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生成AI活用ガイド:プロンプト・デザインはもう不要!?最近話題の生成AIとつきあうコツとは?
ChatGPTを使って何かをさせる時。プロンプト・エンジニアリング(デザイン)が必要。面倒くさい。そう思っていませんか。
この記事では最近話題の生成AIの使いこなす上での新しいヒントを提示したいと思います。
1. はじめに
生成AIは近年目覚ましい進化を遂げており、私たちの生活や仕事に大きな変化をもたらしています。それと同時に、生成AIを効果的に活用するための「プロンプト・デザイン」の重要性も増しています。
しかし、最新のAI技術、とくに高性能な大規模言語モデル(LLM)の登場により、従来のプロンプト・デザインは不要になるのでしょうか?
この記事では、生成AIにおけるプロンプト・デザインの役割と、高性能AIを活用した自然言語指示の可能性について解説します。特殊なプロンプト・ワードと自然言語指示のメリット・デメリットを比較検討し、AI技術の進化に伴うプロンプト・デザインの未来を探ります。
さあ、あなたもこの記事を通して、生成AIを使いこなすためのヒントを手に入れましょう!
2. 生成AIとプロンプト・ワードの関係性
生成AIは、私たちが入力したテキストを元に、文章や画像、音楽などを生成する技術です。その出力内容は、私たちが与える指示(プロンプト)によって大きく左右されます。
実は、生成AIの種類やモデルによっては、特定のキーワード(プロンプト・ワード)が特別な意味を持ち、AIの挙動に影響を与える場合があります。これらのプロンプト・ワードを理解し、適切に使うことで、より効果的に生成AIを制御し、望ましいアウトプットを得ることが可能になります。
3. プロンプト・ワードの具体例と効果
なお、以下のプロンプトワードは、各生成AIサービスによっては認識しない/もしくは他とはことなる振る舞いを起こす可能性があります。その点については考慮してください。
3.1. 対話参加者 (メタ認知:役割分担)
Human / User / H
効果: ユーザーの発言を明示的に示す
説明: AIとの対話において、ユーザーの発言であることを示すために使用します。
使用例: `H: 日本の首都はどこですか?`
Assistant / AI / A / Bot
効果: AIの応答を明示的に示す
説明: AIとの対話において、AIの応答であることを示すために使用します。
使用例: `A: 日本の首都は東京です。`
System
効果: AIの全体的な役割や設定を指示する
説明: AIのペルソナや行動指針などを設定するために使用します。
使用例: `System: あなたは日本史に詳しい歴史学者です。`
3.2. 指示・タスク・目標 (メタ認知:行動指針)
Instructions / Task / Objective / Goal
効果: AIに実行させるタスクや目標を指定する
説明: AIに具体的な指示やタスクを与えるために使用します。
使用例: `Instructions: 日本の歴史について、100語以内で要約してください。`
Constraints / Rules
効果: AIの出力に制約条件を設定する
説明: 出力形式、長さ、内容などに制約を設けるために使用します。
使用例: `Constraints: 句読点を使用せず、箇条書きで回答してください。`
3.3. コンテキスト・背景情報 (メタ認知:状況把握)
Context / Background / Scenario / Situation
効果: AIに特定の状況や背景情報を提供する
説明: AIがタスクを適切に実行するために必要な情報を提供します。
使用例: `Context: あなたは江戸時代の旅行者です。`
3.4. 出力形式・構造 (メタ認知:出力制御)
Format / Output / Response
効果: 出力形式を指定する
説明: JSON、XML、表形式など、特定の形式での出力を要求します。
使用例: `Format: 回答をJSON形式で出力してください。`
Reasoning / Step-by-step / Thought process / Chain of thought
効果: AIに思考過程の出力指示をする
説明: AIに段階的な思考過程や根拠を説明させるために使用します。
使用例: `Reasoning: 問題解決の手順を説明しながら回答してください。`
3.5. 例示・学習 (メタ認知:学習促進)
Example / Sample / Demonstration
効果: Few-shot learningのための例示を提供する
説明: 少数の例を提示することで、AIに特定のタスクの学習を促します。
3.6. メタ指示 (メタ認知:補足情報)
Note / Important / Remember / Attention
効果: AIに特定の点に注意を払わせる
説明: 特定の情報に注意を向けさせたり、重要な情報を強調するために使用します。
使用例: `Important: 回答は必ず敬語で記述してください。`
3.7. 入力の性質 (メタ認知:入力識別)
Input / Question / Query / Problem
効果: 入力の種類や性質を明確に示す
説明: AIに入力内容の性質を理解させるために使用します。
使用例: `Question: あなたの名前は何ですか?`
3.8. AIの役割・特性 (メタ認知:ペルソナ設定)
Persona / Role / Character / Expertise
効果: AIに特定の役割や性格を付与する
説明: 特定の専門家やキャラクターになりきって応答させるために使用します。
使用例: `Persona: あなたは優秀なシェフです。`
3.9. 思考の明示的な指示 (メタ認知:思考誘導)
Let's think step by step / Think through this carefully / Let's work this out in a structured way
効果: AIに推論プロセスを明示的に示すように促す
説明: より論理的な思考を促し、複雑な問題解決を支援するために使用します。
