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「2050年のカーボンニュートラル達成に向けて――重排出産業の脱炭素化が進むも、さらなる加速が必要」


世界全体でのエネルギー関連排出量が2022年から2023年にかけて1.3%増加する一方、従来「排出削減が難しい」とされていた重排出産業が初めて排出量の絶対値を0.9%削減したことが、「Net Zero Industry Tracker 2024」の報告で明らかになりました。この成果は、アルミニウム、セメント、化学、航空、トラック輸送の5つの主要セクターでの排出強度削減が後押ししています。しかし、これらの分野は依然として世界の温室効果ガス排出量の約40%を占めており、現状のペースでは2050年のカーボンニュートラル目標に達しないと警告されています。


なぜ「重排出産業」は排出削減が難しいのか?

「ハード・トゥ・アベイト(hard-to-abate)」とは、重工業や輸送業など、従来の高炭素燃料への依存度が高く、排出削減が困難な産業を指します。例えば、鉄鋼やセメント、航空、海運などは、従来のエネルギー源をすぐに代替することが難しく、他の分野に比べて脱炭素化が遅れてきました。

しかし、これらの産業が排出削減を達成しない限り、2050年のカーボンニュートラルは不可能です。そのため、政府、企業、金融機関、消費者が連携して、以下のようなアクションを取ることが急務です。

1. 投資の加速:資金調達をどう進めるか

2050年のカーボンニュートラル達成には、追加で30兆ドルもの資金が必要です。そのうちの57%は、重排出産業の枠を超えたエコシステム全体からの投資に頼るとされています。

なぜ必要か?

脱炭素技術には、グリーンプレミアム(低炭素技術が高コストであること)が課題となっており、これを乗り越えるための政策的支援資金の流れが不可欠です。

どのように進めるか?

政府と金融機関が協力し、カーボンプライシング(炭素価格設定)や炭素国境調整メカニズム(CBAM)などの政策を導入し、グリーンプレミアムを低減させることが有効です。

2. 公共・民間のパートナーシップによる技術革新の推進

イギリスのTransforming Industrial Clusterや、アメリカのFirst Movers Coalitionのように、公共機関と民間企業が協力して、グリーン鋼低炭素セメントなどの技術開発を進めることが重要です。

これにより、透明性協力関係が強化され、革新的な技術が実用化され、持続可能な解決策が広がります。

今こそ、加速が必要

ハード・トゥ・アベイト分野での排出削減はすでに始まっています。しかし、現状のペースでは目標には届かないため、政府、企業、金融機関、消費者が協力してスピードを上げることが求められています。

2050年のカーボンニュートラル達成に向け、今こそ**「投資の加速」と「協力体制の構築」**がカギとなるでしょう。

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Tokyo⇄シリコンバレー AI,クライメートテック Web3 -武富正人
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