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音が匂うカルチャーが集う。渋谷・高円寺 古着屋「LeeLoo」

東京の古着の聖地といえば高円寺。あらゆるジャンルの老舗からニューカマーまで1日2日では回りきれないほど良店が点在している。

2020年、新型コロナウィルスが蔓延し始めた年に高円寺にオープンし、瞬く間に注目を集め、東京の古着屋で最も勢いのある店の一つとなったのが「LeeLoo(リールー)」である。

2023年に渋谷に移転し、2024年には高円寺の元の場所に2店舗目を再オープン。ファッションの中心地「渋谷」と古着の中心地「高円寺」に店を構え、その勢いは止まることを知らない。

そんなLeeLoo。ヴィンテージTシャツに強みがある印象を持つ人が多いかもしれないが、扱うジャンルは実に広い。40年代のミリタリーから80-90年代のロック、エレクトロ、レイヴ、テクノ、90-00年代のハイブランドまで。既成概念に縛られないセレクトに国内外のアーティストや傾奇者が集っている。

今回はLeeLooを率いる「ホリケン」こと堀内氏に自身のルーツや出店背景、見据える未来について伺った。

- バンドTシャツなど音楽関連の古着が好きなイメージがありますが、ファッションと音楽どちらを先に好きになったんですか?

ファッションからでした。でも今は音楽の方が好きかもしれないです。高校2年生の時にモテたいなと思って雑誌CHOKiCHOKiを読んで、オススメの古着屋さんとか、オシャレな人のスナップ見て原宿を回ったのがキッカケです。

何もわからず、たまたま買ったジャケットが40年代のUS NAVYのレザージャケットG-1でした。カッコいいし、セールしてるし、良いじゃんと思って、背景を調べたら古着って面白いなと、のめり込みました。

- イメージ的に音楽からだと思ってました。当時はどういったファッションをしていたんですか?

ゴリゴリのヴィンテージです(笑)高校生の時は60年代以前のヴィンテージじゃないと嫌だったり、ミリタリーが好きでした。不謹慎ですけど血が付いてる、オイルで汚れてるとか、雑誌を読んでモテたいと思ってたのに気づいたらヤバい見た目になっていました(笑)

- 音楽はどういったキッカケで掘るようになったんですか?

古着屋さんに行くと色んなバンドの曲が流れてるじゃないですか。それをお店の人に教えてもらって。それまでは日本の音楽しか知らなかったんですけどニルヴァーナとかレッチリとかレイジを聴くようになって、当時の音楽って凄いなと感じたのがキッカケです。

- 大学生以降はどういった変遷を辿るんですか?

大学ではハイブランド好きな友達が多かったんで「やっぱり古着なんてダサい」ってなりまして(笑)1年生の頃は新品やデザイナーズ古着ばかり買ってました。それが2年生になった頃には「いや、どっちもカッコいいな」とヴィンテージからハイブランドまで両方着るようになりました。

- ご両親が元々古着が好きだったとか、ファッションや音楽が好きになる出自的な背景はあったんですか?

両親はめちゃくちゃ普通です。父親は公務員で母親は保育士なので全くファッションがわからないです。ただ父親は武道が好きで様々な武道を極めていて、世界中から武道の本を集めてるので、そういった部分は継承されているなと思いますね(笑)

- 古着屋になることを決心したのはいつですか?

高校生の時です。そのために必要な勉強や経験を考えて実行してきたのですが、なかなか上手くいかないことも多くありました。

- 古着屋での修行経験とかはあるんですか?

大学生の時にちょっとバイトしてたぐらいなんでほぼ未経験みたいなものです。大学卒業後は不動産の営業をしました。その後、新品のブランドで働き古着屋として独立しました。

- 独立当初はオンラインから始めて、その後出店されたんですか?

オンラインと主に青山の野外イベントに出店して1年後に店舗をオープンしました。はじめは全在庫がワンラック分しかなかったので、それをリュックに詰めてイベントに臨んでいました。売れた分でまた仕入れて、少しずつ在庫を増やして、また出店しイベントの来場者に少しづつ知ってもらうことを繰り返していました。

- 店名とロゴも特徴的ですよね。由来を教えてもらっていいですか?

