見出し画像

[導入事例] - 「大病院の各科で働く麻酔科医を“声”でつなぐ」埼玉医科大学総合医療センター麻酔科医が届ける『たまらじ』

病床数1053床、1日の外来患者数約1600名、あらゆる診療科が揃う“スーパー”総合病院の一つである埼玉医科大学総合医療センターの麻酔科では、Voicyのチャンネルを社内向けに活用する「声の社内報」としてサービスを利用し、約40人の麻酔科医師に向けて『たまらじ』を配信しています。麻酔科医に向けて「声」を活用した情報発信を始めたきっかけやねらいについて、発案者でパーソナリティを務める麻酔科医の松田祐典さんと田澤和雅さんに聞きました。


[サマリ]忙しい麻酔科医のコミュニケーションを活性化し、サポートし合う文化を強化

【導入背景】
・広い病院の各科で仕事をするため、普段なかなか顔を合わせることのない麻酔科医の間の、コミュニケーションを円滑にしたい
・もともと「声の力」を実感していたVoicyリスナーの松田さんが「声の社内報」を知り、導入を提案
【活用方法】
・3人の麻酔科医がパーソナリティ。特に担当は決めず「気付いた人が発信する」形でほぼ毎日配信
・2023年4月末から8月頭までの3カ月余りで10分程度の番組100本以上を配信
・研究論文の探し方、海外の学会報告、日常業務の様子やプライベートの話題など、内容は各パーソナリティが自由に決めている
【導入後の変化】
・新任の医師、若手医師への教育チャネルの一環に。専門書プレゼントの応募ページへのリンクをVoicyの『たまらじ』ページに貼るなど、聞くことを促す工夫も
・人となりを知ってもらい、話題を提供することで、リアルでの交流を活性化。普段顔を合わせる機会が少ない医師同士が、サポートし合う文化を醸成

[事業紹介]埼玉医科大学総合医療センター 麻酔科

麻酔科医師数 約40名
病院Webサイト:http://www.kawagoe.saitama-med.ac.jp/
麻酔科Webサイト:https://www.masuika-smc.com/

埼玉県全体の医療の要として機能している。高度救命救急センター、総合周産期母子医療センター、ドクターヘリ基地病院を合わせ持つ救急医療に特化した総合病院。特に小児集中治療室(PICU)まで兼ね備えているのは関東唯一。麻酔科は、「手術室の全身麻酔管理」「集中治療」「ペインクリニック」「産科麻酔」の4本柱を中心とした科で形成されている。

お話を伺った担当者

埼玉医科大学総合医療センター麻酔科
准教授産科麻酔科・診療部長 松田祐典さん
医師 田澤和雅さん


[導入背景]広い病院の各科で働く麻酔科医をつなぎたい

—— 埼玉医科大学総合医療センターの麻酔科では、2023年4月末から、社内Voicyを活用して『たまらじ』を配信されています。始めたきっかけを教えてください。

松田:僕はもともとVoicyリスナーで、緒方さん(Voicy代表の緒方憲太郎)の番組を聞いているんです。そこで「声の社内報」が紹介されていて、すぐに「やってみたい」と思いました。麻酔科の会議で提案したところOKが出たので、Voicyに問い合わせをして1週間後くらいには始めました。

—— もともと、科内のコミュニケーションについて課題感を持っていたのですか?

