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僕の理想のデート・・・

 都内某所12時。黒のメルセデスSUVのレザーの助手席にエスコートし、外苑前のテラス席でランチ。青山から表参道まで軽くショッピングをしながら散歩を楽しみ、15時にベイエリアの会員制ホテルのスウィートルームにチェックイン。
ラウンジでスイーツとコーヒーを楽しみ、48階の部屋に入ると、 お気に入りの音楽を流し、携帯電話の電源をOFFにする。

窓から見える景色を楽しみ、ソファーに腰掛けて夕飯のメニューを話し合う。今回は、ルームサービスでふたりの時間を満喫することに決めた。

大きくて程良く硬いベッドには、凛としたシーツと枕。ふたりで天井を見上げて、笑ながら手を握り目を瞑る 幸せを実感しながら、彼女を抱きしめる。オデコに軽くキスをしながら、彼女の体温を感じる。

少し休んだふたりは、TV付きのジャグジーに入りながら、スポーツを観戦している。バスタブで彼女の背中越しにTVを見ながら、彼女が気づかないくらいの軽いキスをする。
bath saltsの香りで、包まれた彼女は、 まるで、消えて無くなってしまいそうな泡の様に愛おしくて、自然に抱きしめる腕にも力が入る。

ふたりでバスローブを着て、リビングに戻ると、テーブルに夕飯が並べられている。シャンパンとオードブル、スープにパスタ。小ぶりの魚とお肉で、テーブルの上は、ご馳走でいっぱいである。

落ち着いた洋楽をBGMにしながら、軽くシャンパンで乾杯をする。たわいもない話しをしながら、贅沢なディナーをバスローブ姿でいただく。 お腹もお酒とディナーで満たされると、ソファーに座りながら、大型スクリーンのTVのチャンネルを一通り回してみる。
お気に入りのチャンネルが無かったのか、 Netflixから映画を散策してみる。

やっと彼女のお気に入りの映画が見つかり、シャンパン片手に映画鑑賞がスタートする。 一通り見終わると、酔いも冷めてしまっている。窓から見える景色は、ベイエリアの夜景が広がっている。
遮る物が何も無い夜景と彼女に魅了されなから、静かな時間が流れる。 フロント係から聞いた、ホテル自慢のSPAの存在を思い出す。
彼女を誘い、バスローブ姿でSPAへ向かう。あまり行く気がしないのか?少し不機嫌な様子の彼女。エレベーターで最上階まで上がると、360度の夜景が広がるSPAの受付。彼女の機嫌も急上昇。
受付でトリートメントをお願いし、 1時間後の集合を約束する。 贅沢しかない1時間は、あっという間に過ぎる。
先に受付で待っていると、彼女もほっぺを赤くして満足気に戻ってきた。先程までの不機嫌な様子は、遥か遠い世界に置いてきたかの様に、今の心地良さに浸っている。

部屋に戻ると、ほぐれた身体が気持ちいいのか、 ふたりは、大きくて真っ白のベットにうつ伏せに飛び込んだ。冷んやりしたシーツが体温を上手に調整してくれている。その余韻にふたりで浸っていると、いつの間にか眠ってしまった様だ。彼女に掛け布団を羽織り、寝室の電気を消す。リビングのソファーに腰掛けると、窓一面に夜景が広がる。 テーブルの上に置いてあるミネラルウォーターを手に取り、ひと口飲みこむ。 今、何時だろう⁇時計の無いこのホテルは、時間の感覚を忘れてしまう。
外の景色は、静まりかえった風景が広がり、人の姿は見えない。落ち着いた明かりを見ながら、何も音の無い時間を楽しむ。 この感覚が、永遠に続いて欲しいと願いながらも、どこか淋しさを感じる。

ミネラルウォーターを十分に飲み干し、白のベッドに潜り込む。 もう彼女は、起きない様子だ。日常が疲れているのだろう。軽く髪を撫で、全ての照明を消して、夜景だけの明かりが照らされる寝室で、静かに眠りに入る。

翌朝は、部屋のチャイムの音で起こされる。8時30分にモーニングのルームサービスを頼んでいたのだ。そんな事も忘れてしまうほど、深い眠りに入っていた。
飛び起きて、大きな扉を開けると、黒服の爽やかな青年と髪の毛を上げた女性が立っていた。
爽やかな挨拶を交わすと、 リビングのテーブルに素早くモーニングをセットしてくれた。 軽く感謝の言葉を伝えると、軽く一礼をして部屋から退出する。
窓の外は、青空が広がっていて、優しい朝の光が、部屋に降り注いでいることに気づく。 彼女は、まだ夢の中にいる様子だ。 音量を落として、昨日の続きの音楽を流す。
ミネラルウォーターを口に含み、窓の景色を眺めると、ランニングする人の姿、出勤する人の姿が見える。昨日の静かな光景から180°違う世界の様だ。 彼女は、まだまだ起きる気配がない。しばらくゆっくり寝かしておくことにした。
先程のボーイさんが運んでくれた温かいコーヒーを白いカップに注ぎ、 コーヒーの香りが、ゆっくりと広がる余韻を楽しみ、朝の1人時間を考える。
彼女を1人部屋に残すのは、心苦しいが、また昨日のSPAへ行きたい気持ちになり、バスローブ姿でこっそりと部屋を抜け出した。

最上階からの景色は、全て開放された大空の一部になったかの様だった。 1人のバスタイムの時間を楽しみ、束の間の1人時間を満喫したところで、ゆっくり部屋に戻ると、彼女は部屋のジャグジーでTVを楽しんでいた。彼女も束の間の1人時間を楽しみたいのだろうと思い、リビングのソファーに腰掛け、こちらもTVを軽く観賞する。 お一人様時間をお互いに楽しんだところで、やっとの朝食だ。
ボーイさん達が来てから、どれだけ時間が経っているだろう… そんなこともお構いなしの様子で、彼女は美味しそうに朝食をほお張る。

今日のチェックアウトは、12時だ。残り数時間だろうか… 非日常の空間も残りわずかである。 彼女にチェックアウトまでどうする⁇と問いかけると、少し淋しげに『何もしたくない』とひと言。 何もしない、何も話さない、ただ心地良さだけを求めて、ふたりはこの時間を過ごしている。何もしない関係性、何も話さない無言の関係性。そんな時間が心地良く感じるあなたに出逢えて心から感謝する。

終わり。

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