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不変が繋ぐ愛着。古靴と鞄「la madri」

諸行無常。この世のすべては変化していくこと。絶対的な法則として当てはまらないものはないが、逆にファッションほど変化の速度が早い世界もあまりないだろう。

そんなファッションの世界でもトレンドの波に呑まれず変わらない不変的なアイテムはいくつもある。ビジネスではスーツを着用するなどメンズスタイルにおいて不変的な物はすぐに思い当たるのではないだろうか?

一方、レディースは?パッと思い浮かぶのはハイブランドのバッグ。セレブリティの象徴である。ただし、ほとんどの人にとっては手が届かない存在。

そんなレディースの不変的なファッションとして、古靴と鞄を提案するお店。それが「la madri」だ。90年代−00年代のGucciのホースビットやフェラガモのVARAなどアイコンモデルを取り揃えた月1回の販売会にはトレンドから一歩引いた視点をもつ大人の女性が訪れる。

うだるような暑さとなった2024年7月の販売会にて、「la madri」の背景・展望を伺った。

オーナーの白井ご夫妻

- 改めてla madriさんのコンセプトを教えてください。

不変、変わらないものを扱っています。
1960年~1990年代に誕生し今も変わらず愛され続けているヴィンテージ、定番品を通して物の本質やヴィンテージの魅力を伝えることを心掛けています。

- la madriという名称はどういった意味なんでしょうか?

これはまだ上手く伝えられる準備ができていないので、またの機会にさせてください。大した意味はないんですが、なかなか難しくて(笑)

- VCMでお話を伺ってから4ヶ月が経ちました。VCMのイベントとla madriさん単独の販売会の違いや位置付けを教えてください。

VCMでは定番であるGucciのホースビットローファーなどに絞って持っていきますが、販売会ではそれに加えて自分が提案したいことも表現しています。大規模イベントでは伝えきれないことも販売会であればしっかりご説明できるため位置付けを少し変えていますね。

- 現在は月1度の溝口(nokutica)での販売会がメインでやられているのですか?

コロナ禍ではオンラインストアも力を入れていましたが、現在はこちらの販売会でしっかりお伝えすることに力を入れています。

定番であるGucciのホースビットローファーは色違い、サイズ違いがズラリ。

- 白井さんはla madriを始める以前からアパレル関連のお仕事をされていたのですか?

20代前半から30代前半までリユース系の企業で働いていました。その後リユースのマーケティングの仕事に就き、30代後半に独立しました。

20代の頃から女性物の靴や鞄を扱い、成功体験を積み重ねて、自分の中である程度できる見通しがたった状態で独立しました。

- 具体的にどういった成功経験が今につながっていますか?

経験として、当時にブランドの名品を扱い把握できるようになったことでしょうか。 名品と呼ばれるものの評価は何十年経っても変わらないと感じています。 その当時に良いと思ったものは今も変わらず良いです。 今も過去の経験をもとに、その当時と変わらないものを選んだりしていますので、その点が今につながっているかもしれません。

- 販売会にはどういったお客様がいらっしゃるのですか?

比較的、自分と同年代から上の方が多いですね。取り扱っている靴に対して「初めまして」ではなく、「あの時は買えなかった」という思い出も込みで見ていただけている印象です。

- 靴と鞄に特化されているのは理由があるんでしょうか?

もちろん革靴や革鞄といった革ものが好きなことがありますが、お店として見たときに女性ものの革靴専門店は他では見かけませんでしたので、非常に面白いと思いました。 革靴にはサイズがあります。特にヴィンテージの場合は1点物でサイズがないことがほとんどです。 その中でサイズを揃えることができたり、他店にはない小さいサイズ、大きいサイズを用意できれば個人店でも十分専門店としての需要があるのではないかなと考えました。

- おっしゃる通り、靴はサイズ選びがシビアですし所謂ゴールデンサイズ以外の取り扱いを大手は避ける傾向にありそうですね。

扱うものは90年代、00年代の靴で1点物ですが、ワンサイズずつ取り扱っているところがうちの特徴です。来ていただくお客様が時間をかけて履き比べることができることを大切にしています。

一人一人に寄り添った提案を行う

- 不変的なものを取り扱っている中で、購入していくお客様はどういった受け止め方をされますか?

不変的なものには長く愛される理由があると思います。物自体に力があるので一度履かれた方は、またいらっしゃっていただけることが多いですね。どのジャンルでもそうだと思いますが物に力があると深くハマっていく傾向があると思います。

取り扱いを4から5ブランドに限定していますが、カラーや年代、サイズなど幅のある提案をしていることでお客様に楽しんでいただけていると思います。

- 同じGucciのホースビットローファーでも年代によってシェイプや色など異なりますしね。

うちは90年代前半から2000年代前半の靴を置いているのですが、それよりも古い年代になると靴としての機能性、例えばクッション性がなかったり、革が固くなっていることがあるため現状は取り扱っていないんです。

