『ボリュメトリックビデオ』について(4)企画やシーンで手法を選ぼう
<(3)のつづき>
似て非なる2つの技術の『違い』で選ぶ
前記事でほぼ完結みたいな感じではありますが、
少し選び方の方面からボリュメトリックビデオが向いている特徴を考えてみます
あとで動きをイジらないなら『ボリュメトリックビデオ』。微細な動きのリアルさは唯一無二
その演技、表情や服の動き、スポーツ選手の動きはその人ならではのものです。そういうものをCG化して活用・保存する場合は『ボリュメトリックビデオ』が良いです。さらに、他の方法よりもCG化して確認するまでの納期が短いのも良い点です。
こちらの動画を見ていただくとわかりますが
戸愚呂兄弟の現実にはありえないビジュアルでのアクションシーンの時の『顔』はボリュメトリックビデオで撮影されています。(動画ではパフォーマンス・キャプチャ、ボリュームキャプチャと言われています)
微細な表情をそのままCG素材にするためですね。
あとで動きを変更したい場合は『フォトグラメトリ』で撮って動かそう
逆にフォトグラメトリを動かすのが向いている企画を考えてみます。
フォトグラメトリの場合は『静止した』Tポーズをあとで動かしているので
服のシワなどはTポーズの時のままです。
身体のアクションに対して物理的に発生した変化が反映されないのです。
単純に言えば、
ロングスカートの人の脚にボーンをそのまま入れたら
スカートがズボンのように動いてしまいます。
(もちろん、そうならないようにアレンジするわけですが)
それが問題ない場合ももちろんあります。
デジタル・エキストラ
それが『デジタル・エキストラ』です。
画面上には大きく映らない場合は厳密には同じ顔の人が演じていてもわかりませんからそういう場合はフォトグラメトリを使ったデジタル・エキストラが有効です。
・エキストラ俳優さんの衣装や髪型を何パターンもTポーズで撮影
・場面に合わせた動きは『モーション・キャプチャ』で記録しておく
この組み合わせで少ない人数の俳優でも沢山のエキストラが作れるわけです。
映画『ゴジラ-1.0』の銀座の人々、Netflix『サンクチュアリ-聖域-』の国技館の観客などは『デジタル・エキストラ』だと説明されています
俳優のアイデンティティは守りつつ制作費を圧縮できる
ハリウッド俳優のストが大きな話題になりましたように、俳優の演技、ビジュアル、声などは俳優の存在そのもの、アイデンティティであり、俳優本人のコントロール下になければいけないものです。
そういう点を守りつつボリュメトリックビデオ、フォトグラメトリの企画、運用はなされていることが分かると思います。
2024年現在は、監督らが意図した映像を精密に作るには、ボリュメトリックビデオやフォトグラメトリを使うのが(まだ)最適ですが、
生成AIのリアリティへの進化は日進月歩ですから、近い内に見た目は実写と区別がつかないレベルになるでしょう。
それでも俳優の存在意義・存在価値を守るためにも『俳優は本人であること』がナイガシロにされることは無いでしょう。
インディ・ジョーンズでハリソン・フォード本人の顔を若返らせるような技術ならAIによる処理も進化しやすいですし
最初から存在しない『CG俳優』の活躍の場は増えていくでしょう。
実写の2D映像内の人物をCGに置き換える『Wonder Studio』の技術を使えば映画・ドラマだけでなく、
街ブラ番組でもVTuberやリアルなビジュアルのCGキャラクターをなじませることができます。
もちろん撮影現場には『中の人』が必要になりますが、
新しいビジュアルの番組が作れます。
人間じゃないコンピュータがナレーションをつとめるテレビ番組もありますから、Wonder Studioを大々的に活用した番組もきっと近々登場するでしょうし、
私にも機会があればやってみたいです。
次の記事(5)では、日本のボリュメトリックビデオ・スタジオについて整理します。ではまた