松田:「もっとコミュニケーションを円滑にしたい」という思いは持っていました

麻酔科は、昔は20名強だったのが人数が増え、今は研修医も含めると約40人になっています。世代も広がって、若い人も増えています。

診療内容も広がって、手術室の麻酔管理だけでなく、集中治療室や、産科麻酔、ペインクリニックと、チームが複数に分かれるようになると、一堂に会してコミュニケーションをすることが難しくなってきました。もちろん、月に1回全員が集まる会議はありますが、それだけでは少ないように感じていました。

大きな病院ですから、それぞれが別の場所で仕事をしていると、1週間以上会わないこともざらです。メーリングリストで意見交換をしたりはしていますが、やはり手間はかかるので、どうしても仕事の話が中心になり、気軽な相談や雑談は難しい。

声なら、発信する方も聞く方も楽ですし、親しみも感じられます。うちの病院は車で通勤する人も多いので、通勤途中に聞けるのもいいと思いました。

声で発信することでそこにコミュニティができ、コミュニティ内のつながりが強くなる様子は、元々Voicyを聞いていたので理解しており、「声はいいな」と思っていたんです。「声の社内報」の話を聞いて、そうした「声による発信の良さ」と「科内のコミュニケーション活性化のニーズ」の2つがうまくマッチしました。


[活用方法]学会報告から宿直時の食事メニューまで、テーマは幅広い

—— パーソナリティは松田さん、田澤さん、野口翔平さんの3名です。どういった経緯でこの3人になったのでしょうか。

松田:「声の社内報」をやることが決まった会議で、「誰かやりたい人はいますか?」と聞いたら、2人が手を挙げてくれたんです。田澤先生は、よくメーリングリストにも投稿していて、伝えたい熱い思いがあるタイプ。野口先生は、普段SNSで情報発信をしているので、慣れていたのだと思います。

—— 情報発信の重要性をよく理解していて、発信にも慣れているお医者さんというのは、それほど多くないようにも思います。

松田:そうかもしれませんね。でも、僕たちは普段、周産期医療に携わっていて、妊婦さんに接していると、みなさんよくインスタグラムなどをご覧になっているので、「患者さんに役立つ情報を、どこに、どうやって発信するといいか」を考えることも多いのです。

—— 今年4月末から、ほぼ毎日発信されているとのことですが、分担はどうしていますか。

松田:いつ、誰が担当するかといったことは、まったく決めていないんです。なんとなく「昨日は彼がやったから、今日は僕かな」といった感じで、気付いた人がやっているので、たまに1日抜けたりもします。

番組の内容も、予定を立てたり相談したりはしておらず、それぞれが好きなように話しています。田澤先生は比較的教育的な内容を発信していて、野口先生はかなりざっくばらんな話が多いです。僕はその中間かな。

—— 「教育的な内容」「ざっくばらんな話」というのは、具体的にはどのようなものでしょうか。

松田:研究論文の探し方、さまざまな関連ツールの使い方や、海外の学会報告などです。

朝、集まって勉強会をやったりすることもあるのですが、なかなか集まるのは難しい。動画で配信することも考えましたが、やはり収録や編集にとても手間がかかります。関連のスライドはメールなどで送っておいて、説明を音声で聞くようにすれば、発信する方も楽ですし、情報の受け手も、好きな時に聞きながら資料を見たりもできて便利です。

ざっくばらんな話の方は、野口先生が得意なのですが、この間は「当直の時に食べるご飯のアレンジ」を紹介していました。当直でみんながよく注文する定食屋さんがあるのですが、そのメニューに「韓国の○○というゴマ油をかけるとおいしい。ちなみにこの○○は、バニラアイスにかけてもおいしい」などの話をしていました。

みなさん、病院では忙しそうにしている姿しか見ないので、時々こうした“ほっこりした話”が入ると、その人の人となりが見えて、親しみも持てると思います。

田澤:僕は薬の必要量の計算方法など、「知ってはいるけれど『おさらい』をしておきたいこと」などを話すこともありますし、仕事で感じたことや、「この間、○○先生と仕事で一緒になったとき、こんな対応をしてくれて助かりました。ありがとう」といったエピソードを話したりもしています。

また、僕はここの麻酔科以外にも、スポーツドクターの仕事もしているので、その話をしたりもします。そういえば少し前に、羽田空港の検疫所の担当医に入っていたときに、たまたま松田先生が海外の学会に出席した帰りの機内で病人の対応をして、その病人を僕が引き継いだことがありましたね。そんな話もしました。