本当は提案として履き心地も含めて現行品も置きたい気持ちはあるんですが、そこは難しいのが悩みですね。

- 「古ければ古いほど良い」というわけではないですからね。

現行品でもクラシックなデザインが大前提にはなるので、そこをクリアできたら置いてみたいなと思いますね。

- こうして拝見すると一足一足の状態がかなり綺麗ですよね。

もちろん手入れが必要ない状態にメンテナンスして販売していますし、取り扱っている靴は女性の方でも栄養クリームなどで手入れするだけで比較的簡単にケアできるものばかりです。古いレザーやパテントレザーなどは取り扱わないようにしていますね。

- 全てレディースアイテムなんですね。

そうですね。男性で足の小さい方が買ってくださったことも何回かはありますが、この先もレディースに特化することは変わらないです。メンズと同じデザインでもレディースだからこそ惹かれることがあるんですよね。

販売会では白井氏の気分のアイテムもセレクト。メンズであればビジネス用途として定番のストレートチップ・プレーントゥも、女性に向けてハズしとして提案しているという。
90年代のメンズで流行したぽってりとしたシルエットとボリュームのあるソールのGucci ホースビットローファー。若かりし頃の白井氏は雑誌で見てあまり良くないと思っていたそうだが、20年経ってレディース向けとして見た時に新鮮に映ったとのこと。

- こうした不変的な物のちょっとしたアクセントは、トレンドに敏感な若い女性よりもある程度経験を重ねたからこそ気付く魅力かもしれませんね。

トレンドに敏感なことが若い方の良いところでもあります。経験を体系化して後から知ってもらえたらと嬉しいですよね。

それでも年齢関係なく、ファッションというよりも暮らしとか生活の中の好きな物として靴を見ていただける方はいらっしゃいますね。

- 生活の一部として靴が当たり前にあるということですよね。そして、この場所もまた良いですよね。先ほどいらっしゃったお客様も試し履きを重ねられて満足していかれましたね。

馴染みの方が多くいらっしゃってくださいますし、何かのついでに来るような場所でもないので来ていただける方に時間をかけて丁寧にご案内するには最適な場所だと思ってます。

- やはり常連さんが多いのですか?

イベントやPOP-UPに出店させていただいて、そちらで知ってくれたお客様が販売会にいらっしゃることが多いですね。オンラインで購入した方がいらっしゃることもあります。

今日の午前中にいらっしゃった方はご友人が履かれているを見て来ていただけたということで。すごく嬉しかったですね。他にも、お母様が履いているのを見て娘さんが欲しくなっていらっしゃるということもありました。

- 母親の靴を娘が欲しくなるってすごいですね。

個人的に一番嬉しかったのは、おばあちゃんから母親、母親から娘に伝わっているというお話を伺った時ですね。やはり良い物でなければそういったことってないと思いますし、家族に薦めていただけていることが本当に嬉しいです。

- 家族の薦めであれば大切に使うことが確定していますよね。

オンラインで全国のお客様と繋がれることも大変嬉しいことなんですが、リアルなイベントだからこそ、そういった声が聞けて伝わってくるのでやりがいがありますよね。

インタビューに答える白井氏

- それこそ不変の魅力ですよね。どの世代にも通ずる価値があり理解してもらえる。

リアルの場だと私達が教わることも多くあります。出店するイベントの熱気も楽しいですが、それとは別にこの静かな空間では冷静に納得して買っていただくことに私達自身、魅力を感じていますね。

- 古着やヴィンテージアイテムが高騰しています。良い物が認められることは正しいと思う反面、少し前からすると信じられないような価格になっています。価格と価値のバランスが取れているのか?と疑問に感じることがあります。

我々のような古着屋ではない人間からするとより客観的に見れる部分はあるかもしれません。女性物があまり高騰していないことは、付加価値が付き過ぎていないという意味では消費者も冷静でいられて良いかもしれませんね。ただ良い物が認められて価値が高く付くこと自体は素晴らしいことですよね。

- 靴は手入れなど販売してからの関係性も重要ですよね。購入した側も自分の足に馴染むまでは靴擦れがあったり。それが面白さかなと思います。

長い目でお客様とお付き合いしていければと思いますし、それが理想の姿ですね。

- 今後もスタンスも取り扱い商品も変わらず続けていきますか?

長く来ていただいている方に違う物を提案していくことはやっていこうと思いますが、基本的にはスタンスは変えずにやっていこうと思っています。

- 最後にこれからいらっしゃるお客様へのメッセージをお願いします。

ファッションというよりは日用品として、愛着を持っていただける靴をご用意しています。半年一年で履かなくなるような物ではないので生活の一部として、指輪や時計と近い一生物をお気軽に見にきていただき、提案させていただければと思います。


la madri
Instagram:https://www.instagram.com/lamadri_vintage/
Online Store:https://lamadri.com/

販売会開催場所(月に一度開催)
※ 次回は9月8日(日)

nokutica (ノクチカ)
⁡〒213-0033 ⁡神奈川県川崎市高津区下作延1-1-7
⁡東急田園都市線 渋谷駅から急行で14分
⁡溝の口駅より徒歩3分

店内全貌。試着時に木の床に響く革靴の音がまた良い。

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