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ペットの腸内細菌と健康~善玉菌を増やす2つの方法~


「腸内フローラ」や「腸内細菌」という言葉をよく聞くようになりました。この理由は、今までなかったスゴイ測定器(次世代シーケンサー)が世界中で使えるようになったことが大きな理由の1つです。

例えば海の中にどんなお魚がいるか知りたい時に、これまでは岸壁からエサを垂らして釣りをしてお魚が釣れた時点で「海の中にお魚がいる」という事実を知ることができました。ところが次世代シーケンサーが登場し、海水一滴で「海の中にお魚だけではなく海藻や甲殻類などどんな生物がどのくらい生息しているのか?」をサクッと知ることができるようになりました。
この次世代シーケンサーを使って研究者たちが腸内細菌について研究を始めた結果、これまでブラックボックスに入って誰も知ることができなかったことを知ることができ、世界中からたくさんの研究論文が報告されるようになったという訳です。その結果、人間(飼い主様)と同様にペットの健康と幸福も、腸の微生物(gut microbes)に大きく依存していることがわかってきました。従って、腸内環境に対する適切なケアと栄養バランスの取れた食事を与えることは、ペットの健康を維持するためにやはり重要なポイントになります。

腸内細菌の種類はヒトで500~1,000種類、約60兆個と言われる細胞数の160倍にもなる約1000兆個の微生物が腸管内に寄生しており、その寄生微生物が私たちの心身に多大なる影響を与えていることがわかってきました。犬の腸内細菌もほぼ同じくらいの数と種類があると言われています。
腸内細菌は、善玉菌(良い働きをする細菌)と悪玉菌(悪い働きをする菌)、そのどちらでもない菌(時には良い働きをして、時には悪い働きをする細菌)の3グループで構成されています。抗生物質を飲めば悪玉菌と一緒に善玉菌も攻撃され、腸内細菌のバランスは大きく変動することがこれまで明らかになっています(Stefka AT. 2014)。さらに腸内細菌のバランスが崩れることは肥満、糖尿病、大腸がん、アトピー、炎症性腸疾患などのかなりの病気と密接な関係がある(Belizário JE. 2018)こともわかってきています。

 プロバイオティクス(probiotics)の定義は「腸内フローラのバランスを改善することにより有益な作用をもたらす生きた微生物」であり、その微生物を含む食品(ヨーグルトや乳酸菌飲料)をプロバイオティクスと呼んだりもします。これらのサプリメント(乳酸菌やビフィズス菌)は、犬や猫において急性胃腸炎の予防と治療と治療、炎症性腸疾患(IBD)の治療、アレルギーの治療と予防に有用であると報告されています(Grześkowiak et al.2015)。

ヒトの腸内フローラはビフィズス菌が主役ですが、ワンちゃんではビフィズス菌は主役じゃなく乳酸桿菌が主役です。健康的なペットの腸内細菌は、その乳酸桿菌(乳酸菌)やビフィズス菌などの善玉菌が優勢です。善玉菌は食物繊維、オリゴ糖、ムチンなどのエサを食べると酢酸、酪酸、プロピオン酸という物質を作りますがこれらの物質がキーポイントです。我々がヨーグルトを飲んだり乳酸菌サプリメントを飲む理由の1つが、まさに細菌が作り出した物質である酢酸、酪酸、プロピオン酸を腸から取り入れるためなんです。これらの物質により腸内を酸性にすることによって、悪玉菌の増殖を抑えることで腸の運動を活発になれば便秘が改善するし、アレルギーを抑えたり、肥満を防止したり健康に関わることにかなり貢献してくれていることが明らかになりました。

このようにペットもヒトと同じように腸内にビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が占める割合を増やすことが重要ですが、腸内の善玉菌の割合を増やす方法には、大きく分けて2通りあります。

まず1つめは、健康に有用な作用をもたらす善玉菌である「プロバイオティクス」を直接摂取する方法です。ヒトがヨーグルトや乳酸菌飲料、納豆や漬物などを摂取するようにペットの場合は乳酸菌やビフィズス菌配合のサプリメントを摂取することは有用です。ただどの菌を飲んだらより効果があるか?はワンちゃんによって異なるというのもポイントになります。つまりお父さんもお母さんも息子も娘も同じヨーグルトが効くとは限らないということと同じです。

2つめは、腸内にもともと存在する善玉菌を増やす作用のある「プレバイオティクス」を摂取する方法です。つまり腸内細菌が食べるエサを与えるということです。野菜類・果物類・豆類などに多く含まれている食物繊維、オリゴ糖、ムチン、ケストース(三糖類)は、消化・吸収されることなく大腸まで達し、腸内にもともと存在する腸内細菌の「エサ」となります。特にケストースは悪玉菌にはエサとならず善玉菌だけのエサとなることはグットニュースです。どちらにしても食物繊維やケストースを十分にとって、腸内細菌がモリモリとエサを食べれる状態を作る事が重要です。

腸内細菌が健康的な好ましい状態であるかどうかを知るもっとも簡単な方法は、ウンチを観察することです。硬すぎず下痢ではなく適度に柔らかいバナナ状(手で持てる)のウンチがつるんと出ることが理想です。「ペットのおなかの中に共存している腸内細菌がどうしたら喜ぶか?」を考えることはペットが健康で長生きすることに繋がると信じています。

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