4.3. 構造をかく - 第4章 図解の応用 - 絵と文字でビジネスを加速する方法〜ビジュアル・ファシリテーションのすべて〜(抜粋)
ビジネスにおいて、利害関係者のそれぞれの立場、狙い、避けたいことを明確にすることは非常に重要です。しかし、多くの場合、これらの要素は言語化されずに曖昧なままになっています。その結果、議論が平行線をたどったり、意見が衝突したり、合意が得られなかったりすることがあります。
ビジュアル・ファシリテーションとは、会話や議論の内容をビジュアル(図やイラストなど)にすることで、コミュニケーションや問題解決を促進する手法です。この本では、ビジュアル・ファシリテーションの基礎知識と実践方法を紹介します。
目次
第1章 はじめに
1.1. 本書の背景と目的
1.2. ビジュアル・ファシリテーションとは
1.3. 本書の対象読者と構成
1.4. 学ぶ上での心構えとコツ
第2章 ビジュアル・ファシリテーションの基本
2.1. ビジュアル・ファシリテーションの種類と分類
2.2. ビジュアル・ファシリテーションの歴史と背景
2.3. プロジェクトマネジメントの基礎
第3章 図解の基本
3.1. 絵心の正しい意味を知る
3.2. 見えるモノをかく
3.3. 似顔絵をかく
3.4. 見た目をよくする
第4章 図解の応用
4.1. 関係性をかく
4.2. 時間をかく
4.3. 構造をかく
4.4. ビジョンをかく
第5章 理解と伝達
5.1. シンプルにする
5.2. 対象を理解する
5.3. 抽象度を上げ下げする
5.4. ロジカルシンキングで納得してもらう
第6章 ファシリテーション:基礎と応用
6.1. ファシリテーションとは
6.2. ファシリテーションの学び方
6.3. ファシリテーションの基本原則
6.4. ファシリテーションの実践方法
6.5. ワークショップで集団の力を引き出す
第7章 ビジュアル・ファシリテーションの事例
7.1. 事例1:コミュニティ
7.2. 事例2:ビジネス
7.3. 事例3:その他
本文
以下は、書籍「ビジュアル・ファシリテーションのすべて:図解で考える・伝える・共創するスキルを身につける」の一部です。この書籍は、ビジュアル・ファシリテーションの基礎から応用までを学ぶことができる内容になっています。この書籍を読むことで、ビジネスにおいて利害関係者の卓越した能力を引き出し、ライブドローイングなどをカンタンに学ぶ方法があることを知ることができます。
第4章 図解の応用
4.3. 構造をかく
議論の透明化で利益を得る!構造をかく方法をマスターしよう
ビジネスにおいて、利害関係者のそれぞれの立場、狙い、避けたいことを明確にすることは非常に重要です。しかし、多くの場合、これらの要素は言語化されずに曖昧なままになっています。その結果、議論が平行線をたどったり、意見が衝突したり、合意が得られなかったりすることがあります。
そこで、ビジュアル・ファシリテーションの力を借りて、これらの要素を構造として可視化することで議論の透明化を図る方法を学びましょう。構造をかくことで、以下のメリットが得られます。
利害関係者の視点や思考の流れがわかりやすくなる
議論の前提や目的が明確になる
議論の論点や課題が整理される
議論の方向性や優先順位が決めやすくなる
議論の結果や合意が記録しやすくなる
この節では、構造をかく方法の基本と応用を紹介します。基本では、構造をかくための基本図形やシンボル、レイアウトを学びます。応用では、構造をかくための具体的な手法や事例を学びます。
4.3.1. 構造をかく方法の基本
構造をかく方法の基本は、以下の3つのステップに分けられます。
構造の要素を抽出する
構造の要素を図形やシンボルに置き換える
構造の要素をレイアウトする
4.3.1.1. 構造の要素を抽出する
構造をかくためには、まず構造の要素を抽出する必要があります。構造の要素とは、構造を構成する最小単位の情報です。たとえば、利害関係者の立場、狙い、避けたいことなどが構造の要素になります。
構造の要素を抽出する方法は、以下のようなものがあります。
質問をする
利害関係者に対して、構造の要素に関する質問をすることで、その回答を抽出する方法です。たとえば、「あなたの立場は何ですか?」「あなたの狙いは何ですか?」「あなたが避けたいことは何ですか?」などの質問をすることで、構造の要素を明らかにできます。
観察する
利害関係者の行動や発言を観察することで、構造の要素を推測する方法です。たとえば、「あの人はこのプロジェクトに積極的だ」「あの人はこの提案に反対している」などの観察から、構造の要素を推測できます。
分析する
利害関係者の背景や環境を分析することで、構造の要素を導き出す方法です。たとえば、「あの人はこの部署の責任者だ」「あの人はこの業界の専門家だ」などの分析から、構造の要素を導き出すことができます。
構造の要素を抽出する際には、以下のポイントに注意しましょう。
構造の要素は、できるだけ具体的にする
構造の要素が抽象的だと、構造の全体像がわかりにくくなります。たとえば、「あの人はこのプロジェクトに興味がある」という構造の要素は、具体的にどのような興味があるのかがわかりません。そのため、「あの人はこのプロジェクトの技術的な側面に興味がある」というように、具体的にすることが望ましいです。
構造の要素は、できるだけ客観的にする
