holo bleed
はじめに
遊戯王 OCG や Yu-Gi-Oh! TCG において、様々なエラーカードが存在しています。その中で個人的にお気に入りが『 holo bleed 』となります。
今回はこのエラーカードにおいて、日版・旧アジア版・北米版の特徴説明と実際のカード紹介をしていきます。今回はウルトラレアに限定しています。
(2000年代初期を厳選)
地域による印刷の違いを楽しんでもらえるような記事としています。EU版は所有していないので今回は紹介できず申し訳ございません。
holo bleed とは
〈個人的な定義〉
ホイル加工が施されたカードで見られる現象で、本来ホイルの効果が限定されるべき部分以外にも、カード全体にそのホイルの光沢や反射が広がってしまうこと。
※今回はUR·SRのホイル加工に限定しているため、
シークレット加工は対象外としています。
holo:ホログラフィックの略称
bleed:滲む 広がる
上記の加工エラーを表す言葉として、『holo』『bleed』の単語を使ったコレクター用語となります。KONAMI 公式用語ではありません。
日本語ではこの『 holo bleed 』以外にも該当するエラー加工において様々な表現が使われることがあります。いくつか例を挙げると…
・全面光沢
・貫通ホイル
・全艶
こんなところではないでしょうか。
このエラーカードをフリマサイトで探す場合、上記のようなキーワードを入れてみると新たな出会いがあるかもしれません。
ホイル加工について
holo bleed を理解する上で、遊戯王カードのウルトラレアやスーパーレアに施されている『ホイル加工』について理解を深める必要があります。
そこで一旦、補足の内容となりますが『ホイル加工』について解説していきます。
特徴について
ホイル加工(Foil Processing)は、カードの特定の部分に光沢を持たせる特殊な印刷技術です。これにより、カードのレアリティを強調し、コレクション価値を高める役割があります。この加工によって、カードを傾けた際に虹色に光り、カードに高級感を与えます。
ホイル加工の印刷工程
1. 基本のカード印刷
最初にカードのデザイン(モンスターの画像、テキスト、背景など)が通常の印刷技術を使って印刷されます。この段階では、カードはまだ光沢や特殊効果が施されていません。
2. ホイルシートの適用
ホイル加工を行うために、特殊な金属的な光沢を持つホイルシートが使用されます。このホイルシートは、カードの特定の部分にだけ光沢を出すために使用されます。
3. ホイルの転写
次に、ホイルシートをカードに重ねて、熱と圧力をかけて転写を行います。この工程により、カードに特有の光沢や輝きが現れます。
4. 仕上げとコーティング
最後に、カードの耐久性を高め、表面の光沢を保護するために、UVコーティングなどの保護層が適用されます。これにより、カードが摩耗や色褪せに強くなります。
holo bleed の原因
上記の印刷工程を踏まえて、holo bleed が起こる可能性と考えられる原因がいくつか考えられます。
1. ホイルシートの誤配置またはズレ
ホイルシートが正確に配置されなかった場合、本来ホイル加工が施されるべきでない部分にまでホログラムが広がってしまいます。これは、印刷機械のキャリブレーションの不備や、ホイルシート自体のズレによって起こることがあります。
2. 接着または圧着の不均一
ホイルシートをカードに接着するための熱圧着やUVコーティングの工程で、圧力が均一でないと、意図した部分以外にもホログラムが広がる可能性があります。特に、圧力や温度が過剰だった場合、ホイルシートが周辺部分まで溶け出してしまうことがあります。
3. コーティング層の不良
カードの表面に施される保護コーティングが均一でない、または不十分な場合、ホイル加工が正しく封じ込められず、光の反射やホログラムの効果が漏れてしまうことがあります。これにより、カード全体が光って見えるような「holo bleed」現象が発生することがあります。
4. インクや素材の不具合
カード素材や印刷に使われるインクが正しく調整されていない場合、ホイル加工の光沢が本来意図していない部分にまで影響を及ぼすことがあります。特に、インク層が十分に乾燥していなかったり、素材がホイルシートの接着に適さない場合に起こりやすいです。
5. カードの構造的欠陥
カードが複数の層から作られている場合、その層間でホイル素材が適切に封じ込められなかった場合にも holo bleed が発生する可能性があります。製造過程での欠陥や損傷によって、ホログラムが意図しない場所まで漏れ出すことがあります。
このように、holo bleed はホイル加工の工程における様々な原因で発生し得ます。通常、holo bleed は品質管理の段階で取り除かれるべき問題ですが、そのまま製品として流通してしまったものが希少なエラーカードとなっています。
ここからは完全に個人の見解を示します。
上記の画像は旧アジア版デーモンの召喚におけるholo bleed となります。
画像では分かりづらいですが、holo bleed 部分の光沢が『滲んでいる』印象があります。均一な光沢でなく、ムラがあります。
このことから、少なくともこのカードにおける holo bleed は上記の原因で挙げた《2. 接着または圧着の不均一》の可能性があるのではないかと考えています。
カード紹介
ここからは日版・旧アジア版・北米版において、おおよそ同年代の発売時期カードによる特徴の比較をまとめています。holo bleed にも光沢の強弱差が存在するため、私の所持している中でも『強個体』を厳選しました。
