【詩】詩篇2023
2023年に書いた詩群。
音楽ジャンルで言えばグラインドコアか?
「入会」
「公園」
「人格排除センター長はずるい」
「足の裏に」
「愛妻家」
「橋が落ちた」
「時計」
「応じても仕方のないピンポン芸を許すのは一心同体」
入会
ハイエナに食わせる虫たちを両手いっぱいかき集めている若い女の腕を洗っているのは
蛇口の横でいつも水筒に口をつけている
囚人かつ夫人である友人 受け答えだけはわずかにはっきりしているので
最初の方だけ聞き漏らしておけばそれで済むと思いこんでいる 口答えの達者な
夫人会の窮民 脅威であるろくでなしから身を潜めさせてくれそうな
路上脇のセンター長は 若い女たちの影に隠れて
虫を食べている
公園
発信元を根絶やしにしやがった 文化的な白さを肌にへばりつかせている胴元めが
死に恥の晒し損にめげもせず
今日も手紙を書き散らす 不快にさせる音をペン先で ひり出し出し
用事もないやつに電話をかけられることにはもう慣れっこだ
損得でしか首吊り用のロープに首をかけようとしない死刑囚が
告げる 春先を 罪のように
やけに煙たい煙草を 首に押し付けて やけどを首飾りにしている 遺体の生き損なった最期を くだらない洒落の素材にして けりをつけるかのような 亡骸ごっこのための 葬式ごっこを 隣のベンチで楽しんでいる 出されすぎた将来の絞りかすが 安置の底で ハイエナのふりをしながら 肉を文字の形に切り分けて 恩を着せているかのような 「毎日」であるかのような 白紙の置物を 知らず知らず 残酷さの 見物者に仕立て上げてくれそうな ありがたく頂戴させてくださる 経
文化的な食肉処理を安心して任せられるのは
工場長を見かける機会の多い
公園横の貴社に限られるのだから
圧縮を依頼することに不自然はあるまい
「要石に忘草を、は
苦し味 曖昧に去年を長くするは
恥づかし目かくしされしぬめ引用者は
づい分破れ目を、革は は
爪切断麻你よ用て ゐ」
排除は面白い暇つぶしになる
白いゴキブリをヘマをやらかした咎でおいたて
罪悪感を裏付けるのが
流行に乗り遅れずに暇をつぶす
何よりもの近道だと
俺は気づき
俺はそうする
反吐にもならない汚さが
口からこぼれ落ちていくことで
また一つ
良い排除を味わうことができるだろう
側溝に
雑草に
人混みに
接地面積の広い靴底に
侵された広さばかりが
俺の体重の裏側に
へばりついている
足を伸ばせば届くはずの場所にしか設置しなかったことが悔やまれる、公衆電話
人格排除センター長はずるい
人格排除センター長は
ずるい
有言実行を旨としながらも
刀を手放している光景は決して晒そうとしない
灰色の窓の向こう側に
あってもなくても良い置物を積み上げるだけ積み上げて
通り道になる暇も与えずに
足止めを楽しむのが
ずるい
映画を観続けようと 止めても
止めても 機
を
見
て逃げられそうにない
上
か
ら
匙を投げる趣味人から
宇宙服の香りを嗅ぎ取る犬の番になっても
肉付きの良い 包丁研ぎ職人は まだ妬んでいる
人格排除センター長は
ずるい
吃音で鼻をかむ素晴らしい周囲の面々が、取り囲んでいる動作の吠え方をあざ笑っていやがる
素晴らしい方々の声色に乗って聞こえてくるのはどこかで聞いたことのあるような感嘆の言葉ばかり
それでいて
コメントを求められるに足る情緒に浸っているつもりで面を、動物にさらけ出して、柵に体重をかけながら
吠え方をあざ笑っていやがる
俺がこれまでに流してきた鼻水がひたすら洗ってきた粘膜は
洗われるほどの資格がない卑怯者らしい
御大からむしり取った金目の品が積み上がったが
なおも
御大は大きい面を晒して歩く
言いにくそうな事柄を眼の前で言われ続けて
早くも
数十年の時が流れてきたと思わせる面を
晒して歩いている
ゆっくりと
走り出す素振りも見せず
御大は金目の品をポケットの縁からひけらかしながら
未だに
歩く
人格排除センター長は
ずるい
人格排除センター長は
ずるい
足の裏に
足の裏に犯罪者の顔を入れ墨している正義の味方が
ピストルの前でうろたえている
ピンチに陥っている
ピーターパンのように身軽な
ピン芸人の
ピンナップ写真に似ている
ピエロの姿の殺人者を
誰より憎む正義の味方が
撃たれた
救急車で運ばれた
治療された
まもなく死んだ
撃ったのは
濁点だ
愛妻家
味覚をなくさないでほしいと思う友達ばかりが炎をなめて苦しむことに
激しい味わいを塗り重ねていき記憶を作るジレンマが大好きな理想の男性を 像としている何者かの内面がふざけていると思い込まれることを密かに期待しながら 指先でほのめかされている
宇宙人が責められているぞ 地球のクズの集団に 弱者であるにもかかわらず生活保護を受けてもいない火星生まれのマイノリティが いじめられているぞ 黒人やユダヤ人であるかのように きれいな涙を流しに流す 恒星の隙間で
水浸しになってふざけているナロードニキが溺れる寸前であるかのように声を振り絞っていた
会合に歪んだ形で参加
発言を求められるたびに昔見た夢を教えてくれる夫人 を黙らせてくれた死刑制度を補おうと一人だけで偏頭痛に耐えている
出版パーティーを開くためだけに世に出した本を2000年もありがたがってきた
理由がないわけでもなく
ずさんな記事をページに埋めて
橋が落ちた
橋々を切り落とす 落とし前をつけさせるように
動かない車たち 静物画を楽しませている
古いふざけ方だ
ゆすりに長けて 許され損に仕方をなくすまいか
破断者を 絶服するのは 第三、四代目くらいにしておこう
時計
時計合わせに使えそうもない日光しか降り注がない窓際からは
妻を養うのが好きな通行人のありきたりな思想信条が
憲法666条に守られながら身をさらけ出している、自慢気に
応じても仕方のないピンポン芸を許すのは一心同体
応じても仕方のないピンポン芸を許すのは
一心同体
遊んでいる言葉を吐き散らかしているルワンダ人が 崖の果ての丘で口々にこそあどを間違えている てにをはであるかのように
間違う 選んだ言葉を未練たらたら吐き捨てている ガムのように
くす玉を引くためだけに生きてきたような市長に仕える老人市民は90%を超えるかのように歳を重ねて人口を増やす楽しみを所内に満たしてくれそうな お姉さんで いい気分を味わっても緩むことはない