AIで故人を再現できるようになる未来
AI技術の発達によって、映画やアニメのように故人を再現することが可能になってきました。
弊社でも、失った声を再現できるサービスを提供しようとしています。
しかし、AIで故人を再現するとなると様々な課題が存在します。
そのような課題について少し考察してみました。
これまでの実例
映像技術については、以前からテレビ等様々な場面で利用されてきたので馴染みが深いかもしれません。
しかし、今では人格でさえもコピーすることが可能となっています。
『Replika』というアプリでは、自分をコピーしたチャットボットを作成することが可能になります。
AIとの会話を繰り返すことで、AIが口調、趣味、言い回し等の癖を学習するそうです。
もっと技術が進んで、意思決定プロセスも再現できるようになると、自分に変わって仕事をするロボットなんかも可能になるかもしれませんね。
このアプリは、亡くなった友人を愛し続けるために友人の人格をコピーしたチャットボットを作成したことをきっかけに開発されたそうです。
日本でも、『デジタルシャーマン・プロジェクト』というプロジェクトがあります。
故人を再現したロボットによって、擬似的に生前のやり取りを行うことで弔うという形です。
こちらのロボットでは、故人の写真をプリントし、人格だけでなく、しぐさのような身体的特徴も再現することができるそうです。
また、記憶に新しい例だと、NHK紅白歌合戦にも出演した『AI美空ひばり』もかなり話題になりました。
AI美空ひばりでは、生前の歌唱データを基に、美空ひばりさんの声色・歌唱法を再現しています。
それによって、亡くなった方が新曲を発表するということが可能になっているのです。
故人の歌声でいうと、三波春夫さんの歌唱を再現した『ハルオロイド・ミナミ』という製品もあります。
故人を再現することの課題
亡くなった方を再現するとなると、もちろん技術的課題もまだまだ存在するのですが、やはり倫理的課題が大きいと思います。
よく挙げられる例としては、
・死者を冒涜している。
・あの人はそんなこと言わない(やらない)。
・何がAIか分からなくなるようで怖い。
という意見があります。
先述の『AI美空ひばり』は特に顕著だったように思います。
私自身は、「テクノロジーって凄い!」とポジティブに感じていたのですが、SNSの反応を見ているとネガティブな意見も多かったですね。
この反応は個人的にはとても興味深かったです。
例えば、モノマネ芸人であれば、故人であってもそこまで倫理的にどうと言われることはありません。(あまりにも本人を冒涜するような場合は別ですが。)
なぜ、AI等のテクノロジーで再現した場合は倫理的問題になるのか?
1つは、不気味の谷現象のように、テクノロジーの発展によってAIが人間に限りなく近づいてきたということがあると思います。
では、不気味の谷を超えるほど精巧なAIができたら、倫理的問題はなくなるのかと言うと、そんなことはおそらく無いでしょう。
もう1つは、AI技術によって、「蘇る」や「再現する」と表現されることによって、過度に期待され、本人と同一視しようとしてしまうことがあるのではないでしょうか。
特に日本人は、AIを技術としてではなく、擬人化して考えがちです。
特に人格に関しては、その人に対してもっているイメージは人に依って異なります。どれだけ技術が発達したところで、それらを全て満たすことはできないでしょう。
有名な人であるほど、遺族の方だけでなく、ファンの方も関わってくるので難しいなと感じました。
未来の予想
先述の通り、人格まで含んだ故人の再現については、倫理的課題がつきまとうので、誰もが利用し、存在することが当たり前になるような未来は考えにくいですし、そうなったとしても数十年先だと思います。
ただし、部分的な再現については様々な場面で利用され始めると考えています。
表情・しぐさだけ、声だけ、歌だけ等。
故人を思い出してノスタルジーに浸れるくらいのサービスは、今後いろいろと出てくるでしょう。
実際、亡くなったアーティストの声でライブをしたい、亡くなった声優の声でアニメを作りたい、といった相談もたまに受けます。
エンターテイメントが多様化し、過去のものにこそ存在する価値もあります。
過去とテクノロジーを組み合わせて、新しいものを産み出そうという動きも増えてくるのではないでしょうか。
株式会社voiceware
代表取締役CEO 田村一起
https://voiceware.co.jp/
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