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父からのプレゼント 高校生編

どうも利喜弥です。お久し振りです。
今回は趣向を変えて、宗教絡みのエピソードは
さておき、ちょっとした父の小話を。

※この記事は不快かつ、不適切な表現を含みます。

・今日で17歳の利喜弥、帰宅

という訳で、俺が高校の部活から帰ると母が俺の
誕生日なのでごちそうを作ってくれている
ところだった。姉もおめでとーって言ってくれて。
わーいわーい誕生日ー!バースデーイ!
さすがに何を食べたかは忘れちゃったけどね。
けど美味しい唐揚げを揚げる匂いは記憶にある。

やっぱり誕生日っていいなーって浸りつつ
靴下を脱いで部活で使ったものを洗濯機に放り込み
TVを観ながら豪華な夕食が出来上がるのを待った。
普段そんなに面白いと思わない番組もなんとなく
いつもより少しは楽しいものにみえた。

ウキウキ。

・父帰宅、プレゼント贈呈

母がそろそろ夕食を作り終える頃、父が
仕事を終えて帰ってきた。おかえり!

カバンを置いて、作業着の上着を脱いだところで

「利喜弥、プレゼント買ってきたぞ!」

Yeah!Hoo!誕生日っていいもんだ!
平素はあまり好きじゃない父が格好よく見えた。
マジでありがとう。

息子の誕生日を祝いつつ、ただ、少し困り顔で
こう付け加えた。

「けどなぁ、お前にiPodを買おうと思ったけど
ちょっと持ち合わせが無くてな…」

俺の高校生時分くらいのiPod。多分。

と、少し申し訳なさげに。

けど…?全然いい!何でもいい!
MP3プレイヤーであっても、はたまたMDプレイヤー
であっても全然いい。全然嬉しい。
仮にそれが違うジャンルのものでも嬉しい。
高校2年生、17歳ともなれば“プレゼントは気持ち”
というのは既に理解しているから。

本当に素直に心底そんな気持ちで、少し照れながら
「そんな事言わないでよ(笑)」とか返したと思う。

・開封…中身は…

父もまた少し照れたように俺に差し出したのは
そのプレゼントが入った、白いビニール袋。
無地で特段大きくも小さくもない、普通の。

iPodじゃないとして何の変哲もないビニール袋…

まぁこの時点から多少の推理が始まるけど
全っ然掴めない。さっぱり分からない。
けど、きっと素敵なものなのは確かだ。

両手で丁寧に受け取り、袋の中を覗き見た。


覗き見た中にあったそれは、


……、


むきエビと、スイートチリソースの瓶。


むきエビと、

スイートチリソースの瓶だった。


そう、


この値段かどうかは知らないけど

むきエビ、


実際もっとでかい瓶の

スイートチリソース。


一瞬真っ白になり、誕生日プレゼントを貰った
という100パーセントの嬉しさの中に40パーセント程度の「?」とその他諸々がカットインしてきた。

言い表しにくい40%

頭が少々混乱と混沌の最中に沈められながらも
そこはシャキッとさせて大袈裟に喜んでみた。

「…ぅおっほう!!エビーーーー!!
エビやん!!スイートチリソース!!
あっあっありがとう!!母さん見てエビ!!わー!ありがとう!!!!」


……うん、


よし、

…我ながら中々いい受け身を取ったと思う。
畳はいい音を立てていただろう。
ちなみに柔道は体育でしかやった事がない。

えび。


…父からのプレゼントはむきエビと
スイートチリソース。

うんうん、次第に頭は落ち着きはじめた。
父からのプレゼントは紛れもなくむきエビと、
スイートチリソース、だよ。そうなん…だよ。

表情をつとめてキラッとさせて父の顔を見た。
もちろん父は満足気である。

「お前エビ好きやろ、エビチリ作って
食うたらええわ!(笑)」


もう俺は挫けない。

「うんうん作る作るー!!!!」


俺が、俺でよかったと、本当に思った。
俺じゃなかったらどうだっただろう。

ひとしきり喜び、とりあえずエビは袋ごと冷蔵庫に入れてスイートチリソースは戸棚に仕舞い、
そのうち、母が作った豪華な夕食がテーブルに
揃ったので家族で囲んで舌鼓を打った。
みんな、誕生日を祝ってくれてありがとう。

