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受話器の向こうで
「医者に行きたいんだけども… 初めて電話するんだけど…」
不安そうに電話をくれる人はとても多い。初めて利用するサービスなのだから、誰でも多少の緊張はあるだろう。しかし、自分のことは自分でしてきた人間にとって「ただ医者に行く」というシンプルな行為を誰かに頼るのは、私たちが想像する以上の高いハードルがあるのかもしれない。それは極端に言えば、経験の無いことへの「チャレンジ」に似た感覚ではないか。
多少は歩けるがお願いできるか 近距離だけど来てくれるか
車椅子は借りれるか 妻と一緒に乗れるか
はい大丈夫ですよ 車椅子はそのまま病院でも使ってください
往復で3000円くらいですね その医院なら私たちも良く行きますよ
一つの質問を最後まで聞き終わってから答える。また次の質問へと進めていく。本人が抱えている不安をちゃんと自分の口から伝えることが大切である。大体のことは大丈夫。丁寧な問答の連続こそ、対話と信頼関係の土台となるのだ。
「お宅らは、どこの所在地なの?ああ川東のほうか、それなら親戚がいるよ。猿和田駅の近くにねー」
話が逸れてきた。受話器の向こう側で声がポンポンと弾み、それに不安が振り落とされていくように聞こえる。
自分に必要なサービスだと感じてくれても、受話器を握るまでには時間がかかる。そこを超えてくれた方には「私たちに任せてください」というメッセージを、言葉と同じくらい雰囲気でしっかりと伝えたい。この人たちになら話せた、と感じてくれたなら大成功だ。