『ギャラクシー・ワーム』の棒部分、付け根、『ラーの翼神竜-球体形』あたり
Oライン→『時空の落とし穴』の周り部分
脱毛は毛の部分に熱を与えて周りの細胞を破壊するとかいう恐ろしい事をするため、
剃毛が不十分だとめちゃめちゃ痛くて表面の皮膚が火傷する可能性もあるらしい。
火傷をすると物理攻撃力が半減し、今後のポケモンバトルにおいてかなりの影響が出るため絶対に避けたいところだ。
VIOは毛が太いくせに皮膚が薄い部分だから、特に気を付けなければいけない。
剃り残しが無いように、1本ずつと言ってもいいくらい丁寧に丁寧に毛を剃っていく。
何かに集中すると時が経つのは速いもので、気が付けば軽く2時間は経っていた。
2時間も裸で『ギャラクシー・ワーム』弄くり回して何やってんだ。
でもまあ、その甲斐もあってかなり綺麗に剃毛出来たのではなかろうか。
これで全身がツルッツルになったわけだ。
服の着心地というか、肌触りがめっちゃ良くなったかも。
特にVIOはパンツもズボンも履いた状態なのにスースーするというか、解放感ヤバい。
これはノーパンでスカートを履く女の子と同じ感覚に違いない。
小学生みたいな身体になった事で小学生並にテンションが上がっていたが、明日は施術だ。
睡眠不足は外部からの刺激に敏感になり、少しの刺激でもかなりの痛みを誘発するようになるらしい。
痛いのは嫌だ。
さっさと寝なければ。
俺は明日に備えて早めに眠りについた。
缶コーヒーから時空の落とし穴確定
施術当日。
予約した時間の5分前にクリニックへ到着。
笑顔で迎えてくれる受付の『ウィッチクラフト・エーデル』さん。
今日も会えて嬉しいです。
受付を済ませて待合スペースで待つ。
さて、俺の施術担当は一体誰なんだ。
『六花精スノードロップ』さんとか、『静寂のサイコウィッチ』さんが上手そうで良いよなぁ〜。
『驚楽園の案内人〈Comica〉』さんや『ウィッチクラフト・エーデル』さんなら明るい感じで話してくれそうで施術中も退屈しなさそうだし、
前回から顔見知りの『ナイチンゲール』さんも捨て難い……!
1人でニチャりながら考えていると、前回は見なかった新しい美人ナースが俺の前にやってきた。
「本日施術を担当させていただきます『悦楽の堕天使』です〜。よろしくお願いします〜」
俺、今からこの人に全身を撫でられながら、レーザーで細胞を焼かれるんだってさ!
ヒューッ!
クォーターセンチュリーシークレットレアのブラックマジシャンガールよりレアな体験だぞ多分。
いや、分かってますよ、、、
アレな感じの店じゃあないんだから、そんな、いかがわしい感情とかは無いですよマジで。
ほんとにほんとに。
施術部屋の中央にはベッドがあって、その横には洗濯機みたいな箱型の機械が置いてあり、これが脱毛の機械なのだろう。
デカい機械から伸びたコードの先のバーコードリーダーのような機械でレーザーを照射し、脱毛していくらしい。
「それでは、今着ているものを全て脱いで、こちらのパンツを履き、ベッドの上で待っていてください〜。私は、一旦退室して準備をしてきますので〜」
去り際の悦楽の堕天使さんに渡された袋の中には、ペラッペラの紙パンツが入っていた。
パッと出た感想は20円のブーメランパンツ。
全く隠す気の無い面積をしてはりますわ。
……ってか、股下と腰の部分がなんか既に破れてるんだが。不良品とかいうレベルかよ。
なんだこれ、中古ですか?
これを履けって……は、履く?
履くってなんだ?(哲学
みんなは折り紙を1枚渡されて、コレを履いてねって言われたらどうする?
