リユース業界にはデータ分析思考ってほぼないらしい・・・と業界の社長さんが危機感を持って熱くお話された メモ
リユース業界では珍しく、新しいテクノロジーを使って新しい取り組みをされる株式会社ものばんくの吉田社長のお話聴けるとのことで、1Dayセミナーに参加してきました。(2020年1月24日(金)13:00〜17:00)
今回の登壇者は以下のお二方。
株式会社メキキ 兼 株式会社ものばんく 代表取締役 吉田悟
株式会社NOVASTO CEO 佐藤秀平
ものばんく会社概要
山口県を中心に質屋や中古品買取店を6店舗展開、香港にも支店を持つ。日本最大級のブランド品業者同士のオークションである「下関交換会」を運営するほか、その落札データをもとに相場を検索することができるサービスの「モノグラフ」を展開している。資本金は9000万円で、2016年の取引高は90億円。身分証明書のみで完結する簡単な手続きや、値段が付くものなら「ナンデモ」買い取ることが強み。質屋はmono(品物)を預ける・買取(換金)するbank(銀行)でありたいとの思いからこの名前が付けられた。
吉田社長と佐藤社長との間で事前に参加者に質問をもらい、お二方が回答するという形式で進みました。
吉田社長:そもそも、みなさん日々買取にもって頂くお客様をガチで顧客と思ってます?? まあ1割未満ですよね・・・・僕らの業界はお客様ではなくモノしかみてないですよね。これをいったん受け入れることからスタートですよね! モノしかみてない俺ら・・・それを認識することからだよね。
何か課題を抱えて来店されるお客様の悩みを解決してあげられるのか?そこが重要ですよね!
今年は更にリユース業界のM&Aは加速して寡占化していくと思いますよ、もし会社を売りたいなーと思っているオーナーさんは今が一番高い価格で売るタイミングなのかもしれないです・・・・
★補足★
2019年10月にこの再編Map作成しましたが、この後にアパレルのワールドがシェアリングサービスのラクサス買収。ブランディア(デファクトスタンダード社)営業利益の黒字化が見えないため、親会社のBEENOSが完全子会社化して東証1部上場廃止。
今年は更にこの再編は加速しそうで、このセミナー参加者の経営者には日々M&Aブローカーから連絡あるそうです。
佐藤社長:いま伸びてるリユース会社ってどこだと思います??
参加者:クローザー(名古屋)さん
佐藤社長:3つかな
1つはゲオさん(セカンドストリート)。なんで伸びてるんだろう?地方の市場を着実にとってきている。
2つめはマーケットエンタープライズさん。大型なもの、なかなか買取店が手を出せない商材を取り扱っている。
3つめは、なんぼやを天下しているSOUさん。売上、営業利益をしっかり伸ばしていますよね。お客様をしっかり捉えている。お客様の体験をしっかり考えている。お客様の問題解決のアプローチとっていますよね。
佐藤社長:個人からの買取はレッドオーシャンですよね
吉田社長:「ものばんく」で一番力を入れているのは異業種との提携。
その先にいるお客様をご紹介頂くビジネスを推進。現在、
下関大丸、博多大丸、西中国信用金庫、デベロッパーさん、ハニードライ(クリーニング屋さん)
つまり、これまでマス広告使って、ものばんくをPRしてた。お客様はものばんくを選んでくれてたけど、今はなかなか難しくなってきたので、顧客接点を持っている会社と連携し、ものばんくという社名を溶かしてきて、鑑定士を前面に出す、鑑定士を派遣するという感じ。看板を捨てて他企業と組んでいく。
下関大丸との取り組みだと、月間1500万円の買取。
佐藤社長:催事はトレンドですよね。
昨年古物の法律改正されたので、クライアントに催事を進めている。
吉田社長:リユース会社各社さんもうわかっていると思うけど、これまでの延長線上に実はもう答えないんですよ。
ものばんくの催事の場合、買取とはうたわず、査定相談会という体験をしてもらうというスタンスでいる、なので買取率50%程度、でもそれでいいんだ。まずは買取体験をしたことのない人への最初のハードルを下げてあげることが重要。
佐藤社長:最初の買取体験が最悪だと二度と使ってもらえない。
質問:
企業とのアライアンスは社内のどんな人に担当させるの?
