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【アーカイブ記事(2016/09/04公開記事)】「#眞鍋JAPAN総括 ⑤ 〜一人のファン目線から振り返る〜」 #コラム #volleyball2 #vabotter #バレーボール
「バレーボールって面白い!」
私がバレーボールを見始めるきっかけになった試合は、今から5年前の、2011年ワールドカップ女子大会最終日の対アメリカ戦でした。
迫力あるスパイク、相手スパイクを叩き落とすブロック、相手の攻撃を乱す強いサーブ ・・・ 1つ1つのダイナミックなプレーに魅せられた私は、見事ストレート勝ちを収めた日本のファンになっていました。
《アメリカの高いブロック陣に立ち向かう江畑選手》
身長では劣る日本ではありますが、バレーを見始めたばかりの私の目には、高いブロックをものともせず、相手コートに力強くスパイクを叩き込む日本の選手たちの姿が、どの国にも負けず劣らず、とても輝いて見えたのでした。
《対アメリカ戦、勝利の瞬間》
◎ 日本を心から応援していたロンドン五輪の頃
翌年のロンドン五輪最終予選では、崖っぷちの4位通過で出場権を獲得した日本。ロシアとセルビア相手には厳しいかもしれないが、他のチームには確実に勝利して五輪に向かうだろう ・・・ と思っていたところでのこの結果。
首の皮一枚でつながった結果に安堵するとともに、このまま五輪に出場して大丈夫なのか、という不安な気持ちに襲われました。
選手を応援することしかできないもどかしさを、初めて痛感した時でもありました。
色々と不安が頭の中を駆け巡りつつも、きっと今の選手たちならやってくれるはずだ、監督もまだ策を残しているかもしれない ・・・
根拠がどこかにあったわけではありませんが、期待を胸に、ロンドン五輪開幕を待っていました。
そうして迎えたロンドン五輪。日本はその期待どおりに見事、28年ぶりの銅メダルに輝きました。
この大会で印象に残っている試合はといえば、やはり準々決勝の中国戦です。過去5大会、五輪の試合では勝てていない中国との対戦に、ひたすら祈るようにテレビを見つめていました。
この試合、2人で66得点という大活躍を見せた木村と江畑が日本を引っ張り、フルセットまでもつれ込む接戦の中、最後は大友に替わって入ったピンチサーバーの中道が、冷静にサーブを攻めてゲームセット。勝利の瞬間、思わず涙があふれ出ました。5セット全てが2点差の激戦。2時間以上にも及ぶ熱戦の後の勝利 ・・・
日本を応援することができて本当によかった、心からそう思える瞬間でした。
◎ 期待が不安、そして失望へと変わった瞬間 ・・・
ロンドン五輪後の眞鍋JAPAN二期目。
この4年間を思い返してみると、一番期待を持って見ていたのは2013年のワールドグランプリだったかもしれません。
セッター、ミドル(MB)、リベロが大幅な世代交代をし、思うような成績は出なかったものの、これからどんなチームになっていくんだろうか ・・・
この時までは、とてもワクワクした気持ちであふれていたのでした。
"グラチャン(*1)では世界のどの国もやっていない『秘策』を試します"
眞鍋監督のこの言葉(*2)で披露された「MB1」、翌年の2014年ワールドグランプリで披露された「MB1」の進化型「ハイブリッド6」。
この2つの戦術は、日本の積年の課題であった、MBの攻撃力不足を解消するための画期的な戦術として、メディアで取り上げられました。
私自身の感想は、MBのポジジョンに入るWSの選手がブロックの面で困惑している印象があったものの、攻撃面では真ん中からの攻撃がいつでも使える選択肢に入り、確かに相手ブロックを分散できていて、面白い戦術だなと思って見ていました。
これらの戦術を取り入れた日本は、2013年グラチャンで銅メダル、2014年ワールドグランプリでは銀メダルを獲得。波に乗ったかのように思われました。
世界一にチャレンジ ・・・ そう意気込んで臨んだ2014年世界バレー(*3)。監督が考案した戦術で結果を出し続けていた日本に、32年ぶりの銅メダルを獲得した前回大会以上に、世間の期待は大きかったように思います。
私自身も、もしかしたらメダルが取れるかも ・・・ と期待を寄せていたところがありました。
しかし、私の中の期待はつかの間で終わりを迎えました。
初戦のアゼルバイジャン戦での敗戦以降、この大会の試合を見ようとは思いませんでした。屈辱の7位という最終結果を知った時も、ただその結果を受け止めただけで終わりました。
今まで順調にいっていた戦術が、本気で臨んで来た世界相手には敵わなかった。これからの日本バレーはどうなるのだろうか。ロンドン五輪最終予選直後に抱いた不安とはまた別の、先の見えない不安がありました。
そして2015年。この新シーズンから眞鍋JAPANは、従来のオーダーに戻すに至ったのです。
従来のオーダーに戻した日本を見たとき、“ふりだし” に戻った失望感を感じました。
この年のワールドグランプリもワールドカップも見ましたが、「MB1」や「ハイブリッド6」でせっかく得られた攻撃面での成果を、活かせているようには全く思えなかったのです。
「結局、ベンチは何がしたかったのか?」
"背の低い日本は、世界と違ったバレーボールをしなければ勝てません"