・ただ、ただ素直に思ったこと

本当に申し訳ない。本当に申し訳ないけど、
どうなんだ。それ。それは。

但し、むきエビとスイートチリソース
(以下、エビチリキット)という
問題ではないんです。


「iPodを買おうと思ったけど」という前置きが
あったら内心そりゃあ
(エビチリキットかい!何でやねん!)
ってなります。誰でもなります。恐らく。

iPodじゃなければ、それに準ずる何か、か、
その他俺が好きそうな何かかと思うじゃん。

確かにエビは好き。大好き。
小さい頃から好きだったけど、
映画「フォレスト・ガンプ 一期一会」を観て
もっと好きになった
のは確か。今でも好き。
こないだなんかエビのアヒージョ食べたし。

けどさぁ…iPodというワードで期待値釣り上げて
差し出されたのはエビチリキットって。
前述通り、“プレゼントは気持ち”ってのは
理解してはいるけどそれは厳しい。
言わなきゃいいじゃない、iPodのくだり。

読んでる方のなかには、おそらく
「プレゼントを貰ってるなら文句言うな」
等と、色んな事情がおありで思う方も
いらっしゃると思いますが。
そこに関しては申し訳ない。

ただ、

当時の高校生が欲しいものランキングの
ベスト3に食い込みそうなものを匂わせながら
実際はスーパーのエビの匂いだったなんて
ぶっちゃけ超ガッカリ、じゃない?

だけどエビチリキット単体には文句はない。
仕事帰りに疲れた体を引きずって俺の喜ぶ顔を
思い浮かべてわざわざ車を停めて、
店まで行って買ってきてくれたんだ。
「持ち合わせが無くてな…」って申し訳なさそうに
俺に贈ってくれたんだ。


ただ、ただよ。


「iPodを買おうと思ったけど」は
マジで言ってほしくなかったの。
落差が凄まじ過ぎる。

そこの発言は削って、普段料理をしない父が
それを使ってエビチリを作ってくれたら
最高のプレゼントになったと思う。
巧く作れなくてもいいから、そうしてくれたら
よかったと思う。かな。
他人がくれたプレゼント、しかも父からの
プレゼントにケチを付けるのは本当に失礼千万、
良くないのは分かってる。分かってるけどね。

・気を取り直して翌日

エビチリキットを貰った翌日の夕方は家族が
揃わなかったのでここはひとつ、プラモデルを
貰ったような気持ちに切り替えて、自身の夕飯
としてエビのチリソース炒めを作るのに初めて
挑戦してみた。

オトン、俺はやるぞ!


…当時使っていたガラケーを取り出し、
スイートチリソースを使うタイプのレシピを
検索して台所に臨んだ。気合十分だ。

えーっと、なになに、エビのフリットを作るのか。
フリットかぁ、あーアレか、サクッと軽い食感の
天ぷらっぽいヤツな。
その前に玉ねぎをみじん切りにして…


出来た。


クッッッッッソ不味い。



…衣をつけて揚げてフリットを作ったつもりが
エビから衣は簡単にヌルッと抜け落ち、
玉ねぎはうまく炒められておらず、
味付けは何か、絶妙にご飯が進まない。

それもそうだ。
ただの高校2年生が作れる料理なんてたかだか
野菜炒めか焼き飯くらいのものだ。
焼き飯に関しては当たりとハズレが大きい。
揚げ物にいい感じにソースを絡めてどうこう
するなんてハードルが高過ぎる。

かくして、俺は頑張ってエビだけは全部食べて
玉ねぎはほとんど残して、バチ当たりだが残りは
捨ててしまった。

そんな俺の17歳の幕開けにまつわる
父のエピソードでした。

※この記事を読んで不快に思われた方、
誠に申し訳ございませんでした。

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