使用例: `Let's think step by step: この数学の問題を解く手順を説明してください。`
3.10. 出力の根拠 (メタ認知:説明責任)
Provide the evidence for your answer / Explain your reasoning / Justify your conclusion
効果: AIに回答の根拠や理由を説明するように求める
説明: AIの回答の信頼性を高めるために、根拠や理由を明確にするように促します。
使用例: `Explain your reasoning: なぜその結論に至ったのか、具体的な根拠を示してください。`
3.11. 創造性の促進 (メタ認知:発想支援)
Be creative / Think outside the box / Come up with novel ideas
効果: AIにより創造的な発想やアイデアを求める
説明: 新しい視点や独創的なアイデアを生成するように促します。
使用例: `Be creative: この製品の新しいマーケティング戦略を提案してください。`
3.12. 役割の強調 (メタ認知:役割演技)
As an expert in [分野名] / Imagine you are a [職業名] / Pretend to be [キャラクター名]
効果: AIに特定の役割や視点に立って応答するように指示する
説明: 特定の専門家やキャラクターの視点から回答を得るために使用します。
使用例: `As an expert in marketing: 効果的なマーケティング戦略について説明してください。`
3.13. 特定の情報の要求 (メタ認知:情報焦点)
Focus on [キーワード] / Pay attention to [情報] / Don't ignore [要素]
効果: AIに特定の情報に注意を向けさせる
説明: 特定の情報に焦点を当てて、より的確な回答を得るために使用します。
使用例: `Focus on the historical background: 日本の文化について説明する際に、歴史的背景を重視してください。`
3.14. 否定的な制約 (メタ認知:制限事項)
Avoid using [単語] / Don't mention [情報] / Exclude [要素]
効果: AIに特定の単語や情報を使用しないように指示する
説明: 特定の単語や情報を含めないようにすることで、出力内容を制限します。
使用例: `Avoid using jargon: 専門用語を使わずに説明してください。`
3.15. その他 (メタ認知:応用)
特定のプログラミング言語のコードブロック (例: ```python ...```)
効果: コード生成やコード理解タスクに利用する
説明: 特定のプログラミング言語でコードを記述するように指示します。
特殊記号 (例: `###`, `---`, `***`)
効果: セクションの区切りや情報の強調に利用する
説明: テキストの構造化や視覚的な強調のために使用します。
4. 高性能AIによる自然言語指示の可能性
近年、GPT-4、PaLM、Claudeなどの高性能な大規模言語モデル(LLM)が登場し、注目を集めています。これらのAIは、従来のモデルに比べて、高い推論能力と自然言語理解能力を備えています。
そのため、従来のように特殊なプロンプト・ワードを組み合わせなくても、自然言語で記述した指示である程度AIを制御できる可能性があります。
たとえば、以前は以下のようなプロンプトを使って、AIに「日本の首都」を質問していました。
Input: 日本の首都は?
しかし、高性能なLLMでは、以下のような自然言語の質問でも、同じように回答を得ることができます。
日本の首都について教えてください。
さらに、以下のように、より複雑な質問をすることも可能です。
東京が日本の首都になったのはいつですか?その理由も教えてください。
このように、高性能なLLMは、自然言語で記述された指示を理解し、適切な回答を生成できます。
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ただし、自然言語指示にも限界はあります。AIが人間の意図を完全に理解できるわけではなく、曖昧な表現や複雑な指示は正しく解釈できない場合があります。
5. プロンプト・デザインと自然言語指示の使い分け
プロンプト・ワードを用いた指示と自然言語を用いた指示は、それぞれにメリットとデメリットがあります。
プロンプト・ワード: AIの挙動を細かく制御できる一方、特殊な知識が必要
自然言語指示: より直感的で使いやすい一方、AIの解釈に依存する部分が大きい
そのため、タスクの複雑さ、ユーザーのスキルレベル、システム処理コストなどを考慮して、最適な方法を選択する必要があります。
6. プロンプト・デザインの今後
AI技術は常に進化しており、それに伴いプロンプト・デザインも変化していくでしょう。
今後、高性能AIの普及が進むにつれて、自然言語指示の重要性が増していくと考えられます。しかし、プロンプト・ワードによる詳細な制御が必要な場面も依然として存在するでしょう。
そのため、ユーザーはAI技術の進化を常に把握し、プロンプト・デザインと自然言語指示の両方を使いこなせるよう、AI literacy(AIに関する知識や能力)を高めていく必要があります。
7. まとめ
Perplexity(モデルとしてClaude 3.5 Sonnetがデフォルト)、Google Geminiの有料版(Gemini 1.5 Pro)もしくはGoogle AI StudioでGemini 1.5 Pro以上の性能のモデルなどを使ってみてください。きっと、特別なプロンプトワードなしに、高度なタスクを処理してくれるのを目の当たりにできるでしょう。
生成AIを効果的に活用するためには、プロンプト・デザインと高性能AIの両方を理解することが重要です。
状況に応じて適切な指示方法を選択することで、生成AIの能力を最大限に引き出し、新たな可能性を切り開くことができるでしょう。
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9. 参考文献
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