【アーカイブ記事(2016/10/12公開記事)】「#龍神NIPPON総括 プロローグ『南部JAPAN小論 〜功績・編成・オポジット〜』」#コラム #volleyball2 #vabotter #バレーボール
眞鍋JAPANの総括がにぎやかな一方で、南部JAPANについては、OQT終了直後にはいくつかニュースやコラム記事が出ていましたが、時間の流れとともにすっかり話題に出て来なくなりました。
と思っていた矢先、南部監督続投の可能性というニュースも出ているようです。このニュースに関する意見はここでは控えますが、忘れられかけている南部JAPANをもう一度、議論する必要があると思います。
本稿ではタイトルにもあるように、功績・編成・オポジットについて私見をあげていきたいと思います。
南部JAPANの功績
南部監督は就任時、以下のような目標を宣言しています(*1)。
2020年に東京がきまり、そこで世界のトップ4のチームと対等に戦えるように。2016年には何が何でも出場するのが大前提。
残念ながら大前提である2016年リオ五輪の出場を逃してしまった、というのが南部JAPANの結果であり、功績といえるでしょう。
おそらく、多くの人が同じように考えていたのではないかと思います。そのため、OQT以降の全日本男子チームの動向はそれほど注目されなくなったように思います。
ここからが本稿の論点の1つめで、南部JAPANはOQT敗退の時点で終わりではなく、その後のワールド・リーグの結果まで含めて評価されるべきではないでしょうか。
ワールド・リーグは現在、Group1からGroup3までの3部構成となっており、日本はその中のGroup2(2部)に属しています。南部監督就任後、この大会に3度挑んでいますが、結果は振るわず、特にOQT後の2016年大会はあやうくGroup3(3部)に降格しかけました。
ワールド・リーグの国際大会としてのグレードは低く、その結果にそれほど目くじらを立てる必要はないのでは? と思われる人もいるかもしれません。たしかに、ワールド・リーグでの細かな順位にそこまでの意義を求めることから得られるものは少ないかもしれませんが、Group1からGroup3までの中で日本は今どのあたりにいるのか? という情報は、五輪出場をかけたチームの実力を示す指標となるのではないかと思います。
以下の表1に2016年ワールド・リーグの各Groupの所属チームと、リオ・オリンピック出場の有無を示します。
大半のオリンピック出場チームはGroup1所属であることを確認できると思います。Group1に所属することが五輪に出場するための絶対条件とまではいえませんが、順当に出場することを期待できる地力が有るポジションとはいっても良いのではないしょうか。
一方、現在の日本がいるのは、Group2(2部)の最後尾付近です。残念ながらこの位置ではオリンピック出場を狙う地力が十分にあるとはいえないでしょう(OQTではホームアドバンテージもありますので、全くのノーチャンスではなかったとは思いますが……)。
このように、国際大会としてのグレードは低いかもしれませんが、日本というチームが世界の中でどのくらいの位置づけにいるのかを知るには良い指標であり機会だと思います。
したがって、この大会での成績も南部JAPANの功績として評価されるべきであるし、来年以降は、次の五輪出場が決まっている日本の位置づけを知ることができる大会になるのではないでしょうか。
チームの編成: “パナソニック・ジャパン” について
2つ目の論点、チームの編成についてです。南部JAPANのメンバーには、南部監督が直前まで指揮していたパナソニックのメンバーが多い、ということはここで指摘するまでもないことかもしれません。
しかし、以前からパナソニックの選手が全日本には多くいたのも事実で、南部監督が就任したために多く見えているのかもしれません。
そこで、確認も兼ねて、2012年のOQTから2016年のOQTとその後のワールド・リーグまでの全日本男子チームの召集メンバーの所属先を整理してみました。
以下の図1にその内訳を示します。
2015年のワールドカップの時は、サントリーとパナソニックの選手が4人ずつと並んでいますが、他の大会ではパナソニックの選手が最も多くなっていることを確認できました。前任のGary氏のメンバーは堺が最も多いので、そこから南部監督が就任することで変わったといえます。
さて、このメンバーの偏りの是非が2つ目の論点のポイントです。
これに関しては、ある程度仕方がなかったのではないかと自分は考えます。オリンピックの4年サイクルの途中からチームを指揮することになったわけですから、チーム作りをする時間は限られます。そうした中で、自分が直前まで指揮していたチームをベースとして持ってくるというのはそれほど悪い方法ではないと思います。したがって、チームの編成に関してはスタートの遅れを補うための手を打ったといえるのではないでしょうか。
ただし、この手を使うということは、途中からの就任でチームを作り上げる時間が足りなかったということを言い訳には使えないでしょう。
火急の課題としてのオポジット
最後に、3つ目の論点としてOQT後の会見での南部監督による日本のオポジットに対する言及がありました。
要約すると、
・日本のオポジットは力不足
・Vリーグでオポジットとして出場している日本人選手が少ない
・オポジットに外国人選手を使うことや、外国人選手がダメというわけではない
・出場機会を得ることができる海外のリーグやチームに出していくという方法もある
といったところでしょうか。この問題の指摘に関しては同意される人も多いと思います。
特に、出場機会を得ることのできるチームに出すという方法は良いアイデアだと思います。Jリーグでは、J1のチームが期待の若手をJ2にレンタルで貸し出して、活躍したらチームに呼び戻すという方法が当たり前のように行われていますが、このようなネットワークがバレーボールでもできることは悪いことではないと思います。ただ、企業の社員というリーグの形式では、この辺りの選手の流動性が上手く確保できるのかなという不安はあります。
一方で、この問題を考えたとき、選手のポジションを固定的に考えすぎてはいないだろうか? という気もします。
たとえば、ロンドン五輪男子決勝のロシア対ブラジル戦では、ロシアがミドルブロッカーのMuserskiy選手のポジションを、試合途中でオポジットに変更しています。このように、ポジションとは選手に割り当てられた役割であり、個人がポジションに縛られているわけではないと考えれば、現状のVプレミアリーグのオポジットのポジションの大半が外国人選手であっても、育成する方法はあるのではないかと思います。
あまり選手をポジションという固定観念にとらわれて考えないほうが良いのでは? ということです。固定観念に囚われないように、というのは南部監督自ら強調していた(*2) ことでもあります。言易行難。
おわりに
以上、南部JAPANについて3つの論点を取り上げてみました。
これらが南部JAPANのすべてではありませんが、その特徴の一端について触れることができたのではないかと思います。
(*1) 南部正司氏、全日本男子監督就任記者会見
(『バレーボールマガジン』より)
(*2)「テーマは固定観念排除」と監督 バレー男子日本代表が会見
(『公益財団法人 日本オリンピック委員会 | ニュース』より)
photo by FIVB
文責:佐藤文彦
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