今の状況はそういう事よ。
仕方がないからベッドに仰向けになって、その折り紙を『ギャラクシー・ワーム』にかけた状態で待った。
暫くして悦楽の堕天使さんが帰ってきて、折り紙の不良品具合に気付いたようだが、気にせずそのまま施術を始めるらしい。
「まずはデリケートゾーンに麻酔を塗っていきますね〜、ちょっとヒヤッとしますよ〜!」
パッと折り紙は剥ぎ取られ、生クリームみたいなものをVIOに塗りたくられる。
どうやら折り紙の出番はここまでのようだ。
今までありがとう。お疲れ様。
というか、施術の流れの説明とかが色々あるもんだと思ってたけど、そんなものは無く意外にサクッと始まったな。
美人に素手で『ギャラクシー・ワーム』を触られる事なんてそうそうあるもんじゃないのに、心の準備が出来てなかったせいでじっくり堪能する暇も無く、麻酔クリームの冷たさにビビって声を上げないように我慢するのに精一杯だった。
麻酔は痛みが出やすいVIO、脇、ヒゲの部分に塗る事が出来る。
麻酔代を節約するために塗らない事も出来るが、ネットの情報によると、麻酔を使わない奴は痛みを愛するイカれ太郎、もしくはバカアホマヌケのチーズ牛丼らしいため、
そして俺も痛いのがクソ怖かったため当然のように塗れるところ全部分に希望した。
麻酔が効いてくるまで暫く時間がかかるため、その間に手足や体の部分を脱毛していくようだ。
「毛の剃り残しが無いかチェックしますね〜」
四肢や体に、悦楽の堕天使さんの手がスゥ〜ッと這っていく。
くすぐったいのがダメな奴はもうここでアウトだ。そいつはこの戦いにはついて来れない。
ここは俺に任せて家で寝てなよ。
「あっ、ここ! 剃り残しがありますねぇ〜。初回は無料の剃毛サービスがありますので、このまま剃っちゃいますね〜」
悦楽の堕天使さんは俺のふくらはぎを指でツンツンしながらそんな事を言ってきた。
バカな。昨日あれだけ剃ったというのに、まだ剃り残しがあったというのか。
というか、そのツンツンは一体何なんだ。
もし『ギャラクシー・ワーム』に剃り残しがあった場合は、
「ここ♡ 剃り残してますよ〜♡」
って言ってツンツンしてくれたとでもいうのか。
まずい、やめろ。
考えるな。
ここはそういう店じゃないんだ。
『ギャラクシー・ワーム』が立ち上がったら気まずいどころの騒ぎじゃないぞ。
初回は無料の剃毛サービスがあったなんて知らなかった。
悦楽の堕天使さんが全部やってくれるんなら、あれだけ時間かけて丁寧に剃毛なんてしなくてよかったじゃん。プレミだ。
長い間レベッカを使っていたせいで、赤ゾロに乗り換えた時にリーダーゾロのアタックを忘れるくらいのプレミだ。
もしくは、スプライトミラーでギガンティックを守備表示で出してしまったせいで相手のギガンティックに殴られアーゼウスまで行かれてしまうくらいのプレミだ。
もしくは、ラビュリンス対面で白銀姫のss効果に対して増殖するGを発動してしまったせいでその後の通常罠に対するチェーンが出来ずに白銀姫で次元障壁や闇デッキをセッティングされ以下略。
事前の剃毛も終わった事で、いよいよ脱毛施術に入るらしい。緊張してきた。
ベッドにうつ伏せ状態に寝て、大の字に伸ばした手足に温かいローションをベチャベチャに塗られていく。
「では始めていきます〜。痛かったら言ってくださいね〜」
うーわ、歯医者みたいな事言っとるわ。
そのセリフ聞いて痛くなかった事があるか?
いや、無いね。
絶対痛いに決まって、、、
あ、あ〜〜ったけぇ〜!
程よい温かさの缶コーヒーを当てられているような感覚で、じんわりとした温かさが心地良い。
ふくらはぎ、もも、腰、背中、腕、と順番に缶コーヒーを当てられている間、
ピピピッ、ピピッ!
と、無機質な機械の音がしているが、痛みは一切無い。
全身ヌルヌルで美人にマッサージされてるこの状況なにこれ、メンズエステってやつ?
