Netflix vs Disney, Google vs Microsoft+SONY vs Amazon の話-ストリーミング戦争とその先-
Volumetric Video/ホログラム専門家の小池です。
ディズニーはNetflixに勝てるのか?
今、テック業界で一番ホットな話題の一つだと思います!!
そして、先日発表されたマイクロソフトとソニーの戦略的提携のニュース。
こちらは、ゲーム版Netflix"ゲームストリーミングプラットフォーム"の争い="ゲームの歴史を変える戦い"を見据えて、手遅れになる前に対策をうって来きました。
この辺りを僕なりに起業家目線で書いていきます。今回はトピックが2つもあるので、少し内容濃い目です(^^;
もちろんXRとホログラムの話に繋がりますよ(笑)
ディズニーとNetflixの違い
大前提として、ディズニーはエンタメ企業(オールドメディア/プロダクション)、Netflixはテック企業です。ここは特筆すべき大きな違いです。
2017年8月、ディズニーがNetflixに対抗してサブスクに参入する!!と聞いた時、ディズニーには絶対に勝てない。と周りに断言していました。
例えば、新作スターウォーズのドラマシリーズを独占配信したとしても、世界中から4K映像のトラフィックが殺到した時に耐えうるインフラなんて簡単には構築出来ないでしょ?と。
テック企業としてのNetflix
Netflixはオリジナル作品に注力していると思われていますが、実は一番大事にしているのはインフラ構築とデータ解析であり、エンジニアとR&Dに猛烈に投資している会社です。(マーケティングもほぼ自社で行っています!!)
以下、シリコンバレーでの実話です。(僕の知人の部下の話です)
部下Aさんはシリコンバレーのスタートアップで15万ドルの給料をもらっていました。ある日、Netflixからお誘いが来て、上司(僕の知人)に相談し、"Netflixはシリコンバレーで一番平均給料が高いから、ふっかけて25万ドル要求したら?それで、20万ドルが落としどころかな?"とアドバイスを受けました。後日電話で25万ドル欲しいと伝えると、Netflixのリクルーターが、『そうなんですか?実は35万ドルでオファーしようとしていたんですけど』と言われ、即答でYES!!と返事したそうです。
これがシリコンバレーだ!!って話していました(笑)
(※Netflixは給料高いですけど、ベネフィット無いので、家族いる人とかにはそこまで人気かったりするみたいです。笑)
Netflixってめちゃくちゃ①スムーズに動画が再生されるじゃないですか?そして②次から次へと見ちゃうじゃないですか?
快適に動画を見続ける事が出来るのは、エンジニアリングの結晶なんです!!
Netflixは世界中に独自でCDNを構築していたり、データネイティブな組織設計と、データドリブンな意思決定を日々行っているんです。
Netflixは全米のインターネットトラフィックの1/3を占めていると言われています。
1日あたり1億2500万時間以上におよぶ動画トラフィックは、100%すべてNetflix Open Connectで配信しています。これは同時視聴のピーク時において毎秒数十テラビットものトラフィック量に相当し、この事実からもNetflix Open Connectが世界でも類を見ないほど膨大なデータに対応するネットワークだということがわかります。
YoutubeとNetflixが断トツで選ばれている理由は、エンジニアリングに投資しているから!!だと思っています。
快適に動画を見続けるっていうのは、難易度高いんです!!
そして、この領域の日本のリーディングカンパニーはAbemaTVですね。
ちなみに、5GになるとテレビにSIMが入ります(テレビのIoT化)。あと数年で視聴者にとって、地上波とネットの境目がゼロになる日が来ます(笑)
AbemaTVは海外にも試験対応したそうなので、今後の成長が非常に楽しみですね!!