ここの病院(埼玉医科大学総合医療センター)以外の「外の顔」も見せられるといいのではないかと思って、意識して話すようにしています。

—— 『たまらじ』で発信するようになって、自分自身に変化はありましたか。

田澤:言葉にして話そうとすると、自分の頭の中が整理される感覚はあります。また、普段仕事をしながら、「これは伝えたいな。どう伝えたら伝わるんだろう」と意識するようになりました。

ですから、もっと発信する側の人が増えるといいと思います。発信することによるメリットもあるので。

[導入後の変化]コミュニケーションが活性化。もっとユーザーも用途も広げたい

—— 『たまらじ』を始めてから、麻酔科の中で何か変化は感じられますか。

田澤:コロナ禍で、飲み会を含め、病院の外でみんなで集まったりする機会が減っていたのですが、コミュニケーションが活性化されたような気がしますね。特に、入って日が浅い先生や若手の先生には、話しかけるきっかけになっているようです。「(『たまらじ』を)聞いています」と声を掛けられることも出てきました。ちょっとした雑談のきっかけにもなりますし、何か聞きたいことがある時に話しかけたりする際の敷居を下げることにもつながっていると思います。

松田:ここの麻酔科は、他病院に比べても規模が大きいですが、人数の割には顔の見える関係があるんです。元々、教育熱心な文化も根付いています。

田澤:仲がいいですよね。サポートし合う文化や、カバーし合う関係がありますし。『たまらじ』は、それを強化するような効果があるんじゃないかと思います。

—— 今後、どのように活用したいと考えていますか?

松田:聞く人が固定してきているようなので、もっとたくさんの人に聞いてほしいですね。

田澤:看護師さんにも展開できるといいかもしれません。

松田:話し手も広げたいですね。まだ始めて3カ月ですが、聞いているうちに「やってみたい」という人がもっと出てくるのではないでしょうか。

新しい先生が入局されるときに、何本か聞いてみてもらうのもいいと思います。声だと、より「生」な職場の雰囲気が伝わると思いますし。

田澤:教育にも活用できるといいですね。対面だけ、テキストだけ、音声だけ、ということでなく、いろいろ組み合わせるとよさそう。実習や研修の振り返りを『たまらじ』で話してもらうのもいいかもしれません。文章だと手間がかかりますし、動画で顔出しだと抵抗がある人でも、声だけなら気軽に参加してもらえそうです。

Voicyを声の社内報として検討中の企業の方へ:幅広い「声の可能性」、もっと広まってほしい

—— 声の社内報を検討している医療機関の方に向けたメッセージはありますか。

田澤:声の可能性は本当に幅広いので、やってみて損はないと言いたいですね。普段、仕事でしか会わない人の、別の面が見えたりすることもあるし、「こんなことを考えているんだ」という発見もあります。

どこの医療機関もそうだと思うのですが、お互いが何をやっているのか、どんな苦労があるのか見えにくいところがありますから、そこを解消していく効果がありそうです。

松田:本当は私たちの病院でも、もっと広まってほしいです。麻酔科だけではもったいない。病院全体で、各科持ち回りで番組を作ったりするといいかもしれません。組織全体のことがもっとわかるようになれば、病院に対するコミットメントも高まるのではないかと思います。

2023年8月取材

お問い合わせはこちら

最後までご覧いただきありがとうございました。
普段あまり顔を合わせることが少ない現場だからこそ、声を使ったコミュニケーションが必要だと感じたという埼玉医科大学総合医療センター 麻酔科のみなさん。論文や学会の情報共有、当直におすすめの食事メニューなど、医療現場ならではの放送も印象的でした。

最近では「院内ラジオ」という形で病院やクリニックでVoicyを使われるケースも増えてきています。埼玉医科大学総合医療センターさんのように、より現場に近い場所での音声活用も広がっていきそうです。


いいなと思ったら応援しよう!