手足や体には麻酔を塗っていないため、多少の痛みは覚悟していたのだが、完全に杞憂。
もうこのまま眠ってしまいそうなくらいにリラックスしていた。
「次はOラインいきますね〜! ちょっとチクッとするかもしれません〜」
はいはい、『時空の落とし穴』周りね。
そこは麻酔が効いてるから余裕なんだよなぁW
悦楽の堕天使さんがお尻の肉を掴んで、グイグイ『時空の落とし穴』を広げてくる。
正直、めっちゃ恥ずかしいけど向こうはプロだ。折り紙を剥ぎ取る時だって、麻酔クリームを塗りたくる時だって躊躇無かったし、こっちが変に意識するほうが恥ずかしいだろう。
悪い医者が出てくる漫画にありがちな、
「やだ、そんなところまで触るの……? こ、これって本当に医療行為なんですよね?」
「勿論そうですよ。……もしかして、変な想像をされていますか?」
「ち、違っ!///」
「大丈夫ですよ。私はプロですから。それに、これはみんなやっている事です」
……みたいな展開で騙される女の子みたいな状況になってはいるが、今のコレはガチの医療行為だと信じたい。
でも悦楽の堕天使さん、『時空の落とし穴』を広げてまじまじと観察するのは普通に恥ずかしいからやめてもろて。
レアリティ拘ってないです。ノーマルです。
そんな事より、穴を広げられて中身が漏れそう。悦楽の堕天使さんの顔にオナラやうんちをデリバリーするような事にはならないよう我慢しないと、
バチッ!!
「ぐっ!?」
突然の鋭い痛みに思わず声が漏れる。
「ふふっ、お尻、結構キますよね〜。我慢出来ない痛みだったら言ってくださいね〜」
待て、なんだ今のは。
『時空の落とし穴』全体に、数千度に熱された針を100本くらい同時に刺されたような痛み。
小学生時代、クソガキ達の間で椅子に画鋲を仕掛けたり、ナルトの千年殺しが流行っていた事があって、俺も何度かやられた事があったが、その10倍は痛いぞ。
バチチッ!
「ぐゔっっ!!」
また針を大量に刺されるような痛みと熱さ。
サカナみたいにビクッと身体を震わせ、力が入り過ぎた脇腹と足が攣りそうだ。
「あはっ♡ 大丈夫ですか〜♡」
先程までより格段に楽しげな声色をした悦楽の堕天使さんが話し掛けてくる。
俺の痛がる姿を見て悦楽を覚えてやがるぞ……!
初対面ではその優しげな笑みと柔らかな話し方から天使のようだと思っていたが、なるほどこれは堕天使だ。
さっき、我慢出来ない痛みなら言えと言っていたな……。
我慢出来ないからやめてくれって、
言ったらどうなる?
ここで施術は終わるのか?
なら俺が払ったカネ、フラッグシップのシリアルシャンクスをも余裕で数枚買えてしまう程の札束は無意味に消えるという事なのか?
ぐるぐる色々考えている中の無言を、続行可能と受け取った悦楽の堕天使さんが新たな一撃を入れてくる。
バチッ!!
「ゔッッ!!」
麻酔はどうした。
実はただの生クリームを塗られていたわけじゃあるまいな。
もしかして、麻酔をしていなければもっと痛いという事なのか……?
せめてもっとゆっくり、1発毎に10分くらい休憩を、
バチッ!
バチチッ!
バチッ!!!
「ア゛ッッー!!」
俺はこの日、悦楽の堕天使さんによって時空の落とし穴確定されてしまった。
自ら望んだ最悪
『時空の落とし穴』がバカになり使い物にならなくなってしまった後、今度はベッドに仰向けにさせられる。
先程までは体の裏面の施術をしていたため、次は表面という事だ。
同じように温かいローションを全体的にベチャベチャと塗りたくられ、缶コーヒーを当てられ気持ち良い。
うつ伏せの時とは違い、仰向けだと悦楽の堕天使さんの施術姿がよく見え、メンズエステ感が増している。
目が合う度に、ニコッと微笑んでくれる彼女は先程の堕天使とは別人なのだろうか。
やっぱり天使なのではないか?