コートの中の選手たちは、ベンチから要求されるバレースタイルに応えようと、必死に目の前の一戦一戦を戦っていました。でも、 その選手たちを支えるスタッフやコーチはどうか ・・・
世界のバレーの情勢を適切にとらえていたのか、日本のオリジナルに固執して世界の情勢から目を背けていなかったか、何より、選手の良さを最大限引き出す努力をしていたのか ・・・ ベンチとしての役割をきちんと果たしているのか、ただただ疑問だけが残っていったのです。
いつしか、全日本を一生懸命応援していた “あの頃” の自分は、私の中から姿を消しつつありました。
◎ “あの頃の気持ち” を取り戻せた海外バレーとの出会い
日本バレーへの応援の意欲が少しずつ失せていくのと同時に、海外バレーへ興味を持ち始めていた頃、トルコのアンカラで開催されるリオ五輪ヨーロッパ大陸予選女子大会を観に行こうという話が持ち上がりました。最初は冗談半分で始まった話だったのですが、気づいたら飛行機に乗り、海を渡っていました。
「これこそバレーボールだ!」
目の前のコートで繰り広げられる光景 ・・・ 高いトスを思いっきり叩き込み、打点の低いスパイクは片っ端からシャットアウトするブロック、これまた一瞬にして海外バレー、特にヨーロッパバレーの虜になっていました。
トルコでのバレー観戦以来、国内だけでなく海外のバレーにもっと目を向けよう、と思うようになりました。
世界はどんなバレーをしているのか、自分の目で、しっかりととらえられるようになろう ・・・ そして「バレーボール」はどんな競技なのか、「バレーボール」を知ることを大切にしよう、そう思ったのです。
◎ 前回と「違う立ち位置」から見ることになったリオ五輪
リオ五輪、日本は守備とチームワークを重視した(*4)メンバーで臨みます。眞鍋監督は「ロンドン以上のメダルを目指す」と語っていましたが、守りに入った今の日本にメダルは無理だろう、はっきり言って私はそう考えていました。
案の定、結果は準々決勝敗退、5位タイという成績で幕を閉じました。
リオ五輪の結果を受け、バレーボールの世界の情勢と日本の情勢が、いかにかけ離れているかということが、メディアでも取り上げられるようになった印象を抱きました。体格差で負けているから、それ以外のところで勝負しよう ・・・ それだけでは勝てない時代になっていることに、メディアも、そしてファンも ・・・ 少しずつ気付きつつあるのかもしれません。
◎「一ファン目線から見た」日本のバレーへの率直な思い
ロンドン五輪後、「世界と同じことをしていては勝てないから」と様々な戦術を試してきた日本ですが、どの戦術においてもその根底には「速さ」の追求が置かれていた(*5)ように思います。身長の低い日本の選手のスパイクは、海外勢の高いブロックの前にシャットアウトされることが多く、それをどうにか減らすためにベンチがこだわったのが、トスのスピードを上げて、ブロックをかわすことでした。
なんともセッター出身の監督らしい考え方です。
ただ、結果として、その「速さ」をもってしても、海外勢の高いブロックの前に太刀打ちすることはできませんでした。それはなぜか ――
「速さ」を求めた代償として、トスには「低さ」が伴いました。
その「低く速いトス」の前では、日本を代表する優秀なアタッカー陣であっても、各人の持ち味をなかなか発揮することが出来ません。監督の求める「理想のトス」を上げたとしても、アタッカーは打つコースがなくなって強打することができず、逃げのフェイントや苦し紛れのプッシュでしのぐ ・・・ 相手はそれをチャンスボールにして自チームの得点につなげていく、そんな光景を幾度となく目にしてきました。
しかし、日本はあきらめることなく「速さ」にこだわるバレーを展開していきます。
"トスが合わないのは、コンビを合わせる時間が少ないから ・・・ "
ベンチがそう言い訳をして同じ過ちを繰り返す一方で、いつも責任を負わされる選手たち。
そしていつしか、自分がバレーを見始めた “あの頃” の力強いバレーは、見られなくなっていました。
いよいよ4年後は東京五輪です。4年後への戦いはもう始まっています。日本のバレー界は、今ある課題をどのようにとらえ、解決していくのでしょうか。
4年後の東京で、バレーボールを見始めた “あの頃” のように、また日本を応援できるだろうか ・・・ 。その答えは、日本のバレー界の未来に託されています。
(*1) バレーボール「ワールドグランドチャンピオンズカップ」の日本国内での通称・略称
(*2)【女子バレー】新戦術MB1を採用した眞鍋監督、本当の狙い(『スポルティーバ』より)
(*3) バレーボール「世界選手権」の日本国内での通称
(*4) 女子バレー・集大成のリオ五輪 眞鍋監督「チームワークで金メダルに挑戦」(『THE PAGE』より)
(*5) 「既成概念を捨て、世界一を目指す(眞鍋政義監督)」(『バレーボールマガジン』より)
photo by FIVB
文責:Masayo Iwabuchi
2011年ワールドカップ女子大会のテレビ観戦をきっかけに、シニアの国内および国際大会を中心に観戦。
現在はイタリア女子やアメリカ男子を応援中。
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