店名はリュック・ベッソン監督の映画フィフス・エレメントの主人公Leelooから取りました。自分が好きで、字面と音の響きが良くて、キャラクターのイメージが明るく、末広がりなどのイメージで色々と考えた結果、一番ピンときました。

ロゴは知人にデザインしてもらいました。パロディは嫌でオリジナルを絶対作りたかったんです。LINEで5スクロール分ぐらい好きな音楽やカルチャー、時代、モチーフなどを箇条書きで送ったら、知人が「降りてきた」と言って出て来た一発目のデザインです。

- お店のコンセプトを教えてください。

古いものから新しいものまで全部好きなので、年代やジャンル、ブランドにこだわらず、1940年代から2020年代までカッコいいと思う物を現代だからできるMIX感でピックしています。

- ご自身はゴリゴリのヴィンテージから入って、ここまで幅広くなった要因はなんだったんですか?

好きになるとトコトン掘りたくなってしまう凝り性な上に、もの凄く飽き性なんです(笑)年齢によって、このジャンルは深く見たから他のジャンルを知りたいと、めちゃくちゃ借金をしながら色々掘ってきて、行ったり来たりしていたら全部好きになりました。もちろんまだまだわからないジャンルもあるので日々勉強中です。

- あらゆる分野を掘る中で、一本筋が通っている部分はありますか?

カルチャーが乗っかっていて、音の匂いがする服が好きですね。新品のギャルソンでもパンクっぽい香りがするとか。そういう視点で見ると今一番好きでプライベートでも買っているのがバレンシアガです。デムナ・ヴァザリアのモード・ラグジュアリーに対するストリートや音楽的な要素の混ぜ方がすごく気になってますね。

特定のジャンルに絞った方が見やすいというお客様がいらっしゃることは理解していますし、どうしてもジャンルを代表するようなお店と比較すると認知度は劣ります。ただ絞ってしまうと自分がやりたいことと変わってしまうので。伝わりづらい形でやっていることは理解していますが、今のスタイルを貫いて成功したいなと思っています。

- ホリケンさんにとっての成功とはどういう状態ですか?

世界一になりたいと思ってます。世界トップレベルと言われている日本の古着業界の中で、Tシャツであっても、アーカイヴであっても、取り扱う分野の全てにおいてLee Looが日本人にも海外の方にも一番最初に語られるような存在になりたいです。売上規模で世界一を目指す場合はやり方を変えないといけないので、カッコよい良い物が一番揃っている古着屋として世界的に認知させたいです。

各ジャンルのスペシャリストの方々と同じかそれを超えるレベルを一つの店で体現したいですね。ただ同じことをしても意味がないので、何かを生み出したいなとは常に考えて模索していますが、まだ辿り着けていないです。唯一無二のお店でありたいというのは始めた時からずっと思っています。まだまだ未熟です。

- 世界一を目指す上での今後の展望を教えてください。

国内外に向けたオンラインショップの立ち上げや、海外でのポップアップに力を入れていきたいです。ポップアップに合わせて買い付けもできたら理想的だなと考えています。

- それが世界一を目指す上での最終系ですか?

もう一発ありますが、それは内緒です(笑)

- ホリケンさんご本人の最終的なゴールはなんですか?

そこまで大金持ちになりたいわけでもなく、家族を持って好きな仕事をして不自由なく楽しく生活できたらいいですね。そこは平凡です。こう見えて普通の人間なんで(笑)

- ここからはLeeLooを象徴するアイテムをいくつかセレクトいただけますか?

当店ではTシャツをイメージされる方が多いと思いますが、今回はパンツをメインにセレクトしました。様々な年代やカルチャーをミックスしていることがお伝えできるかなと思います。

右から60年代のBIC MAC。80sのパイソン柄のカーゴパンツ、レイバーがハンドメイドでカスタムしたパンツ、ナチュラルボーンキラーズのTシャツ。ベルリンで買ったプラスチックマンのテクノのTシャツ

- パンツで幅を出されているのがすごく面白いなと感じました。入り口からレジカウンターに続くラックにパンツだけが掛かっているのも珍しいですよね。パンツへのこだわりはあるんですか?