Netflixのコンテンツ
Netflixのコンテンツ戦略は、ニッチの量産を一貫してきました。
実際、オリジナル作品の多くはエロ、グロ、暴力、SF、ホラーなどのサブカル=B級のオンパレードです!? Vシネっすね(笑)
Netflix史上一番見られた作品の"バードボックス"はハリウッド映画として公開していたら、マジで散々な結果(ラズベリー賞クラス)だったでしょうね(^^;
なので、ディズニーが製作している王道コンテンツとは一切カニバってないんです。(今までディズニー作品があったのも影響していると思います。最近ではコメディ、ラブコメに加え、ラテン系、黒人カルチャー、アラブ、アジア、インドなど超ローカライズした作品展開しているんです=王道では決して扱わる事がない題材です!!)
ディズニーって映画館、DVD、テレビと何度でも見れるし、何度でも見たいと思いますよね!? 世代を超えて愛される作品。人々の心に残り、その人の人生に寄り添う魔法の世界。これがエンタメの王様、ディズニーなんです!!
ディズニーにとって、基本エロ、グロ、暴力、ローカライズはNGなんです!!
皆さんは、何度も見直したNetflixオリジナル作品ってありますか?
2018年にNetflixで繰り返し視聴されたオリジナル映画ベスト3
1.「キスから始まるものがたり」(ラブコメ)
2.「好きだった君へのラブレター」(ラブコメ)
3.「ロクサーヌ、ロクサーヌ」(女性ラッパーの伝記映画)
ディズニーの戦略
ちなみに、皆さんディズニーってどれくらい大きな会社かご存知ですか?
実は、傘下にこれだけの数の会社があるんですよ(笑)
ここで注目したいのが、BAM techとHuluです。
BAMはもともとMLBのビデオストリーミング事業でした。そこをディズニーが欲しがったんです!!
ディズニーのCEO、Bob Igerはプレスリリースで「BAMTechへの投資は急速な拡張を必要としているストリーミングのインフラをわれわれにもたらす。ESPNを始めグループ全体にストリーミング能力を与えることによってビジネスのマネタイズが促進される」と説明している。
2016年8月に買収したBAM techを基盤として、2018年4月に新しいストリーミングサービスをESPN+を開始します。
一応、新規動画サービスでは最速で100万人の課金ユーザーを獲得したようです!!※2015年にNetflixに対抗して始めたDisneylifeは散々な結果です(>_<)
冒頭の僕の意見"Disneyは絶対にNetflixに勝てない"が、"面白い事になるかも??"に変わる出来事がありました。
2017年12月、突如ディスニーによる21世紀FOXの買収合意の話が出たのです。(2017年11月には交渉決裂とスクープされていました)
狙いは2つ。①FOXのコンテンツと②Hulu、そしてもちろん③ストリーミング技術です!!
①コンテンツに関しては、単純に作品の囲い込みです!!
マーベルとスターウォーズとX-メン!!ヒーロー勢揃いなんです!!
※マーベルでも一部のキャラクターの権利がFOXに渡っていたのを取り戻した形です。
ディズニーは既に次の"Marvel Cinematic Universe(MCU)"に動き出していて(2008年~のMCU"インフィニティサーガ"は映画23作品で完結済)、次は一体どれだけスケールが広がるんだよ!?ってワクワクしてます(笑)
はい、次に②Hulu。
ディズニーは新しく開始するDisney+だけでNetflixに対抗する気はありません。勝率ゼロです。それはディズニーが一番理解している所です。
2017年11月にFOXと交渉決裂した後も粘って、12月に6兆円で両社が合意。その後、コムキャストが買収に名乗りを上げ、2018年7月、8兆円でFOX買収を発表。そして、2019年4月AT&TからHuluの株式9.5%を1.6兆円、2024年4月以降にコムキャストから最低補償額275億ドル(約3兆円)で残りの株1/3を買い取る決意をしています。
Disney+は2019年11月に開始し、2年かけて世界の主要各地へ拡大予定で、2022年末には2400万人を目指すとの事です。
Netflixの契約者数は2020年末には1億7500万人に達すると予測されています。