「Vラインいきますね〜。ちょっとチクッとするかもしれないです〜」
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!
来るぞ遊馬!
来てしまったぞ地獄の時が!!
バチンッ!!
痛ッッテェェェェ!!!!!
拳を握り締めながら腹筋に力を込めてなんとか耐える。
「ふふっ♡ 痛いですか〜? 痛いですよね〜? がんばってください〜♡」
すりすりと俺の下腹部を撫でる悦楽の堕天使さんの手つきは優しいが、そのニコニコ顔と言動が全く優しくない。
バチッ!
バチチッ!
バチンッ!!!
ぐああぁぁぁぁぁっ!!!!!!
下腹部を焼かれる度にビクンビクン跳ねる身体を、ニッコニコ笑顔の悦楽の堕天使さんに押さえつけられる。
VラインはOラインと違って範囲が広いため、なかなか終わらない。
あと何回!?
あと何回耐えればいい!?
何度も何度も焼かれたせいで、へそから下の部分が全部、痛くて熱くてもうどうなっているのかわからない。
異世界ラノベで、極悪組織に捕まったエルフの女の子が下腹部に『オレイカルコスの結界』模様やバーコードを刻印される展開とかよくあるけど、今の状況が完全にそれ。
悦楽の堕天使さんが極悪組織のハゲデブおじさんだったら、今すぐ顔面ブン殴って大逃亡かましてるところだったぞ。
「次はIラインいきます〜。ローション塗っていきますね〜」
ああ、どうせ1番痛いんだろう。
分かってんだよ。
『ギャラクシー・ワーム』や『ラーの翼神竜-球体形』がレーザー光線に耐えられるわけがねぇんだからよ。
手足やVラインの時と同じく、Iラインにも悦楽の堕天使さんの手によって温かいローションを塗られ、、、
『ラーの翼神竜-球体形』をにぎにぎ、
『ギャラクシー・ワーム』を握られ、
上下にスリスリ、
左右にグニグニ、
あっ、
待て。
や、やばい……っ!
何も考えるな。
何も感じるな。
今こそ無の境地を発動しろ。
落ち着いて呼吸を整え、頭を真っ白空っぽに……
「では、いきますね〜♡」
バチッ!!
痛みと衝撃でビクッと身体が跳ねた瞬間、俺の『ギャラクシー・ワーム』にそっと添えられていた悦楽の堕天使さんの手のひらがギュッと握られ、、
ダメだった。
我慢出来なかった。
『オルフェゴール・バベル』発動。
『A BF-神立のオニマル』状態。
いやいやいや、これは俺、悪くないだろ!
人間の構造上、仕方の無い事なんだ。
運命に抗ったって、どうする事も出来ないって事は世の中たくさんあるんだよ。
密室で顔が良い女に素手で散々刺激されても寝たきり状態は逆に異常な事だと言える。
世界の理から外れるような事態にならなくて本当に良かった。
良くねぇよ。
『A BF-神立のオニマル』状態になってしまったものは、自分の意思ではもう制御不能な暴走状態になる(攻撃力6000)
特に、触られ続けている今の状況では、そう簡単には元に戻らない。
だがまあ、幸いな事にこの程度ではエネルギーの放出までは至らないだろう。
途中で『ギャラクシー・ワーム』がトランスフォームしても悦楽の堕天使さんは動じず施術を続けるようだ。
ジュッ!!
ぎゃああぁぁ!!
レーザーでソーセージの側面を焼かれた。
やばい、全体的に満遍なく焼いて食べる気だ!
悦楽の堕天使さん、そんなに焼かずに生のままでも美味しいかもしれませ、
ジュッッ!!
「ン゛ッッ!」
悦楽の堕天使さんの手は、
ソーセージをこんがり焼いた後、その下の『ラーの翼神竜-球体形』へと。
ジュッ!
