バイトの帰り

数年前工場でバイトしていた。帰りが遅くなることも多々あり、午前四時くらいになる事も珍しくなかった。仕事が終わり当然家に帰るのだが、何故か家に帰りたくなくて無駄にバイクで深夜の道をあてもなく走ったりしていた。澄んだ空気、空に輝く三日月、誰もいない国道、将来への不安、そんなぐちゃぐちゃとしたものが、心をいっぱいにしていたのを覚えている。そして最終的に行き着くのは川。大した川ではないどこにでもあるような普遍的な川。川を見つめ呆然とするただそれだけ。そんな時間が当時の自分には必要だったのかもしれない。しかしながら、現実は無情なもので家に帰らなければならない時がやってくる。そして家に帰って思うのだった「どこかに帰りたい。」無論帰る場所など家しかないのだか、ここではないどこかに帰りたかった。無い物ねだりだったのかもしれない。落ちはない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?