チャートの始まり2012年時点で、2400万人を超えています(笑)
海外展開はこんな感じです。
Huluは全世界で2800万人。ボロ負けっす(笑)
なんですが、ここが面白くて、NetflixとHuluでは見られているコンテンツが全然違うんです。(※2011年のデータです)
Netflixでは映画を見ていて、HuluではTVShowを見ているんです。
ディズニーは映画をNetflixから引き上げ、Disney+に移植する予定です。
ディスニーの狙いはDisney+とESPN+とHuluのバンドルでNetflixに対抗する事。
Disney+ :ディズニー映画とオリジナルコンテンツ
ESPN+ :スポーツ
Hulu :テレビ番組とオリジナルコンテンツ
そして、先ほど言ったNetflixのお家芸のエロ、グロ、暴力、(ローカライズ)を”Huluでカバー”してくるのかなと。
③のストリーミング技術に関しては、上で説明した通り最重要且つ最優先事項ですね。
Netflixに(簡単には)勝てないけど、ケーブルテレビの変わりになる!が中期的なテーマかな~と(^^;
GoogleのStadiaについて
2018年2月、GoogleがプロジェクトネームYetiの存在を明らかにしました。
めちゃくちゃ興奮して、ゲームストリーミングプラットフォーム(クラウドゲーミング)の時代が来る!!って言っていたら、周りから結構バカにされました(←あんまり理解してくれなかったっす。涙 なので改めて日本語で。笑)
Stadiaに関しては、皆さんご存知ですね(^^;
Stadiaのポイントは下記です。一応(笑)
・クラウドで処理し、プレイ画面(動画)をストリーム配信しプレイする
・4K60fpsでプレイ→YouTubeと連携し自分のプレイを4K60fpsで配信→視聴者が飛び入り参加できる"Crowd Play"機能!!(もちろん全部クラウド処理だから、超簡単&超快適!!)
・将来的には8K 120+fpsでのプレイ&配信、数千人単位が同時に遊べるマルチプレイなどを実現予定だそです。
ゲーム市場はデカイので、そこをゼロtoワンで勝負できるのはビッグチャンスなんです!!
Stadiaの可能性
でも、Googleの真の狙いは↓ココ↓だってGoogleはテック企業だもん(笑)
①StadiaはReady Player One(VR Metaverse)への布石。
②AI用のリアルなデータ取得
①StadiaはReady Player One(VR Metaverse)への布石
常時数千人が同じゲーム(デジタル/バーチャル)空間にいるなんて、Ready Player Oneですよね!!
そんなゲーム(コミュニティ/Massively Multiplayer Online)が何十/何百とStadia上に生まれて、それを繋げてあげればそこで経済圏が生まれるんです!!="VR Metaverse"の誕生です。
"ゲームAのアイテムαとゲームBのアイテムβを交換"するとか!!
この辺りはgumiの國光さんが超〜詳しいので、ググってみて下さい(笑)
②AI用のリアルなデータ取得
数千人が同じデジタル空間で同時に会話し行動するとなると、実はとんでも無いくらいリアルなデータ取れるんですよ。ゲームは現実世界のシュミレーションでもあるので、人はこういう時喜怒哀楽の反応をし、こう会話し、個人/集団行動を取るんだなって、もう全部が全部"データ”なんです!!これはGoogle先生が今、一番力を入れている"AI"にとって重要なデータなんです。
ネット/SNSなどにアップされたデータを解析するだとか、研究所などの1箇所に人を集めて共同生活させて観察するよりも、圧倒的に効率よくデータが取れるんですよ(笑)
例えば、音声AIアシスタントの強化にすごく役立ちますよね!?
後、実はGoogleがいろいろ開発しているAIの実践の場(AIがリアルタイムでゲームのフィールドを作成するとか。笑)としても役立つので、このクラウドゲミングはAIの強化に直結するんですよ。
マイクロソフトとSonyの戦略的提携
マイクロソフトとSONYは協力して、クラウドゲーミング(ゲームストリーミングプラットフォーム)を強化し、Googleに対抗すると!!
