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「ビアジャッジは面白い」と背中を押され―ビアジャッジ合格しました
2023年にビアテイスターという資格をGETしてから1年。
正直、このビアジャッジを受ける気持ちは元々なかった。なにせこの上位資格はより正確な官能能力が必要であったし、自分が足元にも及ばない人たちが保持している憧れのような資格であったからだ。
ビアジャッジは、ビアテイスターの上位資格にあたり、ビール審査会等において、ビールの審査をする知識と官能評価能力があると認められた方に与えられる資格です
そもそも手に届くはずがないし、何よりそこまでビールを飲んでいないという引け目が受験することすら考えから消えていた。
「ビアジャッジは面白いぞ」
ある日最寄りのビール専門店を訪れると、その日はちょうどビール関係者の方が多く来店されている日だった。
私が一方的に存じ上げている状態だったのと、その方は国際的に活躍しているビアジャッジの方。
このとき運良く、私はドイツとチェコへビールを飲みに行く予定があったので、少しだけ海外ビールについてお話させてもらった。
海外でどんな活動をしているのか聞くのは、私にとって非常に刺激的だった。
そしてこのとき、ビアジャッジについても聞いていた。
「ビアテイスターは持ってるんですが、ビアジャッジのセミナーまで受けるかと言われると……あと関東でやってくれたら受けやすいんですが(北海道かどこかの開催地しかなかった記憶)」
という私に「11月に横浜での講義が追加されると思う」と教えていただいたのに加えて、
「ビアジャッジになってからが面白いんだよ。そこからものすごく広い世界が待ってる。よかったら受けてみて」
と背中を押していただいた。
私にはこの言葉で十分だった。
それまで聞いた活動のお話が、すでに私をその気にさせていた。まだ見たことがない世界の片鱗を魅せられて「私はいいです」なんて言える性格ではない。
その場で「次のセミナーに応募します」と返し、お礼をした。
2日間のビアジャッジセミナー
11月のビアジャッジセミナーに行くと、背中を押してくれたその方が会場にいらっしゃった。
お店で数分話しただけの私のことを覚えているなんて思い上がりはない。
それでもこの場に来た事実はどうしても伝えたかったので、時間とタイミングを見てご挨拶をさせていただいた。
「2月(ジャパン・グレートビア・アワーズ2025)にまた会いましょう」
と、試験前とはいえお話してくれたのはとても嬉しかった。
ビアジャッジに合格すると、その直後のジャパン・グレートビア・アワーズには必ず参加権限が与えられる(自動的に招聘)。私が合格すれば、それが叶うというわけだ。
初日の講義は座学半分と官能トレーニングであった。座学は事前に持っている知識と照合する作業がほとんどだったが、より一層化学的な内容に脳が刺激される。
酵母が発生させるアルコールの化学式を覚える必要はないが、ビールを構成するアルコールもこんなに無機質な化学式で表現できるのだと思うと面白かった。
座学中、最も私が印象的だったのは
「(ビールの状態は)短絡的な証拠だけで判断するのではなく、多くの情報と証跡を集めて判断する」
というものだ。これには正直「仕事かな?」とすら思った。
ITエンジニアをしていると、これは常に求められるものだった。いや、どの職種でも同じだろう。ひとつの状況証拠だけでなく、持っている知識から多くの仮説を立ててその仮説を立証できる証拠を探す。
これまでよりも、深い前提知識が必要なのだ。
それをビールの官能評価中に発揮すればいい。
官能評価のズレ埋め
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初日の官能トレーニングは散々だった。とても受かる気がしなかった。審査員との点数誤差は致命的で、特に苦手なエール系はほとんどまともに判断できていない。
しかし唯一自信となったのはラガービールの採点。この数年こればかり飲んできたからか、初期時点でも審査員とほとんど誤差がない。つまり「何が正しい状態か」を理解していれば、自分の官能評価もそこまで悪くないと思えた。
そうとわかればやることはシンプルだった。数銘柄の判定が終わるごとに、誤差が大きかったビアスタイルについて何がズレていたか質問し続けた。
ひどいものだと私だけがオフフレーバーだと思っているようなものあって、そういう感覚のズレは会話で調整できる。「自分が感じすぎている」と理解するだけで、次回からうまくアジャストできる。
官能評価はグループディスカッションで行う必要があるが、個人がどれくらい正確に感じられているかは別だった。自分があっているときもあれば、メンバーの鋭いオフへの洞察が勉強になるときもある。
何より、ビールひとつにそれだけ議論ができることが幸せだった。
結果
タイトル通り合格ではあったが、なんと筆記試験だけシニアビアジャッジ(中クラス)に合格しており、官能試験をもう一度受けて点数がよければランクアップできる。
継続的に能力を高めれば、届かない領域ではないと思った。
身につけた官能能力は、ビールの粗探しをするためではなく、良いビールを見つけ多くの人に知ってもらうためにさらに能力を精進したい。
まずは来年2月、ジャパン・グレートビア・アワーズ2025で恥じぬ活動ができるよう今からいろんなスタイルに触れていこうと思う。
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