吉田社長:下関大丸さんとの提携は3年かかった、信用金庫は1年かかった。
この業界厳しくなっていく、いつか買取ゼロになると考えないといけない。
地方の百貨店、信金は新しいビジネスの種がないと生きていけないので、そういう地方の会社と提携戦略をとっていくべき。
質問
伸びている会社とそうでない企業の違い
お客様の来店を待つ時代は終わった、お客様のとこへ出向かないといけない。店舗に来店して頂くビジネスモデルは急速に厳しくなる、外への出かたはいろいろあるけど、簡単に組めるとこは、保険の代理店とかいいよね、地元の保険代理店と話をしていく方向性。なので、待ちのビジネスモデルの買取店はもう伸びない。
ネットをうまく活用している会社が伸びている。
広告的なとこをどれだけデジタルシフトできているか?
特にものばんくはGoogleマイビジネスをしっかり活用して、お客様の評価をしっかりもらうこと!!
これを継続していき、レビューを増やすことが重要!
本当にネット系は簡単なんだけど、継続することが難しい・・・
誰に担当させる? ここ本当に苦労した!
佐藤社長:先日時計のシェアリングビジネスのセミナーをやったが、参加者に、この数字が大事で、これを追いかけるというスタンスがほぼなかった。
顧客に関するデータの収集方法をもってない、データがないので当然分析できていなかった。 数字をとる仕組みとその仮説検証するという企業文化をどう作るかが、伸びている企業とそうでない企業の違い。
質問 総合リユースでどう接客・接遇する?
吉田社長:なんでもっとテクノロジーによらないんだろう???
言葉ってすごく大事、総合リユースだから接客できない、質屋だからホスピタリティあげれないというのは、自分たち自身でやらない理由を限定してしまっている。そういう言葉(総合リユース・質屋)をあえて使わないほうがいいよね。
僕の職業は質屋です、じゃなくて僕は鑑定士です そう言うことによって何か変わってくると思いますよ。
質問
買取スタッフの接客技術向上に重要なことは?
吉田社長:4年前接遇コンサルを導入した。導入のきっかけは、920万のダイヤを買い取った、それを社員となんぼやに持っていったら670万円。社員にどっちに売る?と聞いたら、なんぼやの670万円だと・・・。僕は15分で920万で査定して、なんぼやは約1時間かかったのに・・・!なんぼやの接客・接遇に負けた。それがきっかけ。そのコンサルいれた、でもね社員やめた、髪の毛の色変えるのが嫌だとか、そういう反発がすごかった。
接遇は大切なんだけどね、でも そもそもそのスタッフは買い取ることを楽しんでいるのか? 買い取る体験が楽しくなくなったら転職のタイミングだと社員に言っている、こんなものを買えたんだ!という体験がないとね。
佐藤社長:そもそも技術教育って そこ(技術)が本質じゃない
コメ兵がAI真贋を作っているのが答えですよね
あのコメ兵は技術教育じゃないって結論を持っている、やっぱりお客様と対峙をしているときにモノはそれほど重要じゃないよね
お客様がどこに満足して、満足していないかもわかってない、まず聞く!
お客様が現状、店を使う理由が何で、使わない理由が何かをはっきりさせないといけない、そこをまず知る! それが価格なら、ビジネスモデルを変えないといけないよね。
質問
データ活用を自社にどううまく落とし込むか?
吉田社長:slackで社内共有しているが、社員が今年の目標をデータドリブンでいくと宣言した、でもこれを言わせるのに4年もかかった。
この参加者の中でデータをとって分析して、施策に活かしている会社って圧倒的に少ないと思うんですよ。
リユース業界はこれをやるだけで買取増えますよ、でもやってない。
下関大丸のデータを分析すると、これまでの思い込みが違っていることに気づく、それだけでプロモーションの施策が変わってくる、リピート客に多いクーポンを与える、それだけでも全然変わってくる。そういうイメージを現場レベルでできるようにしないといけない。
日報書いてくれなかった、社長が指示しているのに・・・でもいまはちゃんと日報書いてくれるようになった、考えてくれるようになった。
本当にデータをとると想像と全然違うことに気が付きますよ!
