終幕ノ果テ/Sacrifice
本日ご紹介の音源はこちら。
2020年、名古屋にて産声を上げたバンド、Sacrifice。
きっと多くの人がその見た目から古き良きダークなヴィジュアル系を想像するだろうが、予想通り、というか、本作にはその想像を遥かに上回る様々なヴィジュアル系の歴史が詰め込まれている。3曲を収録。
1.「終幕ノ果テ」
イントロから襲い来る、疾走感の中に覚えるそこはかとない違和感。
不協和音や薄気味悪いコードを用いて、とにかく醸し出し続けるのは良い意味での"気味の悪さ"。聴き続けるうちにその気味の悪さがいつの間にか癖になってしまう。
走り抜けながらもブレイクで空間があったり、カッコつけるだけじゃないシャウトが入ったりベースがウネウネと這い回ったりと、とにかく妖しさに満ち溢れたスピード感のある一曲。
2.「Papaver Somniferum」
聴き慣れない単語だが、"ケシ"という植物の学名である意味を持つタイトル。
ローテンポでじわじわと侵食する進む本当の意味でのアンダーグラウンド。薬物の名称を連呼するサビは思わずニヤリとせざるを得ない。こういった手法こそがヴィジュアル系のある種の様式美でもあったり。
しゃくれるようなくどい歌唱法ですらも、古のヴィジュアル系ファンには懐かしく感じるのでは。決してシングルのタイトル曲にはなり得ないが、ヴィジュアル系のライブや音源の中では非常に大切な役割を果たしてくれる、多くのリスナーのツボをついてくるであろう一曲。
3.「廻ル、空ノ下…(NewAge ver)」
GAUZESとのカップリングCDにて、デモ音源として発表されていた楽曲の完成版。
ド頭からシャウトとツタツタしたドラムでスピード感を持って攻め立てる。ヴィジュアル系らしい狂気をアピールしながらサビでは幾重にも重なった、ボーカルの応酬が耳を蹂躙する。この気味の悪さこそが正に欲しかった!という人も少なくないはず。
ヴィジュアル系の聖地・名古屋を中心に活動を展開するSacrifice。
コテ系、名古屋系、アングラ系と色々なジャンルの姿を正しく取り入れ、今の時代の音への昇華させる。特に歴史の長い名古屋系というサブジャンルにおいて、ドロドロとしたマニアックな部分を受け継ぐバンドというのはこれまでの中でもあまり例を見ない。そういった意味では非常に稀有な存在とも言えるだろう。相当なヴィジュアル系への愛と理解がないとこの感性は産まれない。
そしてこれを聴かないとV系ファンは名乗れない…