備忘録:『日銀膨張とMMT (安冨歩)』 まとめ

明治創業の日本銀行の資産は2011年のデータで約120兆円となっており、ここに至るまで100年以上かかっている。ところが、現在、2020年までの9年間に667兆円まで膨れ上がっており、これが異次元金融緩和、俗に言う黒田バズーカの成果である。

黒田バズーカによって上積みされた520兆円もの資産のうち、資本家に投入された額は意外に低くて34兆円程度であり、金融緩和が企業の内部留保にしかならないとの俗説は退けられる。勿論、それでも相当な額ではあるのだが、では、残り500兆円近くはいったい何処へ行ったのか?

実はその全てが国債を引き受けた額と考えて構わない。すなわち500兆円の国債によって同じ500兆円の現金が生じたのである。では、その現金は何処へ行ったのか?日銀に当座預金を持つのは銀行だけであり、500兆円のすべては銀行の資産となったと考えるべきである。

かくして膨らんだ銀行の資産は信用創造によってさらに膨らませることが可能なのだが、今や誰も借り手がないので、安全とされる資産運用をする以外ない。安全な資産の筆頭は国債の購入である。つまり銀行は国債を日銀に売り、そこから手に入れた資産で再び新規国債を買っている。

日銀が9年間に引き受けた500兆円近くの国債のうち、3~40兆円で株を買い支え、100兆円ほどアメリカ様の外国債を買い(!)、残り300兆円を国内に当てている。9年間の国債の残高は300兆円程度だが、このお金がどのように使われたかと言えば、赤字補填、すなわち年金や医療費がほとんどである。

実際、2011年以降、年金制度は事実上破綻しており、今や日本銀行が老人を支えている。ついでに言えばアメリカ人をも支えている。従ってアベノミクスは景気対策という嘘をついて、破綻した年金制度を支えるために国債を刷り続けてきた。これは事実上、MMTを実施していたと言い換えても差し支えない。

これを止めてソフトランディングする大前提としては、少子化を止め、人口ピラミッドを、逆転は無理でも、せめて真っ直ぐに立て直さなければならない。さもなくば移民政策に切り替える以外に道はない。ソフトランディングが無理なら年金制度を完全に終わらせ、子供の側に財政支出する方がよほど建設的である。

日銀がどこまで膨張に耐えられるかに日本の命運がかかっている。MMTに従えば何の問題もないのだが、この状態が健全なものかどうか疑わしい。国債を刷るのなら現在の年金制度を維持するためではなく、子供が産まれるごとに発行するとか、たとえ国債発行がなくとも、財政支出を子供たちの健やかな成長を支える方に振り向けた方が、どちらの世代も救われるはず。

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