すごくあります。実はパンツが一番好きです。トップスの方が提案しやすいのでパンツが少ない店が多いと思いますが、ウチはファッションとして楽しんでもらいたい気持ちが大きいので、パンツをたくさん置いてスタイリング全体で提案させていただいています。

例えばミリタリーのパンツとギャルソンのパンツを履き比べていただくことで、パンツが全身の雰囲気やシルエットに与える影響を実感していただけます。

- 靴のラインナップも特徴的ですよね。

靴もヴィンテージのコンバースからマルジェラやプラダまで幅広く扱っています。僕個人は最近はハイブランドの靴が好きですね。古着ファッションはどうしてもカジュアルになりがちなのでハイブランドで締めることをおすすめしています。

- 元々高円寺でオープンして渋谷に移転し、高円寺の同じ場所に二店舗目を再オープンされましたが、場所によってラインナップは変えているんでしょうか?

高円寺店を任せている店長の感性を尊重してレディースアイテムも取り扱い、ゴシック・パンク・Y2Kなどユニセックスな提案をしています。価格帯は高くても3万円、1万円以下の手に取っていただきやすいアイテムも多く取り扱っています。

高校生の頃、古着屋の方々に色々教わり楽しかった経験が一番最初に古着屋を始めたいと思ったキッカケでした。高円寺店がそんなお店になったら嬉しいです。

- いまホリケンさんご自身が一番楽しいことはなんですか?

知れば知るほど自分が知らない世界があります。買付ルートやコネクションが増え、当時のミュージシャンの方とお会いできて昔のTシャツを譲っていただいたり、マルジェラ本人と働いていた方から昔のマルジェラを仕入れることができるようになってきました。現地で当時のことを知っている人から背景を教えてもらうことが今は一番楽しいです。

最近だとシアトルのSUB POP(ニルヴァーナ, サウンドガーデン、マッドハニーなどグランジロックを代表するレーベル)の倉庫に行かせてもらってマッドハニーにのメンバーにも会うことができました。

- 他の古着屋でそこまで到達できている店ってほとんどないかと思います。ホリケンさんご本人は30歳でなぜそれができているとお考えですか?

名古屋にある「Diorama Clothing Store」「Panorama Store」のオーナー大橋さんを凄く尊敬しているのですが、大橋さんが仕事の関係を超えて現地のディーラーの方と深く関わり、ローカルの輪に入っている姿に憧れを持っていました。その影響で自分もホテルを取らずにディーラーの家に泊まったり、一緒にディズニーランドに遊びに行ったり、音楽のライブを観に行ったり。人との繋がりの部分で関係を築いています。その結果、他のお店を超えて「お前だったら譲ってやるよ」という言ってもらえて、本当に音楽が好きで古着屋やっていることが伝わり、友達や知り合いを紹介してもらえるようになりました。

- ホリケンさん目線でこれから古着屋を始めたい若い子達にアドバイスをいただけますか?

本当に自分の好きだという気持ちを突き詰めて、ビジネスに寄りすぎず、誰よりもその思いを貫いて頑張れば結果は出てくると思います。周りの意見や目線を気にせずに良いと思ったことを貫くのって難しいと思うんですよ。僕も髪が赤かったり、長髪だったり、一般的に見たら変だと思います。でも一度きりの人生なので、偉そうに言える立場ではないですが、素直に正直に生きることが幸せな人生なんじゃないかなと思います。

- 最後に今いらっしゃっているお客様と、今後いらっしゃるお客様へのメッセージをお願いします。

顧客の皆様には「本当にありがとうございます」と伝えたいです。趣味の延長のような好きなことを仕事にできているのは皆様のおかげです。

これからいらっしゃるお客様は、ハードルを感じずにご来店いただきたいです。怖い店だと思われることがありますが、凄くアットホームなお店ですし、カルチャーや音楽を知らなくても全然大丈夫です。ファッションを感覚で楽しんでいただきたいですね。


LeeLoo

渋谷店
東京都渋谷区神南1丁目13−4 Idoビル 1F-B
営業時間:13:00〜20:00 不定休
Instagram:@leeloo_shibuya

高円寺店
東京都杉並区高円寺南4丁目29-15 セトル高円寺B1
営業時間:13:00〜20:00 不定休
Instagram:@leeloo_koenji

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