犬と猫の腸内細菌叢の主役はヒトと同じか?
人間の赤ちゃんは母親の胎内で基本的に無菌の状態で過ごすので生まれて初めてするウンチには細菌がいませんが、赤ちゃんは産道を通過するときに母親から菌を受け継ぎ、生まれて数時間のうちには腸内に細菌が定着を始めます。その後ビフィズス菌(Bifidobacterium)がガンガン増えます。大人になるとバクテロイデテス(Bacteroides)をはじめユウバクテリウム(Eubacterium)、ビフィズス菌(Bifidobacterium)などの菌が増え安定していきます。やがて加齢とともにビフィズス菌(Bifidobacterium)はガクンと減り、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)や大腸菌などが増えていきます。
ワンちゃんも加齢に伴って腸内細菌叢の変化(老化)が認めらています。先程お話ししたようにヒトではビフィズス菌が主役であり、加齢に伴ってその数が減少することが知られています。ワンちゃんではビフィズス菌は主役じゃなく乳酸桿菌が主役で、さらに加齢に伴って減少します。主役である乳酸桿菌の中でも、ラクトバチルス・ ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)という菌種は、離乳前の犬にのみ多くみられます。
一方、猫ちゃんでも加齢に伴う腸内細菌叢の変化(老化)はありますが、ヒトや犬とは違います。具体的には、猫ちゃんの腸内細菌叢にはどの年齢ステージにおいてもバクテロイデテス科(Bacteroidaceae)やユーバクテリウム属(Eubacterium)の細菌が多い一方で、ビフィズス菌(Bifidobacterium)や乳酸桿菌(Lactobacillus)は主役はなく、代わりにエンテロコッカス(腸球菌 Enterococcus)が多いことが分かっています。また、高齢になるとクロストリジウム(Clostridium)が増え、エンテロコッカス(Enterococcus)が減ります。
ざっくりまとめると、アニメ・ワンピースではルフィーが主役ですが、ヒトの腸内ではビフィズス菌が主役で、いわゆる善玉菌の代表として重要な役割をはたしています。乳酸菌は脇役でビフィズス菌に追随しています。
一方、ワンちゃんは、乳酸桿菌が主役の可能性が高く、猫ちゃんはビフィズス菌でも乳酸桿菌でもなく、腸球菌が主役である可能性が高いと言われています。
また、ヒトのビフィズス菌やワンちゃんの乳酸桿菌、さらには猫ちゃんの腸球菌は加齢に伴ってその数が減少します。だから加齢とともに菌ケアが必要なんです。
【参考文献】
Hiroaki Masuoka, Kouya Shimada, Tomoyo Kiyosue-Yasuda, Masaharu Kiyosue, Yukie Oishi, Seiji Kimura, Akio Yamada, and Kazuhiro Hirayama. Transition of the intestinal microbiota of dogs with age. Bioscience of Microbiota, Food and Health. 2017; 36: 27-31.
Hiroaki Masuoka, Kouya Shimada, Tomoyo Kiyosue-Yasuda, Masaharu Kiyosue, Yukie Oishi, Seiji Kimura, Akio Yamada, and Kazuhiro Hirayama. Transition of the intestinal microbiota of dogs with age. Bioscience of Microbiota, Food and Health. 2017; 36: 27-31.