構造の要素が主観的だと、構造の信頼性が低くなります。たとえば、「あの人はこのプロジェクトにやる気がない」という構造の要素は、自分の感想に基づいている可能性があります。そのため、「あの人はこのプロジェクトに関するミーティングに出席していない」というように、客観的にすることが望ましいです。
構造の要素は、できるだけ重要なものに絞る
構造の要素が多すぎると、構造が複雑になります。たとえば、「あの人はこのプロジェクトに関するミーティングに出席していない」「あの人はこのプロジェクトに関するメールに返信していない」「あの人はこのプロジェクトに関する資料を読んでいない」という構造の要素は、すべて同じことを表しています。そのため、「あの人はこのプロジェクトに関心がない」というように、重要なものに絞ることが望ましいです。
4.3.1.2. 構造の要素を図形やシンボルに置き換える
構造の要素を抽出したら、次に構造の要素を図形やシンボルに置き換える必要があります。図形やシンボルに置き換えることで、構造の要素を視覚的に表現できます。
図形やシンボルに置き換える方法は、以下のようなものがあります。
図形を使う
構造の要素を円や四角や三角などの基本図形に置き換える方法です。たとえば、「あの人はこのプロジェクトのリーダーだ」という構造の要素を、大きな四角に置き換えることができます。
シンボルを使う
構造の要素を人や動物や植物などのシンボルに置き換える方法です。たとえば、「あの人はこのプロジェクトの技術的な側面に興味がある」という構造の要素を、メガネをかけた人のシンボルに置き換えることができます。
メタファーを使う
構造の要素を比喩的に表現する方法です。たとえば、「あの人はこのプロジェクトに関心がない」という構造の要素を、冷蔵庫の中の冷たい飲み物のシンボルに置き換えることができます。
構造の要素を図形やシンボルに置き換える際には、以下のポイントに注意しましょう。
図形やシンボルは、できるだけシンプルにする
図形やシンボルが複雑だと、構造の要素が伝わりにくくなります。たとえば、「あの人はこのプロジェクトのリーダーだ」という構造の要素を、王冠をかぶった人のシンボルに置き換えると、リーダーというよりは王様という印象を与えてしまいます。そのため、「あの人はこのプロジェクトのリーダーだ」という構造の要素を、大きな四角に置き換える方がシンプルでわかりやすいです。
図形やシンボルは、できるだけ一貫性を持たせる
図形やシンボルが一貫性がないと、構造の要素が混乱してしまいます。たとえば、「あの人はこのプロジェクトの技術的な側面に興味がある」という構造の要素を、メガネをかけた人のシンボルに置き換える場合は、他の構造の要素も人のシンボルに置き換えるべきです。もし、「あの人はこのプロジェクトに関心がない」という構造の要素を、冷蔵庫の中の冷たい飲み物のシンボルに置き換えると、人と飲み物が混在してしまいます。これにより構造の要素が一貫性を失ってしまいます。
図形やシンボルは、できるだけ共通認識のあるものにする
図形やシンボルが共通認識のないものだと、構造の要素が伝わらなくなります。たとえば、「あの人はこのプロジェクトに関するミーティングに出席していない」という構造の要素を、空の椅子のシンボルに置き換えると、構造の要素がわかりやすいです。しかし、「あの人はこのプロジェクトに関するミーティングに出席していない」という構造の要素を、カニのシンボルに置き換えると、構造の要素がわからなくなります。カニには、ミーティングに出席しないという意味はありません。
4.3.1.3. 構造の要素をレイアウトする
構造の要素を図形やシンボルに置き換えたら、次に構造の要素をレイアウトする必要があります。レイアウトすることで、構造の要素の関係性や重要度を表現できます。
構造の要素をレイアウトする方法は、以下のようなものがあります。
位置を使う
構造の要素の位置を変えることで、構造の要素の関係性や重要度を表現する方法です。たとえば、「あの人はこのプロジェクトのリーダーだ」という構造の要素を、大きな四角に置き換えます。この場合は、その四角を上に配置することで、リーダーという立場を表現できます。
大きさを使う
構造の要素の大きさを変えることで、構造の要素の関係性や重要度を表現する方法です。たとえば、「あの人はこのプロジェクトに関心がない」という構造の要素を、冷蔵庫の中の冷たい飲み物のシンボルに置き換えます。その場合は、そのシンボルを小さくすることで、関心の低さを表現できます。
色を使う
構造の要素の色を変えることで、構造の要素の関係性や重要度を表現する方法です。たとえば、「あの人はこのプロジェクトの技術的な側面に興味がある」という構造の要素を、メガネをかけた人のシンボルに置き換えます。その場合は、そのシンボルを青色にすることで、技術的な興味を表現できます。
線を使う
構造の要素を線でつなぐことで、構造の要素の関係性や重要度を表現する方法です。たとえば、「あの人はこのプロジェクトのリーダーだ」という構造の要素を、大きな四角に置き換えます。この場合は、その四角から他の構造の要素に向かって線を引くことで、リーダーという立場を表現できます。
ラベルを使う
構造の要素にラベルをつけることで、構造の要素の内容や意味を表現する方法です。たとえば、「あの人はこのプロジェクトの技術的な側面に興味がある」という構造の要素を、メガネをかけた人のシンボルに置き換えます。その場合は、そのシンボルに「技術担当」というラベルをつけることで、技術的な興味を表現できます。
以上が、構造をかく方法の基本です。次に、構造をかく方法の応用を紹介します。応用では、構造をかくための具体的な手法や事例を学びます。