個人的SFオールタイムベスト

長編部門
第一位 『火星年代記』レイ・ブラッドベリ
第二位 『人間以上』シオドア・スタージョン
第三位 『高い城の男』フィリップ・K・ディック
第四位 『キリンヤガ』マイク・レズニック
第五位 『虎よ、虎よ!』アルフレッド・ベスター
第六位 『この人を見よ』マイケル・ムアコック
第七位 『光の王』ロジャー・ゼラズニィ
第八位 『たったひとつの冴えたやりかた』ジェイムズ・ティプトリー・Jr.
第九位 『スローターハウス5』カート・ヴォネガット・ジュニア
第十位 『銀河ヒッチハイクガイド』ダグラス・アダムス

短編部門
第一位 『ジョナサンと宇宙クジラ』ロバート・F・ヤング
第二位 『一角獣・多角獣』シオドア・スタージョン
第三位 『伝道の書に捧げる薔薇』ロジャー・ゼラズニィ
第四位 『無常の月』ラリィ・ニーヴン
第五位 『九百人のお祖母さん』R・A・ラファティ

 2010年以降の作品は入っていない。
『十月一日では遅すぎる』フレッド・ホイル
を長編部門に入れるかどうか迷ったが、絶版なので入れていない。入れた場合は銀河ヒッチハイクガイドと入れ替わる。中古でなら手に入る。

 一応簡単に感想を。

・『火星年代記』レイ・ブラッドベリ
 読むとアメリカの田舎に帰りたくなる。もちろんアメリカの田舎に行ったことはない。そうした文章は愛情がなければ書けないだろう。読後のカタルシスだけで全てをぶっちぎり、一位になったと言っても過言ではない。人が読書に求めるもののひとつの極致だと思う。

・『人間以上』シオドア・スタージョン
 スタージョンを読むと必ず次の二つが頭をよぎる。「こいつ天才か?」と「こいつ天才か?」である。前者は彼の知性に対して。後者は文章の巧みさに対して。
 個人的に思うスタージョンの最高傑作はこれ。

・『高い城の男』フィリップ・K・ディック
 ディックは浮き沈みが激しい。さすがヤクをキメてラリっていただけはある。大抵はラリったような作品で、意外と凡作が多い。読むと常々「正気に戻りさえすれば名作を生み出すに違いないのに、惜しい」と思う。
 唯一正気に戻った作品がこれ。実は別人が書いたと言われても驚かない。
 ちなみにラリった方面の(ラリっていなければ絶対書けない)最高傑作は『スキャナー・ダークリー』である。

・『キリンヤガ』マイク・レズニック
 面白さの暴力。発想、テーマ、キャラクター、ドラマ、どれをとっても一級品。これがエンターテイメントだ。

・『虎よ、虎よ!』アルフレッド・ベスター
 巌窟王のSFオマージュ。それだけで面白くないわけないだろうと思う。ズルい。個人的にはあまり好きではないが、その面白さは認めざるを得ない。

・『この人を見よ』マイケル・ムアコック
 発想の時点でハードルがものすごく高いのだが、最後まで面白く書き上げ、飛び越えて見せたのが本当に偉い。最初にオチがわかっていて、終局に向かって落ちるように進んでいく珍しいタイプの小説。

・『光の王』ロジャー・ゼラズニィ
 ハードボイルド。
 面白いことは間違いないが、なぜこのラインナップの中に入っているのか自分でも疑問に思う。チープさで浮いている。よっぽど好きなんだろう。

・『たったひとつの冴えたやりかた』ジェイムズ・ティプトリー・Jr.
 何食べたらこんな風になるんでしょうね。晩年、病気の夫を撃ち殺して自殺した女だが、彼女の小説を読んでいれば違和感はない。ティプトリーならやるだろうな、と納得できる本。

・『スローターハウス5』カート・ヴォネガット・ジュニア
 ヴォネガットは文章を読めば変わった人だということがわかる。多分このドレスデン爆撃でやられてしまったんだと思う。

・『銀河ヒッチハイクガイド』ダグラス・アダムス
 よく憶えていないけどとりあえず面白かった。

・『ジョナサンと宇宙クジラ』ロバート・F・ヤング
 読んで感動して泣いた。
 以上です。

・『一角獣・多角獣』シオドア・スタージョン
 やはり天才か……。
 お気に入りの短編は『考え方』。

・『伝道の書に捧げる薔薇』ロジャー・ゼラズニィ
 最初の短編のタイトルの秀逸さだけでランキングに入るに値する。ゼラズニィと言うよりは、どちらかと言えば浅倉久志の最良訳本。

・『無常の月』ラリィ・ニーヴン
 ハードボイルドそのに。
 筆致の印象はゼラズニィに近いが、ゼラズニィよりは知性を感じる。この場合の知性とは、SF的にひねりのある作品を書くことを指しているのであって、頭の良さのことではない。ゼラズニィの作品にはそうしたひねりはなく、比較的ストレートである。

・『九百人のお祖母さん』R・A・ラファティ
 奇想天外と言えばこれ。発想の多角さ、如何に物事を多面的に見るかに重点がある。間違いなく「そんなんあり?」と思える。すごく面白い小説かと言われれば素直にハイとは言えないが、SF小説の面白さの一端ではある。もちろん小説として面白くないわけではない。

・『十月一日では遅すぎる』フレッド・ホイル
 オールタイムベストとしてこの本が挙がった試しがないのだが、目立って評価されていないことが不思議なくらいの名作だと思う。
 著者は「ビッグバン」を名付けた有名な天文学者らしい。少なくとも私にとっては、ビッグバンの呼称よりもこの小説の方が価値がある。

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