なんのために服を選び、着るのか:私を構成する5つのマンガ②
一体何人が昨日の①から連続で読んでくれているのかと思うと、少なくとも知り合いでは想像する限り2人しかいないわけなんですが、昨日「3回に分けて5冊紹介します!」と言ったのですが、すみません、早速訂正。紹介の仕方を少し考え直して、4回にします。昨日と今日で1冊ずつ、③と④で3冊。タイトルだけ見て興味にひっかかりそうなものだけでも良いんでお付き合いくださいな!
今回その②では、私にとって「着飾る」ことの意味を色々と考えさせてくれて、かつ答えを見つけさせてくれた作品です
今回もコマを貼りながら紹介したかったのですが(読み手の感情もだいぶ違うと思うし)どうやら許諾がないようで…セリフの引用だけで頑張ります。今回もゴリゴリにネタバレしていきますよ〜。
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私を構成する5つのマンガその②:東村アキコ「海月姫」
このマンガについては実は過去にもnoteを書いています。
こっちは「服を大切にする選び方」という観点で書いています。もしよかったらぜひ。ちょっと似たようなことも今から書くけど。
「私を構成する」で考え始めた時どうしても幼少期に読んだものとかから思い返しがちだと思うのですが、私がこのマンガに出会ったのは、ほんの3年ほど前です。社会人になってすぐ。
すごくすごくざっくりとしたあらすじをご紹介すると、「クラゲオタク」で根暗な主人公:月海(つきみ)がファッションを心から愛する女装癖の青年:蔵之助と出会い、ファッションデザイナーを目指して(半ば無理やり蔵之助にファッションの道に引きずり込まれて)、クラゲをモチーフにした服を扱うブランドを立ち上げる、というお話。
きっかけはネットでの一部無料配信でしたが、この時期私はちょうど広告代理店に勤めていて「おしゃれも仕事のうち」「なぜヒールを履かない」「化粧薄い。直してこい。」などという男性の先輩の度重なるハラスメントに辟易としていた時期でした。
そんな時に「おしゃれしろ!」と蔵之助に言われ続ける月海の姿に半ば自分の姿を重ねながら読んでいたのですが、蔵之助が月海にかわいくなれ、と言っていた意味は私が受けていた薄っぺらい嫌がらせとは全く違うものでした。
悲しいけど世の中には、人を見た目で判断する奴がいっぱいいるんだ。(中略)だから…鎧を身に纏え‼︎
この作品、それぞれのキャラクターにとって「服とは何か」「着飾るとは何か」の考え方があって、蔵之助にとっては「服は鎧」。
着飾れば対等に戦える相手に対して見た目のせいで見下される月海たちに発した言葉です。
でも蔵之助が意図する「鎧」とは、「ばかにされないためにかわいくなろ〜」という、第三者に合わせに行った考え方ではなく、自分が生きやすいと思えるためのお守りみたいな意味だったのではないかと思います。なぜそう思ったのか、というと、後に明らかになるのですが蔵之助には舞台女優だった、離れて暮らす母親がいて、彼女に影響されてキラキラしたドレスや洋服を好むようになったという背景があり、彼自身大事にしていた母親の言葉が
やっぱり買う!高いけど一生大事に着るからいいわ
思い返せば母親のクローゼットにはそんな服ばかりだった、と蔵之助が回想するシーンが印象的でした。
私自身はこのセリフがたぶん歴代で読んだマンガのセリフの中でも一番ドキドキしたセリフでした。ハラハラの方ではなくて、高揚感のドキドキ。
だってめっちゃ素敵じゃない?あーコマ貼りたい!
それに対し、月海はブランドを立ち上げるために蔵之助に色々なところに連れまわされながらシンガポールの屋台で周りの人たちを見ながら「おしゃれとは」の答えを見つけます。(対し、という言い方をしても根本的には蔵之助と同じ考えなのではと私は感じてます)
彼女達には信じている神様がいて だから自分が着るものが決まってる
あの格好をしてることに理由がある
空っぽじゃないって言うか… そ…その服を着てる理由があって…それがすごく…な…何て言えばいいんだろう
信仰やその人の考えを表すために着る服を「おしゃれ」と感じた月海。
この2人の言葉がすごく深く印象に残っていて、なんかちょっと恥ずかしい言い方をしてしまうと“自分の考えや存在を表現するため“に着飾ることがおしゃれ、“一生大事にしたい“と思えるものこそが身につけるべきもの、という考えが私にはとても納得のいく答えでした。
それ以降、私は本当に服の選び方が変わりました。
特に買い物をするときは「一生大事に着るから良いわ」のセリフがいまだに店に入るたびに頭の中で浮かびます。そんな選び方をこれからもしたいしそんな風にものを愛せたらすごく素敵だよね。
だからこそこの間友人に「大学の時から着るものあんま変わってないよね」って言われたときは本当に嫌でした。笑
泣くぞこら全然違うわ!!
この作品は今の“フェミニズム“という考えにすごく通ずるものがあると思っていて、私自身今の世の中“フェミニスト“として生きていきたいと考えていて、その時に意識したい考え方だったり振る舞いだったりを伝える作品として、いくつかありますがこの作品は間違いなく入ってくる。
なにより、最後にファッションショーでデザイナーとして舞台に上がる際、月海は最初の頃と同じ、おさげにメガネと、飾り気のない姿で登場します。
蔵之助に頼って綺麗な服と化粧でここまできたけど、果たしてそれが自分のアイデンティティなのか。の問いに終盤の月海は自ら答えを出そうと努力しています。
正直読者としては「エーーーーせっかくあんなにかわいいのに!」とか思ってしまうのですが、月海自身が、ブランドのコンセプトのこともあり、舞台では偽らないで出ようと考えたんですよね。そしてその姿の彼女を蔵之助は「お姫様」だと言う。は????好きなんだが????(突然のIQの低下)
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以上がその②「海月姫」のご紹介でした。
あれ、暗い話しないとか言ったっけ。ちょっとそうでもなかったかもな。すまんな。
ちなみに実写版での蔵之助(映画は菅田将暉、ドラマは瀬戸康史)は最高にかわいいギャルなので必見です。
というわけで、再度になるがこちらもぜひ読んでね!前回のマンガ紹介もしたに貼ります。気が向いたらドゾ!