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1次リーグ敗退なのにパリ五輪の観衆の心をつかんだブレイキン選手、HIRO10に教わった「人生のおもしろさ」

パリを盛り上げたブレイキン

7月26日に開会式を迎え、8月11日まで行われていたパリオリンピックでは、ブレイキンが初めて開催されました。

競技開始時にはレジェンドラッパーのスヌープ・ドッグが登場、ある意味で“オリンピックらしからぬ”テイストで盛り上がったブレイキンは、プロダンスチーム、Valuence INFINITIES(バリュエンス インフィニティーズ)を有するバリュエンスのトップとしては見逃せない競技です。

もちろんリアルタイムで視聴しましたが、パリオリンピックのブレイキンでは、思ってもみなかった感動のシーンを目撃することができました。

インフィニティーズにSPダンサーとして参加してくれたHIRO10

特に注目していたのは、D.LEAGUEの23-24シーズン、ROUND.10でインフィニティーズのSPダンサーに加わってくれたHIRO10

このときはパリオリンピックの予選を控えた大事な時期であり、周囲から「なんで今D.LEAGUE?」という声もあったそうですが、ショーケースにインパクトのあるパワームーブを求めていたインフィニティーズのラブコールに応えてくれました。

結果は、Medical Concierge I'moonさんに6-0のスイープ勝利。インフィニティーズにはオリンピック強化指定選手でもあるB-BOY、TSUKKIが所属してくれていますが、HIRO10のムーブ、スキルはTSUKKIとはまたひと味違った凄みがありました。

もちろんダンススキルの細かい部分は私にはわかりませんし、オーディエンスを引き込む魅力は選手によって千差万別。個性を比べることはできませんが、HIRO10のダンスは誰もが一目見てすごい! と思える華やかさがありました。

もう一人の代表であるShigekixも、インフィニティーズ創設以前に関わっていたKOSÉ 8ROCKSのSPダンサーとしてD.LEAGUEに参戦したこともあり、馴染みのある選手(24-25シーズンからShigekixが8ROCKSのレギュラーダンサーにというニュースが! これは大きな刺激になります)。

会場を盛り上げ、オーディエンスを魅了したHIRO10のパワームーブ

余裕を持ってテレビの前で待機し、競技開始を待ったのは今回のオリンピックでは男子ブレイキンだけでした。

結果はみなさんご存知の通り。ただ1次リーグで敗退したHIRO10が本当にすごすぎました。

中国のLITHE-ING、Shigekixに惜しくも敗れ、3戦目に挑んだHIRO10は、銅メダルを獲得することになるアメリカのVICTORと対戦します。

第1ラウンドでは、片手の肘だけで回転するワンハンドエルボーエアを立て続けに行い観衆を驚きの渦に巻き込み、第2ラウンドでは高速ヘッドスピンで会場となったコンコルド広場の興奮は最高潮に達したのが遠く離れた日本のテレビ画面越しにも伝わってきました。

「人生おもしれえっす」メダルより価値のある涙

持てる技すべてを繰り出したHIRO10でしたが、ジャッジの採点はいずれもVICTORの勝利。

私も「採点なんやねん!」と思いましたが、それ以上に結果に疑問を呈したのが現地でHIRO10の超絶パワームーブを目の当たりにした観客たちでした。

勝利したVITORがHIRO10に拍手を送り早々にステージを去ると、会場はブーイングの嵐に包まれます。

ステージ上に残ったHIRO10がMCに迎えられ、称賛を受けながら泣いていました。

あの涙は心に来ました。

1次リーグ敗退が決まりメダルには手が届かず1勝もできずにパリを去ることが決まったものの、あの瞬間の主人公はまさしくHIRO10でした。

インタビューでHIRO10が口にした「人生おもしれえっす」という言葉も最高でした。

金メダルを獲ることを目標とし、勝つことが求められるオリンピックで、その試合の勝利者より、メダリストより観客の心をつかんだHIRO10は、短期的な結果ではなく、これからの人生にも大きな影響を与えるとてつもなく大きなものを手に入れたのかもしれません。誰よりもオーディエンスを魅了したHIRO10こそがブレイキンの精神をもっとも表す選手だったのかもしれないと思いました。

私がダンスに関わった原点を思い出させてくれた

男子ブレイキンのパブリック・ビューイング会場となった川崎市産業振興会館ホールでは、インフィニティーズのSEIYA、RYOGA、TOMOYA、MAKO、LÓNがショーケースを披露するなど、バリュエンスのメンバーもHIRO10とオリンピックの舞台に立つすべてのダンサーにエールを送りました。

国民的注目を集めるオリンピックでブレイキンが行われたことはインフィニティーズだけでなく、すべてのDリーガーに大きな刺激を与えてくれたと思います。

次回のロサンゼルスオリンピックではブレイキンが実施されないことは残念ですが、HIRO10、Shigekix、世界中のダンサーは、単なる競技ではないエンターテインメントも融合したブレイキン、ダンスの魅力を見せてくれました。そしてこれこそが、私がほぼ直感でD.LEAGUEのダンスチームをつくることを決断した理由なんだと再認識しました。

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