2012年7月、SONYはクラウドゲーミング企業Gaikaiを3億8000万ドル(約310億円※当時のレート)で買収し、2015年1月PlayStation Nowをローンチ、そして、2015年4月Gaikaiの競合(2012年当時)だったOnLiveも続けて買収しました!!
2012年と今では状況は完全に異なります。各社ゲームストリーミングプラットフォームの”次”に繋がる展開があるんです。ゲーム(関連)で儲けたいだけでは無いんです!!
そして、Amazonもゲームストリーミングサービスの開始を予告しており、Twitchと連携した展開が期待されています!!(クラウドゲーミングのナレッジは無いと思うので、多分どこか買うor提携すると思います。笑)
Apple Arcadeは、情報少ないのですが、クラウドゲーミングでは無いのかな?と思っています。あくまでも月額で好き放題プレイできるだけなのかなと(^^;
ちなみに4K60fpsのWEBブラウザでのストリーミング配信技術って最先端技術です。それを、ただの動画ではなく、クラウドでゲーム処理してそれを世界中に配信し続けるとか、結構クレイジーです。
8K 120fpsを数千人規模で実現するって、2019年の技術では不可能です(笑)
次のストリーミング戦争
今回は2つのストリーミング戦争について書きました。
①動画のストリーミング戦争
②ゲームのストリーミング戦争
Google、マイクロソフト、アマゾン含め、大企業はスタートアップを買収し、ストリーミングの基盤を築き、サービスローンチします!!
GAMFAは必要な技術/領域に特化したスタートアップをM&Aし、自社IPと組み合わせてプロダクト化します。
そして、近い将来ホットになるもう一つの領域が"3Dデータ配信"です。
ARで、ARのデータをいちいち全部ダウンロードするとかあり得ないじゃないですか??3Dデータストリーミング(xリアルタイムレンダリング)って、ブレークスルーな技術なんですよ!!
っというか、この技術が無いと”リアルなXR体験は実現しない”です。
2016年に公開されたマイクロソフトのデモです。
左上の部屋のチェック柄のお兄さんを3Dキャプチャしてホログラム化(3Dアバターに合成)し、白い服の人を撮影しているカメラにホログラムをMR投影しています。(※真ん中の部屋には白い服の人しません)左下の映像が白い服の人から見たチェック柄のお兄さんの映像です。
これは3Dデータのリアルタイムストリーミングですが、基本的に3Dデータのストリーミングはハードルが高い技術です!!!↑は結構な魔法です↑
2019年現在、3Dデータはストリーミング配信のサービスはどの会社からもローンチされていません。なので、魔法の技術と表現しています!!技術的に可能ですが、実用レベルには課題があるという意味です。
そして、この魔法にトライし続けているのが僕のチームです(笑)
ちなみに、ここのポテンシャルは"ゲーム市場より断然デカイ"です。
前回はバンクーバーで資金ショートしてしましましたが、今回は東京でHolotchとして再スタートします!!
↑3DデータをWEBブラウザでストリーミング再生↑していて、実はこれ、魔法の技術なんですよ!!!
ホログラムがポイントクラウドで配信していて(メッシュ化していないので)マイクロソフトのデモように綺麗に見えないんですけど、大事なのはそこではなくて、3Dデータがストリーミング出来ている!!って言うデモです。
3Dデータ配信は、解決すべき最重要課題のひとつです!!
※ホログラム(3Dアバター)だけでなく、3Dデータ全部です。
もちろんGAMFAも少しづつ動きだしています。
ロングランで超Deep Techなスタートアップですが、世界に必要とされている技術ですので、未来を見据えて開発を続けていければなと思っています!!
P.S
この領域の専門家、研究者、技術者の方々、一緒に未来を作りませんか??
パートタイムでも、週末のみでも、アドバイスのみでも大歓迎です。
ご興味のある方々、是非お話しましょ(^^)
お気軽にツイッターにDM下さい!!
宜しくお願い致します!!
2019.5.26 Hiroki Koike