日版
カード名:デーモンの召喚
型番:RB-03 2期
収録ボックス:暗黒魔竜復活
レアリティ:ウルトラレア
発売年:2000年
先ず最初に紹介するカードは、
日版より2期《デーモンの召喚》となります。
holo bleed に最大の特徴であるカードの表面全体を覆う光沢が非常に美しいです。画像では鮮緑色の光沢で確認できます。
これから紹介する旧アジア・北米版に対して基準となる標準個体と位置付けします。
日版の特徴は… 《粒立った光沢》となります。
拡大した画像でないと判断できないレベルですが、カードのベースとなる厚紙の繊維が粒立って光っているという表現が合うでしょう。
ショート動画を用意したので、holo bleed による光沢の美しさをご覧ください。
旧アジア版
カード名:BLUE-EYES WHITE DRAGON
型番:SDK-001 1st Edition
収録ボックス:STARTER DECK KAIBA
レアリティ:ウルトラレア
発売年:2002年
旧アジア版で紹介するカードは、
BLUE-EYES WHITE DRAGON(青眼の白龍)です。
このカードは私が所持する SDK-001 の中で最も光沢が強い1枚となります。拡大画像では橙色の光沢で確認できます。
私の印象として、旧アジア版のホイル加工カードは holo bleed してるものが多いです。強弱の違いだけで基本的に全面光沢が見受けられます。違っていたらすみません…。
旧アジア版の特徴は… 《滑らかな光沢》です。
日版と光沢の質が異なり、粒立った粗さのような感じがなく『艶々』な印象を受けます。
これはカードの紙質の違いなのかもしれません。
明らかに日版と旧アジアでは紙質が違うことは明らかなため、holo bleed の光沢にも差が出ていると考えられます。
旧アジア版特有の艶々で水面のように流動的な光沢が堪能できるショート動画をご覧ください。
北米版①
カード名:DARK MAGICIAN
型番:SDY-006 unlimited
収録ボックス:STARTER DECK YUGI
レアリティ:ウルトラレア
発売年:2002年
北米版は2種類紹介します。1つ目のカードは
DARK MAGICIAN(ブラック・マジシャン)です。
このカードは、旧アジア版で紹介した青眼の白龍と同等の光沢トップレベル holo bleed 個体です。
holo bleed は製造された地域による光沢の印象差が大きいため一概に強さの比較はできません。しかしながら非常に強い光沢があります。
北米版の特徴は… 《日版と旧アジアの中間》です。
紙質による繊維の粗さを若干感じ取ることができますが、光沢の艶感は日版より旧アジアに近いという印象です。
日版でも旧アジア版でもない中間という表現をショート動画でご覧ください。
また、このカードに関してはホイルズレ(foil shift)を起こしているエラーカードでもあります。ホイル加工が左にズレることで僅かながら立体感が生まれています。
この① holo bleed ② foil shift 2つのエラーが1つのカードで見られる現象は私の中で衝撃でした。同じホイル加工のエラーであるため、どちらか一方しか起こり得ないと考えていたからです。
このホイル加工エラーというものは、私の単純な考えでは解明できない複雑なものなのかもしれません。非常に興味深いです。
北米版②
カード名:RELINQUISHED(サクリファイス)
型番:SDP-001 1st Edition
収録ボックス:STARTER DECK PEGASUS
レアリティ:ウルトラレア
発売年:2003年
北米版で2つ目に紹介するカードは
RELINQUISHED(サクリファイス)です。
これは北米版1つ目に紹介したブラック・マジシャンとは異なる種類の holo bleed 個体となります。
明確な違いは《光の粒子が散らばっている》ような全面光沢があるという点です。サクリファイスは儀式モンスターにより全体が暗青色であることから、《夜空に輝く満天の星》のように表現することができます。
これは旧アジアのような艶感はなく日版に近い印象がありますが、完全に別物の holo bleed だと言うことができます。
これは他のカードと比べて少し長めとなりますがショート動画で他の holo bleed との加工の違いを是非ともご覧ください。かなり分かりづらいですが、テキスト欄部分が holo bleed を確認しやすいです。
おわりに
今回の記事で紹介したカードは製造時期が近いものを厳選することで、なるべく条件を揃えて地域差の特徴を紹介してきました。
holo bleed は視覚的に通常よりも光沢があるため『美しさ』に相乗効果が得られます。各地域に特徴があり、どれも甲乙付け難いですが魅力的であることに変わりはありません。
2024年現在では、アジア版やEU版の海外版カードでは holo bleed がデフォルトになっているように感じます。もはや現代版のカードにおいて holo bleed はエラーカードではないのかもしれません。
でも、私はこの加工が大好きです!
サクリファイスのように、個性的な holo bleed がまだまだ存在するかもしれないので、読者の方で自慢のコレクションがあったら是非とも教えて下さい。
そして、印刷工程において holo bleed が起こる明確な原因をご存知の方がいれば教えて下さい。とても興味があるので知りたいです!!
ということで、今回の記事はここまでとなります。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。