ぐぎぎぎぎぃ!!
ここまで痛いと内部へのダメージが心配だ。
俺の『ラーの翼神竜-球体形』の中にいる『コズミック・サイクロン』達、破壊されていないか?
『時空の落とし穴』に続いて、『ギャラクシー・ワーム』や『ラーの翼神竜-球体形』までも破壊されてしまった。
麻酔のせいなのか、それともあまりの痛さに神経が全て死んでしまったのか、感覚が無い。
元の原型を留めているのか、この目で見るまではわからない。不安だ。
脇は正直、頑張れば我慢出来るレベルの痛さだった。
顔もクールな平静を装えていた(と思う)
サディストである悦楽の堕天使さんの喜ぶ顔が見られなくて残念だ。ヨシ!
最後、ファイナルラストはヒゲ。
突然だけど、皆さんは自身の死について考えた事があるだろうか?
いつ、死ぬのか。
何処で、死ぬのか。
どうやって、死ぬのか。
毎日毎日、忙しさに殺されるような日々を送っている現代人の皆さんには、そんな事を考える暇なんて無いのかもしれない。
だが、生物は全て、遅かれ早かれ死んでしまう。
回避出来ない『死』というものは、いずれ訪れてしまうのだ。
未来の事は誰にもわからない、とは言うけれど、既に確定している未来についてなら、少しくらいは考えてみてもいいだろう。
もしかすると、ほんの僅かでもコントロール出来る事があるかもしれない。
俺の、自身の『死』についての願いは
苦しみたくない
これに尽きる。
溺死、焼死は最悪。
絞死も論外。
凍死や餓死もキツそうだ。
というか、死ぬ事よりも、とにかく苦痛を感じる事が嫌だ。
苦しまないために今を生きていると言っても過言ではない。
苦しみたくない。
俺の願いは、それだけなのに……
ジュゥゥッ!!
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!
熱い゛痛い゛!
プスプスと煙が上がるような音と共に、肉が焼け焦げる臭いが鼻の奥を劈く。
ジュウゥゥッ!!!
俺の口元で焼肉するな!
激熱の鉄板を顎に押し付けるな!!!
口から脳天にかけて電撃が突き抜けるような衝撃で、視界がバグって真っ白になる。
痛い!熱い!
もう嫌だ!
こんな苦痛がずっと続くんなら、
もういっそ、、
くっ、
殺せぇ!
殺してくれぇぇぇえ!!!!
バチッ!
ジュゥッッ!!
わかった!
もうわかったから!
仲間の情報も、
アジトの場所も、
今後の計画も、
全て吐くからもうやめてくれぇぇぇぇ!!!!
・・・
「お疲れ様でした〜! 本日は激しい運動や入浴は控えてくださいね〜。炎症を抑える薬を出しておきますので、受付までどうぞ〜」
「あ、ハイ……」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら、心の中で許しを懇願し続けた事だけは覚えている。
半分気を失っていたのだろうか。
永遠に続くかと思われた拷問は気が付いたら終了していたらしい。
生還した……っ!
ただここに存在して、苦しみを感じていないだけの瞬間とは、なんて素晴らしい奇跡なんだ。
何も無い平和な日常がこんなにも愛おしいなんて、この気持ちは数時間前までの俺は知らなかった。
人としての成長を実感する。
苦難を乗り越えた俺はまた一つ、誰かに優しくなれた気がするよ。
さて、帰ったら先行全ハンデス型の未界域暗黒界でも使ってランクマ潜ろうか。
受付にて『ウィッチクラフト・エーデル』さんに炎症止めの塗り薬を貰う。
ああ、よかった。
ようやくこの地獄から解放されるんだ。
ここはヤバいよ。
人を痛めつけて大金をぶん取るサディスト集団の巣窟だ。
俺はもう、二度とこんな所には足を踏み入れな……
「お疲れ様でした〜。次回は1〜2ヶ月後を目安にまたいらして下さいね〜!」
ニコニコ笑顔で手を振ってくる悦楽の堕天使さん。
……最悪はまだ続くらしい。