質問
成約できなかったお客様へのアプローチは?
仮説検証をスプレッドシートにあげて、共有している。
何の理由でだめだったのかを皆で共有している、そのデータを検証していく。
DMは送ってはいけないという考えが頭の中に強くあった、でもそれは違った、4回質屋のユーザーにDM送ったけど苦情があったのは、たったの1件、送らないでね、という軽い反応だけだった。
質問
LTV-単価 X 利用頻度 単価と利用頻度 どちらを目指すべき?
佐藤社長:どっちが簡単か? 単価をあげるのは難しい、利用頻度はその頻度の状況さえわかれば、それに対するアプローチができるので、利用頻度のほうが比較的やりやすい
吉田社長:顧客接点をとにかく増やすことだと思っている
ものばんくではカフェをやっている 「よろずカフェ」
赤字です! 飲食まじでもうかんない。
1日50人近くランチくるけど
カフェというUIで買取をしている
ものランチ という施策あたった!
いらなくなったら本を1冊持ってきてくれたらランチ無料
顧客接点の取り方であり買取体験をセットにした
ZOZOの前澤さんの1億円の企画で思いついた
880円のランチに原価600円かけている
600円の原価で1000冊の本を集めるという目標
現在500冊集まった!
これって結局広告宣伝費と考えると、1000冊X600円で60万円の広告宣伝費をかけているということ
じゃあ折込チラシ60万円かけても、1000人来店こないですよね
1枚6円折込チラシで10万部配布しても、せいぜい来店するのは10人くらいでしょ、だったらものランチの方がいいですよね!
このものランチの場合、1000人の顧客接点をしっかりもてる!
1000冊集まったら、お客様が無料で読み終わった本とお店にある読みたい本と交換できるようにする、さすがにコーヒー1杯は飲むでしょ、時間ができる、そこでアプローチできるようになりますよね
そういう自分のお店にきてくれる施策を打てば利用頻度向上につながると思う
質問
10年後のリユース・質屋業界はどうなっている?
吉田社長:未来は今の延長線上、いまなにが起きている? いま鑑定のAI作っているけど、その精度の問題はあるけど、AIは進歩していくものだから、その精度がいまどうなのかというのはそれほど重要じゃないんだ。
AI鑑定はスタンダードになる、5 年もかからないと思う
今春メキキのAIは程度判定のナビをつけていく予定、宝石も色を選択していけば金額がでる仕組みも予定している。
そういう時、いま僕らが大事にしていることの何を捨てていくのか?
誰でもリユースできる時代になっていくと思う。
AIでできない鑑定と接遇スキルが重要になっていくと思う。
以上
所感
吉田社長はリユース業界の中の人の雰囲気ではなかったですが、そもそも山一証券出身だそうで、その後家業の質屋を継いだそうです。だからかもしれませんが、職人気質の質屋の社員と相当バトったんだろうなという感じを時々話の中から伺えました。
今回の話で共感できたのはリユース会社ってデータを分析して施策を打ってないので、それをやるだけでも全然違うんだということ。新しいテクノロジーをがんがん導入しないともうだめだよねってとこ、他の業界では当たり前の話だけど、職人気質のこの業界ではなかなか理解が進まないこと。
参加者はリユース会社の買取会社の方が多かったけど、その方々に向けてほぼあなた方の今のやり方もう通用しないですよって全否定しているとこが痛快だったけど、でも参加者には全然響いてなさそうだった、というかどうして良いかわかんないんだろうなと感じた数時間でした。
※いまのリユース業界って、MLBのオークランドアスレティクスにビリー・ビーンがGMに就任する時代に酷使しているなと感じた。
「重視した指標」1)出塁率 2)長打率 3)四球率
「どうでもよい無駄な施策と指標」1)バント 2)盗塁 3)エラー数
本当に知りたい指標は新しく自分で見つける必要があり、見つけられない場合施策を打てない、振り返って検証もできなくなるってこと・・・
以上