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パパのお仕事
「大きくなったら パパのおしごと 僕が手伝ってあげようか?」
保育園から帰り一緒におやつを食べていたときのこと、息子から言われた突然の宣言に動揺してしまった。
今まで彼がそんなことを匂わせたこともなければ、私から望んだこともない。昔はあっただろうが、今の時代に父の仕事を継ぐ長男なんて、少し古いとさえ思っていたのが正直なところ。しかし素直に嬉しかった。
そもそも、この仕事に私が参加した理由の一つは、前職では息子の成長に関われないと判断したからだ。朝早く出て、夜遅くに帰る。子供たちの幼少期に週末しか存在感を出せない父に、私はどうしてもなれなかった。
今の生活になってから、保育園の送迎は私がメインになり、先に帰宅してママの帰りを待つことが多くなった。一緒に車内清掃をしながら遊んだり、母や吉田さんと仕事の話をする様子も見ている。そんな生活と仕事が入り混じった日常の中にいたこともあり、息子なりにパパの仕事を感じる機会もあったのだろう。
それでも、将来は息子に、などという気持ちは全くなかった。だからこそ驚き動揺した。「え!?手伝ってくれんの!?」なんて素っ頓狂な声をあげて嬉しさをごまかす。
数か月後には将来の夢が仮面ライダーになっていたとしても構わない。今この瞬間に君がくれた言葉を、これからパパは大切にしていく。
「うん、いいよ。手伝ってあげる。だって困ってる人を病院に連れていくんでしょ。」
夕暮れの窓際に、ためらい無く放たれる無垢の言葉が、オレンジ色に輝いていた。